日経平均株価は2018年1月にバブル崩壊後の最高値を更新してから同年7月時点、一進一退の攻防が続いています。
ところで最近、日銀がETF(上場投資信託)を購入したというニュースを見かけることはありませんか?
今の株式市場は、このETF買い入れが支えているという見方があります。
この買い入れはいつまで続くのか、なぜ行なっているのか?
などを考えると、ひとつの投資戦略にいきあたります。
1、どうして日銀はETFを買い続けるのか?
あくまでも中立的な立場であるはずの日本銀行が、なぜ株式を買っているのでしょうか。
日銀が買っている投資信託はETFやJ-REIT(不動産投資信託)など、特定の企業ではなく、市場全体に向けたものです。
日銀がETFを買う主な目的は、金融緩和です。
結果的に株式相場を下支えしている効果もありますが、市場にお金を供給して国内で流通する円の量を増やすことを目指しています。
そうすることで物価を上げようとするのが狙いです。
政府と日銀は2013年4月にインフレターゲット政策を導入し、物価の上昇と徹底的に向き合う姿勢を見せています。
その中の一環が ETF の購入というわけです。
なぜ株を買うことによって物価が上がるのでしょうか。
それは「世の中に出回る通貨の量が実体経済に強い影響を与える」というマネタリズムの考え方が根底にあります。
物価が上がらない理由は賃金が上がらなかったり、将来に不安があったりして人びとが消費を抑えるからです。
また、物を買うよりも銀行にお金を預けることで利子がもらえてお金が増えるのであれば、皆そうするでしょう。
この状況を打破するためには、お金そのものの価値を下げることです。
そうすることで物の値段は相対的に上がります。そのために株式市場を通して世の中にお金を供給しているのです。
このことは直接お金の供給量が増えるだけではなく、大量に買うことで相場を支え、他の投資家、特に個人投資家が投資しやすいようになる効果もあります。
するとさらに供給量が増え、物価が下がっていくというシナリオです。
2、現時点の日銀ETF買い入れ金額と株価指数連動上場投資信託とは?
実際に日銀のETF買い入れが市場にどのような影響を与えているのか、気になるところだと思います。
日銀は闇雲に ETF を買っているのではなく、TOPIX、つまり東証一部に上場している全株式の平均値が下がった日の翌日に購入するようにしています。
相場が下がったときに市場全体に資金を入れているのです。
ETF の買い入れ結果は毎日、日銀のホームページで発表されています。
例えば2018年6月はETFとREIT合わせて7,306億円を買っていました。
1日あたりの購入額は決まっています。
ETF は二つに区分され、「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF 」とREITは1回につき12億円、その他の ETF には703億円分を毎回購入しています。
年間の購入予定額はあらかじめ決められており、2018年は6兆円とそれまでの倍になっています。
東京証券取引所の「ETF / ETN Factsheet 2018」によると、日本のETFの残高は2017年12月時点でおよそ30兆円です。
その2割にあたる金額を2018年度だけで供給するのですから、日銀の買い入れが株価市場を支えていると言っても過言ではありません。
3、日銀が大株主とは?株式市場への影響は?メリット・デメリット
さて、こうなると一つの問題が生じてきます。
それは日銀の出口戦略です。
大量に保有したETFをどうやって手放すかということです。
この資金を短い期間で市場から引き上げると、株価市場が崩壊する恐れがあります。
2018年6月27日の日本経済新聞に掲載された「日銀、企業の4割で大株主」という見出しの記事が注目を浴びました。
ETF を買うということは、投資信託を通じて企業の株を買うということです。
今までの購入を各企業の保有株に当てはめると、日銀が上位10位以内の大株主になる企業は全体の4割に達するというのがこの記事の趣旨です。
例えば、同紙の試算によるとユニクロを展開するファーストリテイリング株の17.5%を日銀が保有していることになります。
ありえない話ですが、もし明日、日銀が「ETFの買い入れはやめます」と言って全ての株を手放したら、ファーストリテイリング株の17%が売りに出されることになります。
そうすると単純計算で同社の株価は17%下落するでしょう。
実際には他の投資家の影響もありますし、まずこのようなことはないと考えていいのですが、日銀の ETF 買い入れ政策が株価に大きな影響を与えているのは確かです。
参考:日経新聞電子版 日銀、企業の4割で大株主 イオンなど5社で「筆頭」
4、日銀ETF買いの出口とは?
これだけの株式を日銀はどうするつもりなのでしょうか。
現在のところは明確な出口戦略は発表されていません。市場に与える影響を懸念しているのでしょう。
日銀には金融機関から価格変動の大きい株を購入する「株式買入等基本要領」という仕組みがありますが、ここで購入した株式は原則として市場で売却するとされています。
ただし、一定の用件を満たすと企業の自社株買いや公開買付で処分できるようになっています。
同じ方法が踏襲されるとは限りませんが、ひとつの参考にはなるでしょう。
他にも、GPIF(公的年金の運用をしている法人)や保険会社に買い取ってもらうと言う手段も考えられます。
これら市場以外で処分する方法であれば、ある程度は株価への影響が限定されることになるでしょう。
ただし自社株買いや公開買付は買ってくれる企業がいることが前提になりますし、GPIFは国民から政治的な同意が得られるかも関係してきます。
実際には現実的な方法を折衷していくことになるのではないでしょうか。
5、日銀株主銘柄の投資ポイントと注意点
政府と日銀のインフレターゲット政策は続いており、物価上昇にはまだ目立った効果が見られていません。
今後も買い入れは続いていくと考えられます。
出口戦略が難しいこともあり、日銀が保有している株を売るというのはすぐには考えられません。
そこでひとつの株式売買の戦略が立てられます。
日銀の保有比率が大きい銘柄に投資するという方法です。
日銀が持っている株式はすぐに売られることはなく、その銘柄は今後も買われていくことが濃厚と考えるのであれば、手堅い投資と言えます。
日銀が購入する ETF の中心となるTOPIXは時価総額をベースに算出されるため、時価総額の大きな企業ほど日銀が保有する比率は高くなります。
前述のファーストリテイリングは5兆円ほどの価値を持ち、2,000銘柄ある東証一部の1%近くを占めますから、自然と保有比率が上がって日銀が大株主となったわけです。
ただ、日銀が買い入れをしたときの株価やその後の値動きにもよりますし、実際に買われるのはTOPIXだけではないので、時価総額ランキングと日銀の保有比率ランキングは一致しません。
日銀の保有比率ランキングは、日本経済新聞やダイヤモンド社などが試算して発表しているので、参考にすると良いでしょう。
6、日銀が大株主銘柄をチェックして投資する戦略
日本銀行は投資信託を通じて大量に株式を購入しています。
市場への悪影響が懸念されることから、すぐに売却をするとは考えにくいものです。
また、今後も購入は続けられる予定ですので、日銀の保有比率が高い株式を持つという投資戦略が考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日銀とETFの関係がおわかりいただけましたか?
日銀ETF買いとニュースに流れたら、どんな銘柄を買っているか確認してみると良いかもしれません。
次の投資銘柄の選択にお役に立てましたら幸いです。