解決策はバリュー投資!含み損から脱出する2つの方法

どんなに優れた投資家でも投資で100%勝つことはできず、買った株が値下がりすることも当然あります。

ある程度の値下がりは想定した上で投資するべきですが、損切りのタイミングを逃し、含み損を抱えた“塩漬け株”を持つ投資家は少なくありません。

含み損を抱えた塩漬け株は投資資金を拘束し、投資効率の低下を招きます。

では含み損を抱えた状態から脱出するにはどうすれば良いのでしょうか。

投資を成功させるために考えてみましょう。

1、含み損とは

含み損とは、保有する株の現在の価格が購入した価格よりも低い場合の、現在の価格と購入価格との差額(損失額)であり、(売却していないため)損失が確定していない状態のことを言います。

株価が予想に反して値下がりしてしまったものの、損切りのタイミングを逃してしまい、含み損が拡大してしまう。

含み損が大きくなりすぎ、株を売って損失を確定することを躊躇してしまい、長期間手が付けられない状態となってしまった株が、いわゆる“塩漬け株”です。

2、どうして含み損(塩漬け株)が生じるのか

(1)含み損(塩漬け株)が生じるまでの過程

投資ではある程度の値下がりは想定すべきものであり、一時的に含み損が生じるのは仕方ありません。

問題なのはその程度で、含み損を拡大させ長期間含み損の状態を続けること、つまりは株を塩漬けにしてしまうことが問題なのです。

塩漬け株は、主に次のような過程で生じてきます。

  1. 値上がりを予想して株を買う
  2. 予想に反して株価が下がる
  3. そのうち株価が回復すると信じて株を持ち続ける(特に根拠はない)
  4. さらに株価が下がり、手がつけられなくなる

このうち投資家の判断によってコントロールできるのは、1の段階で「どの株をどのタイミングで買うか」という部分と、3の段階で「株をこのまま持ち続けるのか、売って損切りするのか」という部分です。

1の判断が適切であれば含み損を抱えるリスクは下がるため、投資する前にしっかりと投資先を分析し見極めることが、含み損を生まないための1つ目のポイントです。

とはいえ、いつも予想通りに株価が動くことなどありません。

予想に反して株価が下がってしまった際、一時的な値下がりだと判断して株を持ち続けるのか、自分の間違いを認めて損切りするかという判断が2つ目の重要なポイントとなります。

この段階で損切りすれば損失は確定しますが、それ以上の損失拡大を防ぐことができ、塩漬け株となることもありません。

投資の根拠となった事実に変化がないのであれば、株価が下がったとしても、株を持ち続ける、あるいは株を買い増す(ナンピン買い)という選択もできます。

しかし投資する前に定めた損切りライン割り込んだのであれば、感情を持ち込まず損切りするのが賢明です。

根拠がないにも関わらず、売って損失を確定しなければ、そのうち株価も持ち直すかもしれないという“期待”で損切りを先延ばしにする判断は、塩漬け株を生む大きな要因となっています。

これには投資した根拠や損切りの基準が曖昧なまま投資しているといった根本的な問題のほか、「長期的に株価上昇する」という考え方にも原因があるように思えます。

長期的に見れば、企業の成長に伴って株価が上昇するという考え方自体は間違っていません。

実際に株式相場のほとんどは右肩上がりです。

しかし必ずしもこれが当てはまるとはいえず、たとえ株価が回復するにしても、10年、20年かかるようでは遅すぎるのです(日経平均株価は、30年近く経った現在もバブル期最高値の半分弱)。

日経平均株価にも、ここ数年の世界景気の回復やアベノミクス効果などにより上昇が続き、今年9月には取引時間中にバブル経済崩壊後の最高値を更新するなど、回復の動きは見られます。

しかし1990年にほぼ互角であった日本と米国の株式市場規模は、2018年10月時点で6倍以上に差が開いてしまいました(*)。

(*米国23.9兆米ドル、日本3.6兆ドル(浮動株調整後株式時価総額) 参考:my INDEX

このようにたとえ株価が回復するとしても塩漬けにせず、一旦損切りしてより魅力的な投資先に投資し直すほうが、より早く、より大きなリターンを得られる可能性は高くなると言えます。

(2)「バイ・アンド・ホールド」と「塩漬け株」

一旦投資した後は短期的な値動きには左右されず、長期保有する投資手法である「バイ・アンド・ホールド」と「塩漬け株」。これらは、株を保有し続ける点では似ているように見えます。

しかし、前者が企業本来の価値やその将来性に対して、初めから長期スタンスで投資を行うのに対し、後者は株価が下がってしまったので、株価が回復するまで仕方なく保有しているという点では全く別物です。

世界で最も成功した投資家として知られ、バリュー投資を行うウォーレン・バフェット氏。

「株式投資の極意とは、素晴らしい企業を適切な価格で買い、素晴らしい企業である限りそれを持ち続けること」であるといい、「バイ・アンド・ホールド」による投資で成功を収めた投資家のひとりです。

「買った株は永久に保有する」とさえ語るバフェット氏も、これまでに多くの銘柄を手放してきました。

彼が株を売る場合とは

  1. 判断が間違っていたと気付いた場合
  2. 投資先としての魅力が失われた(割高になった)場合
  3. より魅力的な投資先へ投資するための資金が必要である場合

これらの場合に該当すれば、いくら含み損があろうと潔く株を売却しています。

損失を先延ばしにして株価が回復するまで待つ「塩漬け」とは、大きく違うことがおわかりいただけるでしょうか。

3、含み損を解消する2つの方法

(1)含み損を抱えた株を売る

含み損を解消するために投資家が自ら行える最も簡単な方法は、含み損を抱えた株を売ってしまうことです。

今後株価が回復する見込みがないのであれば、早めに損切りし、売却資金をより魅力的な投資先に投資し直すほうが、より早く、より大きなリターンを得られる可能性は高くなります。

(2)株を買い増して株価の回復を待つ

保有している株が値下がりして含み損が生じても、その後株価が上昇するという予想に自信があるのなら、さらに株を買い増して平均購入単価を下げ、株価が回復するのを待つという方法があります(いわゆるナンピン買い)。

たとえば500円で100株買った後400円に値下がりし、10,000円の含み損が生じた場合、400円で100株を買い増せば、平均購入単価は450円まで下がります(含み損は10,000円のまま)。

その後株価が持ち直し、450円になれば収支はトントン、当初の買値である500円まで回復すれば、その時点で10,000円の含み益となります(手数料除く)。

株式相場全体の下落、あるいはその企業の不祥事など一時的な要因によるものであり、当初投資判断の前提とした業績や財務状態、ビジネスモデルなどに大きく影響しないものであれば、その要因が解消されれば株価が回復する可能性は高く、ナンピン買いが有効に機能しやすいと言えます。

ただし株価が反転しなければ株を買い増しても含み損は解消されないばかりか、拘束される資金も増えてしまいます。

また株価がさらに下落してしまうと、含み損が拡大するペースを加速させ、傷口に塩を塗るようなことにもなりかねない、非常にリスクの高い方法でもあります。

そのためナンピン買いで株価の回復を待つ方法は、株価が回復することによほど自信がある場合にのみ用い、それ以外の場合には潔く損切りするのが賢明な判断と言えます。

4、バリュー投資で含み損の捉え方を変える

短期的な株価の値上がりを予想して投資した場合、予想に反して株価が下がり「買値」を下回れば「含み損」が生じます。

ナンピン買いによる失敗で多いのが、自分の「買値」よりさらに下がっているから安いと判断し、株を買い増してしまうというものです。

この投資家にとっては、「買値」は確かに損得の分岐点となる重要な基準です。

しかし、他の投資家や市場にとってはなんの意味も持ちません。

つまり株価が割安かどうかの判断に自分の「買値」は関係ないのです。

一方バリュー投資では、キャシュフローを生み出す収益力やブランド力、保有する資産などからその企業本来の価値を見極め、それよりも株価が割安なタイミングで長期投資を行います。

財務諸表などの客観的な数字から導き出された企業本来の価値は、他の投資家や市場にとっても(多少の幅はあれ)共通の基準であり、また相場や投資家心理などに左右されて常に変動する株価に比べ、それほど短期的に大きく変動するものでもありません。

もともと株価が割安なタイミングで投資するバリュー投資では、下値リスクは小さく、たとえ株価が「買値」を下回って含み損が生じても、株をより安く買えるチャンスと捉えることができます。

企業本来の価値が損なわれるようなことがない限り、一時的な含み損は気にする必要はなく、原則損切りは不要です。

気持ちにゆとりを持って、じっくりと腰を据えて株価が上がるのを待つバリュー投資は、株価はいつになれば戻るのだろう、もっと下がるのではないかといった不安や苛立ち、諦めといった気持ちで塩漬け株を保有し続けるのとは全く違った有意義な投資となります。

5、プロのバリュー投資法

通常バリュー投資では割安な銘柄を見出し、その銘柄本来の価値が市場から適正に評価され、株価が上がるまで“待つ”ことが基本であり、長期スタンスでの投資となります。

投資会社やヘッジファンドといったプロの投資家の中には、バリュー投資を基本としながら、投資先企業の企業価値を向上させ、市場からの評価を高めるため、自ら積極的に働きかけを行うアクティビスト(物言う投資家)も存在します。

公式サイト:M&S

たとえばアクティビストとして活動する投資会社M&Sでは、企業の手掛ける事業の優位性や将来性、保有資産を徹底的に分析した上で、企業本来の価値と現在の企業価値(市場における時価総額)との間に乖離のある銘柄(いわゆるバリュー(割安)株)に投資します。

株主としての立場で投資先企業の経営陣との対話を行い、改善策などを提案するとともに、ときに厳しい要求や株主提案を通じて経営陣へのプレッシャーを与え、企業価値や市場からの評価を高めることを目的とした働きかけが行われています。

このような働きかけにより、投資先の中長期的な企業価値の向上とともに、株価の上昇といった形で比較的早期に利益が実現される効果が期待されます。

その効果の現れともいえるように、M&Sでは2016年に+46.26%(同年の日経平均株価のリターン+1.57%)、2017年には+27.06%(同+17.96%)と驚異的なリターンをあげています。

プロの投資家は高い分析力に基づいたバリュー投資で下値リスクを抑えながら、その資金力を活かして、効率のよい投資を行っているのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

同じ含み損でも、「買値」に基準を置く投資家と、「企業本来の価値」に基準を置く投資家では、その見え方は違います。

目先の株価を予想して短期的に利益を狙うのなら、あらかじめ損切りラインを定めておき、それを下回れば潔く損切りし、塩漬けにしないというのが賢明な判断と言えます。

一方長期スタンスでバリュー投資では、目先の値動きや含み損は気にせず、投資の根拠となった企業本来の価値が失われていない限り、原則損切りも不要です。

ただし企業本来の価値が失われるようなことがあれば、損益に関わらず株を売る判断は必要です。

損切りがなかなかできず含み損に悩んでいるのなら、損切りの必要ないバリュー投資を実践してみてはいかがでしょうか。