今世界で最も成功している投資家といっても過言ではない、ウォーレン・バフェット氏。
その師でもあり、バリュー投資の父ともいわれるのがベンジャミン・グレアム氏です。
グレアム氏は、企業本来の価値に対し株価が乖離していれば、株価はいずれ本来の価値に戻るという考えに基づいたバリュー投資を提唱し、それまで無秩序で、ギャンブルのようなものという、株式投資に対する考え方を大きく変えました。
この記事では、グレアム氏の基準を中心に、押さえておきたいバリュー投資のポイントについて解説していきます。
1、バリュー投資とは?
バリュー投資とは、その企業のあげている利益や保有する資産に対して、正しく評価されず、株価が割安に放置されている銘柄に投資する手法のことです。
現金1万円の入った財布が5,000円で売られているとします。
もしその財布を1万円以下で買うことができれば、財布の値段はどうあれ、損はしません。
もしそのようなことが現実にあれば、5,000円より高くても買いたいという人が殺到し、すぐに価格は1万円近くまで上がっていくことでしょう。
しかし株式市場では、すべての株を買い占めるために必要な資金(株価×発行済株式総数)より、その企業の保有する資産(純資産)が多い状況(→PBR1倍以下)でも、株価が割安なまま放置されている銘柄が多く存在します。
そのような銘柄を見つけて投資し、市場で正しく評価されるまで持っておくことで、利益をあげる。
これがバリュー投資です。
株価が割安かどうかは、企業本来の価値との相対的な関係で決まり、100円以下といった絶対的なものではありません。
そのためバリュー投資では、投資対象となる企業の本来の価値を見極めるための分析が欠かせません。
企業本来の価値を見誤ってしまえば、その投資判断は前提から崩れてしまいます。
また、株価は現在の価値だけでなく将来の期待も含んで決まるものです。
業績が落ち込んだり、経営に問題があれば株価が一向に上がらない、さらに下落するリスクもあります。
株価が本当に割安なのか、それは、その企業の将来性なども含めて判断しなければなりません。
2、バリュー投資のメリット・デメリット
(1)メリット
① 株価の値下がりリスクが小さい
バリュー投資では、株価が割安だと判断したタイミングで株を購入するため、そこからさらに株価が下がるリスクは小さいと言えます。
② 長期投資を基本に、落ち着いて投資できる
バリュー投資では、購入時にしっかりと企業価値を分析し、その後は正しく評価されるまで長い目で待つ投資スタイルです。
そのため、株価を常にチェックする必要はありません。
あまり人気がない銘柄が多いため、そもそも売買自体が少なく、値動きも比較的安定している傾向があります。
もちろん買ったら終わりではなく、購入後に企業価値が下がり、前提となる割安性が損なわれていないか、定期的に確認することは必要です。
③ 大きく値上がりすることもある
市場であまり注目されていないマイナーな企業は、なんらかのきっかけで注目を集めると株価が急騰することがあります。
(2)デメリット
① 利益を得られるまでに時間がかかる
バリュー投資で投資対象となる銘柄は、基本的に投資家からほとんど見向きもされない不人気株が多いです。
そのため、買ってすぐ上がるということは期待できません。
市場で評価されるまでには、数ヶ月〜数年、それ以上かかることも想定されます。
その間は投資資金が固定されることを覚悟した上で、長い目を持って投資に臨むことが求められます。
② 企業の分析に時間がかかる
その企業にどのくらいの価値があるのか、その価値が今後も維持され、成長していくのかを分析することはそう簡単なことではありません。
財布の中に1万円が入っていることが見て明らかな財布の場合は、すでに1万円以上の値段がついていることでしょう。
PERやPBRといった株式指標は、割安性を判断する目安とはなります。
しかしそれだけで本当に割安なのかを判断することはできません。
バフェット氏は、投資する銘柄を選ぶ際、その企業の財務諸表を、最低でも直近10年分は読み込んで判断するそうです。
3、バリュー投資の神様!ベンジャミン・グレアムの割安株7つの基準
割安株かどうかは、具体的にどのようなに判断すればいいのでしょうか。
ベンジャミン・グレアム氏は、著書『賢明なる投資家』において、割安株の基準について次のような7つの基準を挙げています。
(1)適切な規模
小規模な企業は、株価が市場平均以上に影響を受けやすく除外して考えるのが賢明です。
(2)財務状態が十分に良い
製造業であれば、流動資産が流動負債の最低2倍(流動比率2:1)以上である。
また長期負債が純流動資産を超えないことが重要です。
*流動資産:1年以内に現金化される資産。1年以内に現金化できない資産は「固定資産」。
*流動負債:1年以内に支払いのある負債。支払いが1年以上先の負債は「固定負債」または「長期負債」。
*純流動資産: 流動資産からすべての負債を差し引いたもの。
(3)継続配当は、20年以上
最低過去20年間、継続的に配当があります。
(4)過去10年間、赤字決算がない
過去10年赤字となっていない、過去20年間に無配当の年がないことそして継続して利益を出しているか、安定性の裏付けが必要です。
(5)1株あたり利益(EPS)が10年間で最低1/3以上伸びている
過去10年間の1株あたり利益(EPS)の、最後の3年間の平均が最初の3年間の平均より少なくとも1/3以上伸びているか。
急激ではなくとも確実に成長していることの裏付けがあることです。
(6)株価が過去3年の平均収益の15倍以下(PER15倍以下)
現在の株価が、過去3年間の平均収益の15倍を上回っていないか。
(7)株価が純資産価値の1.5倍以下(PBR1.5倍以下)
現在の株価が、直近の簿価(純資産額)の1.5倍を上回っていないか。
PERが15倍以下の場合には、
「PER×PBR<22.5(=15×1.5)」
を満たせば、PBRが1.5倍を超えても許容範囲とします。
この中ではPERとPBRが比較的確認しやすい値です。
そのため、まずは「PER×PBR<22.5」を満たす銘柄に絞り込み、その銘柄の中からより詳細な分析を行うという方法がおすすめです。
4、割安株を探すには!株価収益率(PER)株価純資産倍率(PBR)
株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)は、株価が割安かどうかを判断する目安となる株式指標として広く知られています。
- 株価収益率(PER):株価が1株あたり純利益の何倍か
- 株価純資産倍率(PBR):株価が1株あたり純資産の何倍か
いずれの指標も、値が低ければ株価は割安、高ければ割高と判断します。
業種などによって収益性や成長性などは異なるため、同業他社のPERやPBRと比較し、割安なのかを判断することが基本です。
ただし、同業他社と比較して値が低ければ株価が割安だとは言い切れません。
PERやPBRの値が低いことは見ればわかります。
しかし、その値がなぜ低いのかという理由は、指標からは読み取ることができません。
その理由を知るためには、財務諸表や決算資料などを確認する必要があります。
PERやPBRを利用する際には、それが絶対的なものではないとよく理解した上で、なぜその値となっているのか、その理由まで含めて考えなければなりません。
5、会社の将来性は、財務諸表で確認
財務指標は、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つから構成され、決算ごとに公表されます。
企業の財務状態やお金の流れ、稼ぐ力など、企業の価値を見極める上で、最も重要な資料です。
(1)貸借対照表(バランスシート)
ある時点における企業の資産や負債、資本の状態が示されている、財務状態の健全性や、経営の安定性を把握することができる。
(2)損益計算書
一定期間に企業があげた収益と、かかった費用が示されている、企業の収益性や、効率よく利益を上げられているのかをみることができる。
(3)キャッシュフロー計算書
企業の会計期間におけるキャッシュ(現金や現金同等物)の増減、つまりはお金の流れ(キャッシュフロー)が示されています。
キャッシュフロー(CF)は「営業CF」「投資CF」「財務CF」の3つに区分され、企業の資金繰りの状況や、資金をどのように使っているのかを読み取ることができます。
バリュー投資で購入する株とは、基本的に長い付き合いとなります。
企業の価値が正しく評価され株価が上がるためには、その価値が将来に渡って維持・成長していなければなりません。
財務状態や業績について、その継続性や将来性に問題がないか、投資をする前に、それを財務諸表から確認することが大切です。
6、バリュー投資が良くわかるオススメ本3冊
(1)バリュー投資入門 バフェットを超える割安株選びの極意
株価低迷期に威力を発揮するバリュー投資を、一般の投資家にもわかりやすく解説した一冊です。
(2)億万長者をめざす バフェットの銘柄選択術
優良企業を見極める8つのポイント、絶好の買い場が訪れる4つのケース、投資収益率を高める3つの条件など、バフェット氏の実践する投資手法を紹介しています。
23のレッスンを例題を交えながら学ぶことによって、バフェット流の投資術を身につけられる一冊です。
(3)投資で一番大切な20の教え
著者は、世界最大級の資産運用会社オークツリー・キャピタルの創業者であり、難しい投資の世界において、市場に40年以上にわたり勝ち続けてきた、ハワード・マークス。
市場の見方、リスクの捉え方、市場コンセンサスとは別の見方をする「逆張りの思考法」、ミスプライシングが起こる非効率市場の見つけ方など、根本的かつ重要な投資哲学が凝縮された一冊です。
7、徹底したバリュー投資を行う投資会社JapanAct
Japan Actは、日本国内に上場している企業を主な投資対象として、バリュー/アクティビスト投資を行っている投資会社です。
バリュー投資によって成果を得るには、通常長い時間がかかるものです。
しかし彼らは自ら行動することで、その期間の短縮やリターンの最大化を図るというところに特徴があります。
Japan Actは、本来の企業価値と現在の市場価格との乖離に注目し、対話を重視した積極的な経営への関与によって企業価値・株主価値向上を図り、リターンの最大化を目指します。
2019年6月には、Japan Actの主要投資先であり大株主でもあるサンエー化研に対し、株主提案を行っていて、今後の動向に一層注目が集まっています。
Japan Actにアクセスするにはまずは資料請求をおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ベンジャミン・グレアムの考案したバリュー投資は、半世紀以上経った現在でもその輝きを失わず、君臨し続ける有効な投資手法です。
バリュー投資を行う際には、表面的な理解ではなく、しっかりと基本を押さえて行うようにしましょう。