くりっく株365は知らない、あるいは知っていても詳しくはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、くりっく株365とはどのようなものなのか、くりっく株365を活用した投資で成功するために必要なポイントについて解説していきます。
1、くりっく株365の仕組みは?
(1)差金決済取引(CFD)
「くりっく株365」は、東京金融取引所に上場する株価指数証拠金取引のことです。
株価指数証拠金取引とは、売買の差金を受け渡しをすることなく、買値と売値を数字上で決済し、差額(差金)をやりとりする差金決済取引(CFD・Contract For Difference)のことです。
CFDの投資対象は株式指数以外にも様々なものがあり、米ドル・円など外国為替を対象としたものが、FX(外国為替証拠金取引)です。
(2)取引単位・証拠金額
くりっく株365の取引単位は「取引対象となる株価指数の100倍」であり、これを「1枚」とよびます。
例えば日経平均株価が22,000円であれば、日経225証拠金取引の1枚は22,000円×100=220万円となり、これが売買される1枚あたりの取引金額です。
取引を行うには、この取引金額の1/20〜1/30程度の証拠金(担保)を預けておく必要があります。
(3)取引方法
くりっく株365は、「買い」だけでなく「売り」からスタートすることができます。
(4)完全マーケットメイク方式
くりっく株365で取引される商品の価格は、「完全マーケットメイク方式」という方法で決定されます。
マーケットメイク方式とは、複数のマーケットメイカー(*)から提示される価格の中から、最も安い売値(売呼値)と最も高い買値(買呼値)を抽出し、リアルタイムで取引価格を提示する方式のことです。
これにより、私たちはその時点における最も有利なマーケットメイカーの提示価格で取引を行えるようになっています。
(*マーケットメイカー:東京金融取引所へ価格の提供を行っている金融機関)
買い呼値 | 売り呼値 | スプレッド | |
A社 | 22,002 | 22,010 | 8円 |
B社 | 22,000 | 22,005 | 5円 |
↓ | スプレッドが最も小さくなるように各マーケットメイカーから提示された呼値が組み合わされる | ||
提示レート | 22,002 | 22,005 | 3円 |
(5)取扱銘柄
くりっく株365では現在、日経平均株価(日経225)を含む4つの株価指数に投資することができます。
対象指数 | 市場 | |
日経225証拠金取引 | 日経平均株価 | 東京証券取引所 |
NYダウ証拠金取引 | ダウ・ジョーンズ 工業株価平均 |
ニューヨーク証券取引所(NYSE)NASDAQ |
DAX®証拠金取引 | DAX® | フランクフルト証券取引所 |
FTSE100証拠金取引 | FTSE100 | ロンドン証券取引所 |
2、くりっく株365のメリット
くりっく株365には、以下のようなメリットがあります。
(1)土日を除き、ほぼ24時間取引可能
日本市場だけでなく海外市場の取引時間にも対応しており、土日・1月1日を除き、祝日も含むほぼ24時間取引できます。
例えば「日経225証拠金取引」では、午前8時半から翌朝午前6時(サマータイムは午前5時)が取引可能時間となっています。
欧米市場が開く夕方以降の時間帯は取引が活発になり、日中仕事で取引ができないという方でも、じっくり取引ができます。
また土日と元日(土日に当たれば、1月2日)を除けば基本的に取引が可能で、大型連休などで、取引が長期間できなくなるということがありません。
(2)レバレッジの効いた取引が可能
証拠金取引であるくりっく株365では、実際の証拠金の数十倍の取引をすることができ、少額の資金でも効率的に取引ができます。
この証拠金に対する実際の取引金額の倍率を「レバレッジ」と言います。
レバレッジを効かせることによって、少ない元手でも大きな利益を狙うことができます。
その反面、予想に反して相場が動いてしまうと大きな損失を被る可能性もあるため注意が必要です。
このレバレッジをどのくらいかけるのかは、預ける証拠金に対する取引金額によって決まります。
そのため例えば取引金額200万円に対して、証拠金を200万円以上預けていればレバレッジは1倍(レバレッジなし)とすることができます。
レバレッジが小さくなれば、その分リスクを下げることができるため、許容できるリスクの大きさに応じてレバレッジを調整することがポイントです。
(3)売りからのスタートが可能
くりっく株365では、信用取引やFXなどと同様に、売りから取引をスタートすることができます。
そのため株価の上昇局面だけでなく、下落局面においても積極的に利益を狙うことができます。
(4)決済期限がない
一般に取引所に上場されている先物取引(信用取引)では、決済期限が設定されており、その期限までに決済しなければ強制的に決済されます。
一方、くりっく株365には期限はなく、決済(反対売買)をしない限りはポジションを持ち続けることができます。
そのため、期限に縛られずじっくりと投資できるというメリットがあります。
ただし、一定以上の含み損が出ると、必要な証拠金が不足しロスカットによって強制的に決済されてしまうこともあります。
もし価格が大きく動くと予想されるような場合、ロスカットにあわず保有し続けたいのであれば証拠金を増やすなどの対応が必要となります。
(5)配当金(買いポジション)・金利(売りポジション)を受け取れる
権利確定日に現物株を保有していれば配当金を受け取れるのと同様に、くりっく株365の「買い」ポジションを持っていれば、株価指数を構成する銘柄の配当をもとに計算される「配当金相当額」を受け取ることができます。
またくりっく株365の「売り」ポジションを持っている場合には、「金利相当額」を受取ることができます。
(6)運用コストをかけずインデックス投資が可能
株価指数に投資する方法としては、インデックスファンド(投資信託)やETF(上場投資信託)を購入する方法もあります。
しかし投資信託では、保有している間には信託報酬などの運用コストが発生します。
くりっく株365では、この運用コストが生じないというのもメリットと言えるでしょう。
(7)為替リスクを気にしなくて良い
くりっく株365では日経225以外にも、海外株式指数に投資することができます。
このときの取引単位は、円に換算することなく、直接その指数に100をかけたものとなります。
為替リスクはマーケットメイカーが負い、円で価格を提示されます。
日経225証拠金取引の配当相当額と金利相当額(2016年実績値) | |||||||||||||
2016年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間合計 |
配当金相当額 | 129 | 1,058 | 12,782 | 0 | 0 | 2,244 | 126 | 1,135 | 11,503 | 0 | 0 | 2,768 | 31,745 |
金利 相当額 | 88 | 42 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 130 |
そのため為替レートや為替リスクを気にする必要はなく、損益がイメージしやすいなどのメリットがあります。
(8)先物取引やFXと損益通算ができる
くりっく株365は、先物取引やFXと損益通算することができます。
3、レバレッジ取引の注意点とデメリット
(1)配当金(売りポジション)・金利(買いポジション)の支払いが発生する
買いボジションを保有している場合には配当金相当額、売りポジションを保有している場合には金利相当額が受け取れるというメリットがあります。
参考:配当や金利の仕組み
その一方で、買いボジションを保有している場合には金利相当額、売りポジションを保有している場合には配当金相当額を、それぞれ支払わなければならないという点には注意が必要です。
金利相当額は大した金額ではありませんが、配当金相当額は年間ではそれなりの金額となるため、売りポジションを持つ際には特に注意が必要です。
(2)高レバレッジはリスクが大きくなる
くりっく株365ではレバレッジをかけることによって、少額な証拠金で大きな金額の取引を行うことができます。
これは資金効率を高めるメリットがある反面、少しの値動きでもロスカットで元本を減らしてしまうリスクも伴います。
許容範囲を超えたリスクをとってしまっていないか、リスク管理・資金管理には特に注意が必要です。
(3)取引対象が限られる
くりっく株365で取引できる銘柄は現在4つに限られています。
(4)特定口座には対応しておらず確定申告が必要となる
くりっく株365で得た利益は申告分離課税となり、確定申告が必要です。
現物株式や投資信託の取引だけであれば、源泉徴収ありの特定口座を選択することで原則確定申告が必要なかったのに比べ、面倒に感じるかもしれません。
また利益額によっては、確定申告によって扶養から外れたりすることもあるので注意が必要だと言えます。
4、他の金融商品との違いは?
くりっく株365(日経225証拠金取引)と取引対象の近い他の金融商品の特徴をまとめると以下のようになります。
くりっく株365 (日経225) |
日経225先物 (mini) |
信用取引 | ETF (上場投託) |
|
取引単位 (1枚) |
日経平均株価 ×100倍 |
日経平均株価 ×100倍 |
– | – |
最低必要証拠金 | 96,000円 | 63,000円 | 30万円程度 | – |
最大レバレッジ | 約23倍 | 約35倍 | 約3倍 | 1倍 (信用取引) 約3倍 |
決済期限 | なし | 最長3ヶ月 | (制度信用) 最長6ヶ月 (一般信用) 無制限もあり |
原則なし *信用取引の場合は信用取引に準ずる |
配当金相当額 | 受払あり | 受払なし | 受払あり | 受け取り |
金利相当額 | 受払あり | 受払なし | 受払あり | – |
呼値単位 | 1円 | 5円 | 10円 | 銘柄による |
取引成立方法 | 完全マーケットメイク方式 | オークション方式 | ||
取引時間 | 8:30~翌6:00 | 9:00~15:10 16:30~翌5:30 |
9:00~11:30 12:30〜15:00 |
|
休業日 | 土日・元日 | 土日・祝祭日 | ||
取引手数料 (税込) |
153円/枚 | 43.2円/枚 | 0円〜 | 0円〜 |
短期売買 | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ |
長期売買 | ◯ | × | (制度信用) × (一般信用) △ |
◯ |
(*SBI証券・2018年4月23日時点)
(1)日経225先物との違い
くりっく株365と日経225先物とはともに証拠金取引だという点では共通しています。
しかし日経225先物の価格には配当金や金利が含まれているのに対して、くりっく株365では、配当金や金利は別途受け渡しが行われる点で違いがあります。
くりっく株365の価格には配当金や金利が含まれないことから、より日経平均株価に近い価格で取引することができます。
また日経先物225には配当がなく、3カ月以内に決済しなければならないため短期での売買となる一方、くりっく株365では決済期限はなく、配当も受け取れるため短期売買はもちろん、長期売買にも適しています。
(2)信用取引との違い
配当金や金利(貸株料)の受払がある点や、売建やレバレッジを効かせられるという点では、くりっく株365と信用取引には共通する部分があります。
ただ信用取引では、個別銘柄(原則上場全銘柄)が投資対象となるのに対し、くりっく株365では4種の株価指数に限られるという違いがあります。
信用取引には取引所のルールで取引を行う制度信用取引と、証券会社の定めるルールで取引を行う一般制度信用取引があります。
制度信用では6ヶ月以内に決済しなければならないものの、一般信用取引には決済期限がないことも一般的です。
その点で一般信用取引であれば長期保有もできそうですが、その場合は年率で2.5〜4%程度の金利負担(買建の場合)が発生するため、長期で保有すると金利負担がかさんでしまいます。
一方で、くりっく株365では買方金利は0%台(2017年は買方金利発生なしのため0%)であり、長期保有による金利負担については考えなくてもいいレベルであるのと大きく違います。
(3)ETFとの違い
株価指数に連動するよう運用が行われる「株価指数連動型ETF」は、くりっく株365とも似ている商品です。
ETFは株式と同じように株式市場でリアルタイムに売買することができますが、取引は株式市場の取引時間内に限られ、くりっく株365よりも限定的です。
ETFも信用取引を利用すれば、約3倍程度のレバレッジ効かせた取引も可能ですが、数倍~数十倍のレバレッジを効かせた取引のできるくりっく株365に比べると資金効率は下がります。
配当金については、ETFでは「分配金」として、支払利息や信託報酬控除後の金額を、年1~2回程度受け取ることができます。
くりっく株365では、買いポジションを持っていれば指数構成銘柄に配当落ちがあるたびに、金利相当額を控除した配当金相当額を受け取ることができます。
5、くりっく株365の取引証券会社の選び方
くりっく株365を取引するためには、くりっく株365を取り扱う金融機関で、CFD(くりっく株365)口座を開設する必要があります。
2018年4月時点、12社の金融機関がくりっく株365を取り扱っています。
くりっく株365 取扱金融機関・手数料一覧(2018年4月23日時点) | |
証券会社 | 手数料(1枚につき・片道・税込) |
日産証券 | 151円 |
マネックス証券 | 152円 |
SBI証券 | 153円 |
カブドットコム証券 | 153円 |
岡三オンライン証券 | 153円 |
インヴァスト証券 | 216円 |
岩井コスモ証券 | 216円 |
KOYO証券 (オンラインコース) |
324円 (日計り決済時)162円 |
マネースクウェア・ジャパン | (日経225)540円 |
(その他)324円 | |
カネツFX証券 (インターネットコース) |
432円 |
フジトミ | 540円 |
豊商事 | 1,404円 (最低*)540円 *月間取引枚数に応じキャッシュバック |
手数料では、最近取扱を開始した「日産証券」が最安となっています。
また取扱開始記念として口座開設で5,000円、2018年5月末までの取引手数料全額キャッシュバックキャンペーンなども行われています。
ただ手数料上位5社までの差は1〜2円であり、それほど気にするレベルではありません。
取引ツールの充実度や使いやすさでは、「岡三オンライン証券」に定評があります。
また「マネースクウェア・ジャパン」では、トラリピ®(トラップリピートイフダン®)という自動利益確定ツールを使い、くりっく株365の自動売買を行うことができるという特徴があります。
手数料上位5社までの取扱会社であれば、くりっく株365を取引する上で大きな違いはないと言えます。
他の商品の取引や取引ツールの使いやすさ、提供される情報の量・質などを比較し、自分にあった証券会社を選ぶようにしましょう。
6、くりっく株365のはじめ方
くりっく株365をはじめるには、「くりっく株365」取扱会社に株価指数証拠金取引口座を開設することが必要です。
(1)「くりっく株365」口座開設の流れ
オンライン手続き | 書面手続き | |
1 | 「くりっく株365」取扱会社一覧
上記資料請求から口座開設を申し込む |
|
2 | 各取扱会社のHPから必要事項を記入して送信 | 住所と氏名などを入力して送信すると、資料と口座開設申込書が送付される |
3 | 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)を郵送・アップロードなどで送付 | 必要事項を記入・押印し、本人確認書類のコピーを同封して返送 |
4 | 口座番号、ID、初期ログインパスワード、初期取引パスワードなどを受け取る | |
5 | くりっく株365取扱会社HPから初期ログインパスワードでログインし、 ログインパスワードと取引パスワードを変更後に、取引を開始することができる |
(2)くりっく365とくりっく株365とは別口座
くりっく株365に似ている商品に「くりっく365」があります。
くりっく365は「為替(通貨デリバティブ)」を対象としたもので、「株価指数(有価証券関連デリバティブ)」を対象とするくりっく株365とは別物とされます。
法令上、証拠金を別管理する必要があるため、たとえ同じ証券会社であってもそれぞれ別々の口座が必要となります。
一方の口座に預けた証拠金は、その口座内だけで利用することができ、口座間で融通することはできません。
そのため証拠金の不足、ロスカットの判定も口座ごとに行われます。
7、くりっく株365取引成功者のブログ
最後にくりっく株365の取引で成功されている方のブログをいくつかご紹介します。
今後くりっく株365を取引する上での参考となるはずです。
(1)年率10%(くりっく株365)で1000万円貯める
(2)ショー太のぶらり投資旅
(3)おっさんの節約&小遣い稼ぎの術
(4)The Goal
まとめ
いかがでしたでしょうか。
くりっく株365は、現物株・ETFと信用取引・先物取引の両方の特徴を持った金融商品です。
レバレッジを効かせることができるため、少額の資金でも効率よく運用を行うことができます。
一方でレバレッジはリスクを拡大させる要因ともなります。
そのため自分の許容できるレベルを超えてリスクを取ることがないよう、レバレッジの大きさには注意が必要です。
くりっく株365をうまく活用し、投資を成功につなげていただければ幸いです。