一般的にローリスクのイメージがある投資信託ですが、あくまでもリスクが少ないだけで、ノーリスクではありません。
投資信託にはどのようなリスクがあるのか。また、投資信託のリスクを軽減する方法、ファンド選びのコツについてまとめました。
すでに投資信託を始めている方もこれから投資を検討している方もぜひご覧ください。
投資信託の4つのリスクとは
投資信託はいくつもの株式や債券をセットにして運用する金融商品ですので、1つのファンドに投資するだけでも分散投資が叶います。
そのため、数ある投資商品の中でもローリスクと言われることが多いです。
しかしながら、ローリスクではあっても少なからぬリスクはあります。
とりわけ次の4つのリスクは、投資信託をおこなう前に確認しておきましょう。
- 価格変動リスク
- 為替変動リスク
- 信用リスク
- 金利変動リスク
1:価格変動リスク
投資信託には複数の株式や債券が組み込まれていますが、それぞれの価格が変動すると投資信託ファンド自体の価格も変動します。
投資信託は元本保証型の金融商品ではありませんので、購入したときよりも価格が下落してしまうことも珍しくはありません。
また、投資信託ファンドは、売却を申し込むタイミングと実際に売却するタイミングに時間差があります。
利用する金融機関や注文を確定するタイミングによっては時間差が1日以上(土日祝日をはさむとさらに長くなることも)になることがあり、予想以上の安値で売却することにもなりかねません。
2:為替変動リスク
外国通貨建ての株式や債券が含まれているファンドの場合は、為替変動の影響を受けます。
たとえ株式や債券自体の価格が上昇していたとしても、為替が円高方向に動いているときなら、ファンドを売却したときの価格が購入価格を下回ったり利益が目減りしたりする恐れがあります。
ファンド内の株式や債券の価格が下落かつ為替が円高方向に動いているときなら、さらに損失は大きくなるでしょう。
つまり、投資信託においては、ファンドの種類によっては手放すときに為替も考慮しなくてはならないのです。
3:信用リスク
ファンド内に含まれている株式や債券の発行元が、経営破綻してしまうリスクもあります。
予想されていた配当金が出ない可能性があるだけでなく、ファンド自体の価格も大幅に下がってしまう可能性もあるのです。
なお、経営破綻によるリスクを「信用リスク」と呼びますが、「デフォルトリスク」とも呼ぶことがあります。
4:金利変動リスク
国内株式や国内債券だけで構成されたファンドであっても、金利変動の影響を受けます。
一般的に、金利が上がるとファンドの価格が下落することが多いため、売却するタイミングとしてはおすすめできません。
なお、ファンドによっては海外の債券や株式が含まれていることもありますので、日本の金利だけでなく海外の金利についてもチェックするようにしましょう。
投資信託のデメリットがリスクになることも!?
投資信託が持つデメリットの性質そのものがリスクになることもあります。
特に次の2つの性質は、リスクとなりうるため、ファンド選びの際は念頭に置きましょう。
- 手数料が高めであること
- 投資のプロでも読みを外す可能性があること
手数料が比較的高めであること
株式投資をおこなうときは、単に株式を保有しているだけの状態では手数料は発生しません。
売買するときに取引している金融機関との間で手数料が発生することはありますが、基本的にはその他のタイミングで手数料を請求されることはないのです。
一方、投資信託は、保有しているだけでも「信託報酬」と「監査報酬」が発生します。
また、取得するときには「販売買付手数料」、売却するときには「信託財産保留額」がかかるため、ほかの金融商品と比べると手数料が高いのです。
そのため、利益が出たとしても、投資家が実際に受け取れる額は少なくなってしまいます。
投資のプロも読みが外れる可能性があること
投資信託は投資のプロが管理しているファンドです。
その分、管理のために費用を支払っているため、投資初心者にとっては相場を見極める能力がなくても商品を購入しやすいという心理的メリットがあります。
しかしながら、投資のプロであっても、常に読みが当たるとは限りません。
読みが外れて損失が出ることもあるのです。
投資信託の6つのリスクコントロール法
ここまで紹介したように、投資信託には「運用していく上での4つのリスク」と「本来の性質による2つのリスク」を合わせて6つのリスクがあります。
しかし、どんな投資商品にもリスクはつきもので、投資信託がとりわけリスクの多い金融商品というわけではありません。
しかも、投資信託のリスクは、ある程度ならば低く抑えることができます。
リスクをコントロールする方法を6つ紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- ノーロードファンドを選択する
- 手数料が安いファンドを選択する
- 複数の商品に投資する
- 積立投信を活用する
- NISA口座で投資する
- 確定拠出型年金を活用する
1.ノーロードファンドを選択する
ノーロードファンドとは、販売買付手数料が0円の投資信託商品のことです。
ノーロードファンドを選ぶと購入時に手数料がかかりませんので、投資にかかるコストを抑えることができます。
ネット証券から投資信託を始める場合は、サイト内でファンドの条件を選ぶ際に「ノーロード」もしくは「手数料無料」をチェックすれば簡単に見つけられます。
一般的なファンドでは価格の1~3%もの販売買付手数料を請求されますので、手数料を少しでも安く抑えたい方はノーロードファンドも視野に入れて投資信託を始めましょう。
2.手数料が安いファンドを選択する
販売買付手数料はノーロードファンドを選択すれば無料にすることができますが、管理と維持にかかる信託報酬と監査報酬、また、解約時にかかる信託財産保留額は無料にすることはできません。
しかしながら、いずれも割合(ファンドの価格に対して〇%)が決まっていますので、低いものを選択すれば手数料を抑えることができます。
なお、販売買付手数料を含め、すべての手数料に関しては各ファンドの目論見書に記載されています。
それぞれの相場を紹介しますので、相場と比較して割安感があるファンドを選ぶのも1つの方法です。
手数料の種類 | 相場 |
---|---|
販売買付手数料 | ファンド購入価格の1~3% |
信託報酬 | 純資産総額に対して月に0.5~2% |
監査報酬 | その他の手数料としてまとめられていることが多く、相場は不明 |
信託財産保留額 | ファンド売却価格の1~3% |
3.複数の商品に投資する
投資信託は複数の株式や債券を組み合わせた金融商品ですので、1つだけのファンドを購入しても分散投資をおこなうことができます。
しかし、それぞれのファンドには「国内で社会貢献に注力する企業」や「新興国で資源採掘をおこなう企業」などのテーマがあるため、関連する企業が軒並み不況に陥る可能性がないとも言い切れません。
複数の投資信託ファンドを購入するなら、分散投資×分散投資でさらにリスク軽減することが可能です。
1つのファンドに資本をすべて投入するのではなく、いくつかのファンドを同時に保有するようにしましょう。
4.積立投信を活用する
投資信託は、それぞれのファンドに「定価」があるわけではありません。
ファンドの価格は常に変動しており、購入を決めたとき(厳密には、証券口座を管理している会社がファンド購入手続きをしたとき)の価格で取引をおこないます。
つまり、たまたま価格が高くなったタイミングで購入手続きをしてしまうと、割高なトレードが成立してしまうことになるのです。
価格が流動的なものを購入するときは、一度にまとめて購入するのではなく時期を細かく分けて一定額ずつ購入する「ドルコスト平均法」を用いれば、割高なトレードを回避することが可能になります。
投資信託の場合なら、毎月一定額ずつ購入できる「積立投資信託(積立投信)」を利用することで、割高なタイミングで全額を購入してしまうリスクを回避できるでしょう。
1ヶ月500円、1,000円といった少額で積立投信を始められるネット証券もありますので、まとまった資金がない方も気軽に始めることができます。
5.NISA口座で投資する
少しでも投資にかかるコストを抑えることで、損失が生じるリスクを抑えることができます。
投資にかかるコストとは、購入時や保有時、売却時の手数料だけではありません。
分配金や売却益にかかる税金も一種のコストですので、リスクコントロールを行う上では気をつけるべき点です。
NISA口座は、枠内(120万円以内)の金融商品に関しては非課税になるお得な口座です。
120万円以下で購入した投資信託ファンドを預けておけば非課税扱いになりますので、分配金や売却益をそのまま受け取ることができます。
通常、分配金や売却益に関しては20.315%の税金が課せられますから、10万円の利益が発生しても実際に受け取れる利益は8万円弱になってしまいます。
しかし、NISA口座で取引をするなら、20.315%の税金を差し引かれずに全額受け取ることも可能なのです。
NISA対応の分配金再投資型ファンドに注意
投資信託ファンドを購入するときは、分配金の扱い方を「分配金再投資型」と「分配金受取型」のいずれかに指定できることがあります。
「分配金再投資型」を選択すると、分配金を使って自動的に同じファンドを購入しますので、投資資金を徐々に増やしていくことも可能です。
一方、「分配金受取型」を指定すると、分配金はそのまま利益として口座に振り込まれます。
投資資金を増やしたいなら「分配金再投資型」が適切なのですが、NISA口座を使っている場合は投資に利用できる枠が120万円と決まっているため、分配金が積み重なると枠を超えてしまうかもしれません。
枠を超えてしまった分に関しては非課税にはなりませんので、分配金が増えるほど非課税対象外の部分が増えてしまうことになります。
NISA口座で投資をおこなうときは、できるだけ「分配金受取型」に指定するようにしましょう。
6.確定拠出型年金(401k、iDeCo)を活用する
NISA口座で運用すると、分配金だけでなく売却益も非課税にすることができます。
しかし、NISA口座は「1年につき1人1口座」「1口座120万円まで」と制限があるため、いくらでも利用できるわけではありません。
NISA口座を活用した運用以外にも税金を抑えた投資をおこないたいときは、確定拠出型年金(401k)や個人型確定拠出年金(iDeCo)を検討してみてはいかがでしょうか。
いずれも掛金が全額所得控除になるだけでなく、運用益が非課税になり、受け取る際も所得控除が適用されます。
また、個人型確定拠出年金の場合には信託報酬と監査報酬の両方が無料となる商品もあり、コスト全体を抑えた投資をしていくことも可能です。
ファンドごとの特徴を知ってリスク管理・分散
投資信託ファンドは、さまざまな種類があります。
その中で似たような特徴のファンドを保有していると、リスクが高くなる恐れがあります。
たとえば不動産関連のファンドばかりを保有しているなら、不動産業界が全体的に不況の波にのまれているときは、すべてのファンドの価格が下落してしまうかもしれません。
ファンドの性質を把握したうえで、異なる種類のファンドを運用し、リスク分散を図っていくようにしましょう。
インデックスファンドの特徴
投資信託は、プロの投資家が投資先や株式・債権の配分を変更しながら運用していく金融商品です。
投資信託の価格が株式指標(インデックス)と連動するように運用する投資信託ファンドを「インデックスファンド」と呼び、たとえば日経平均株価やNYダウ平均株価などの株式指標と似たような値動きになるように調整します。
利益ができるだけ多くなるように積極的に運用する「アクティブファンド」とは異なり、市場平均に連動した利益を目指すためローリスクである点がメリットです。
反対に、アクティブファンドは市場平均を超える利益を求めるため、高価格になることもありますが、損失が高額になることもあります。
インデックスファンド | アクティブファンド |
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インデックスファンドと一緒に投資をするなら?
インデックスファンドは株式指標と連動した値動きの金融商品のため、比較的ローリスクです。
しかし、株式指標が右肩下がりに動いているときには、好ましい結果を得ることは難しくなります。
インデックスファンドだけでなく、株式指標と逆の動きをすることが多い不動産投資信託(REIT)を合わせて保有することで、リスクを分散させることをおすすめします。
不動産投信(REIT)の特徴
REIT(リート、不動産投資信託)とはReal Estate Investment Trustの略語で、投資家から資金を集めて不動産経営や不動産売買をおこなって利益を上げる投資信託ファンドのことです。
一般的に、不動産を経営したり購入したりする際には億単位の高額な資金が必要となりますが、投資信託ファンドとして広く投資家を募ることで、少額しか出資できない方でも気軽に不動産投資がおこなえるというメリットがあります。
なお、REITはアメリカで誕生した投資の仕組みで、日本の証券市場に上場されているものはJ-REITと呼んで区別しています。
- 日本の証券取引所に上場している
- J-REIT自体が不動産投資法人として運営している
- 収益から運用手数料を差し引いた金額が分配金として各投資家に還元される
MRFの特徴
MRFはMoney Reserve Fundの略で、安全性と信用性の高い債券を中心に構成された投資信託ファンドです。
申込手数料や解約手数料が無料で、いつでも預けたり引き出したりできるため、普通預金感覚で利用できる点も魅力です。
- 債権を中心に組み合わせたファンド
- 申込手数料と解約手数料が無料
- いつでも入出金ができる
- 証券口座さえ開設していれば、特別な契約を結ばなくても利用できる
外貨建てMMFの特徴
MMFはMoney Management Fundの略で、安全性の高い債券を中心に構成された投資信託ファンドのことです。
申込手数料と解約手数料が無料のため、初めて投資信託をおこなう方にも取り組みやすいというメリットがあります。
ただし、購入後30日以内に解約した場合は解約手数料が発生しますので、じっくり考えてから購入を決定するようにしましょう。
- 債権を中心に組み合わされたファンド
- 申込手数料と解約手数料が無料
- 購入後30日以内に解約すると解約手数料が発生する
- MRFよりも高金利になることが多い
投資初心者にも取り組みやすいMMFですが、2016年2月9日以降、円建ての新規受付をおこなっている証券会社はありません。
これは、日本ではマイナス金利の導入により債権の利回りが低下し、投資信託ファンドとして運用しても収益を上げづらくなったためです。
また、すでにMMFを保有している場合でも、以後は償還手続きに入っていますので、長期間にわたって保有し続けることも難しくなっています。
一方、外貨建てMMFはまだ多くの証券会社等で取り扱っています。
価格変動リスクはありますが、外貨建て金融商品の中でもローリスクですので、初心者の方も取り組みやすいと言えるでしょう。
ETFの特徴
ETFはExchange Traded Fundsの略で、上場投資信託とも呼ばれます。
東証株価指数(TOPIX)などの指標に連動することを目指す投資信託ファンドで、投資信託の中でもリスクが低いというメリットがあります。
- ファンド自体が株式市場に上場している
- TOPIXや日経平均株価などの指標に連動するように運用されている
- 投資信託の中でもローリスク
なお、インデックスに連動するように運用されるという点ではインデックスファンドと同じです。
しかし、証券会社と直接売買するインデックスファンドとは異なり、ETFは証券会社を通して第三者の投資家と売買をおこなうなど、いくつかの違いがあります。
ETF(上場投資信託) | インデックスファンド |
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リスクを回避しやすい投資信託ファンドの選び方
とにかくリスクを抑えたファンドを選びたい方は、特徴に注目して、できるだけローリスクのカテゴリーに入るファンドを選ぶ必要があります。
しかしながら、ローリスクのカテゴリーに入るものであっても、ファンドによってはリスクが高いものもあるのです。
次の3つのポイントで各ファンドをチェックし、購入を検討しているファンドが本当にローリスクなのかどうか厳しく見極めてから取引をするようにしましょう。
- ファンドの運用実績
- 値動きの幅
- 純資産残高
運用実績をチェックする
投資信託は、投資のプロが運用している金融商品です。
しかし、投資のプロといっても常にハイリターンを実現できるわけではなく、運用成績が上がらないケースも少なくありません。
本当にローリスクな投資ができているのかについては、過去の運用実績をチェックすることで分かります。
少なくとも3年程度の実績をチェックすると価格変動をつかみやすくなり、今後も安定した利益を生み出せるのかどうかを予測しやすくなります。
ファンドの中には販売直後から価格が急上昇するものもありますが、ローリスクローリターン型の投資を目指すなら、販売からある程度の年月が経過したものを選ぶようにしてください。
値動きの幅が大きすぎるファンドは除外する
値上がり幅が大きなファンドは、確かに魅力的です。
しかし、値上がり幅が大きいということは、「リスクを大胆に取った投資がうまくいって実績が出ている」ということでもありますので、ローリスク投資を目指す方にはおすすめできません。
ただし、短期間のみ保有しようと考えている場合は、値動きの幅が大きいハイリスクファンドを使って運用益を出すことも可能です。
とはいえ、いつ急落するか分からないという不安点を常に抱えることになりますので、こまめに価格を確認し、値下がりの予兆が見えたときは迅速に手放せるようにしておきましょう。
純資産残高をチェックする
ファンドの純資産が少ないと、運用期間中に繰り上げ償還(運用停止)されるリスクがあります。
投資信託はそもそも元本保証型の金融商品ではありませんから、繰り上げ償還が決定して強制的に解約されることになると、場合によっては手元に戻ってくるお金がごくわずかになってしまうこともあります。
できれば純資産が30億円以上のファンドを選び、購入してすぐに繰り上げ償還になるリスクを回避しておきましょう。
リターンとリスクのバランスを取りながら投資信託に取り組もう
できるだけリスクの低い投資をおこないたいと考えている方は多いでしょう。
しかし、リスクコントロールばかりに注目すると、リターンが減ってしまうこともあり、効率の良い投資の実現とは程遠くなってしまいます。
リスクとリターンのバランスを考慮し、満足できる投資をおこなえるようにしていきたいものです。
また、投資信託を購入するときには目論見書を丁寧に読んで投資の方針を把握しておくのは当然のこと、購入後も証券会社などが公表している情報をこまめに入手し、手放すタイミングを見逃さないようにすることも大切です。
大切な資産を減らさないためにも、賢く選んで賢く管理していきましょう。