投資信託を始めて多くの方が悩む問題が、「投資信託のベストな買い時っていつ?」というものです。投資の世界では、安いときに買って高いときに売るのが利益を出すことが基本ですよね。
投資信託の基準価額は毎日更新されるため、「少しでも安いときに買いたい」と買い時を悩み、結局タイミングを見失う方は少なくありません。
しかし、投資信託で完璧な買い時を見極めることは、プロでも困難です。投資信託では安いときにこだわるよりも、買う機会を分散させたほうがより確実に利益を得られるでしょう。
当記事では、投資信託の買い時で重要なポイントをふまえたうえで、「本当の買い時とは何か?」についてご案内していきます。投資信託の買い時や投資タイミングがわからず悩んでいる方は、参考になさってください。
投資信託の買い時を考える前に知っておきたい5つのポイント
結論からお伝えすると、「投資信託の買い時」、つまり「利益をより増やすための買うタイミング」を正確に見極めることはできません。投資に慣れたプロであっても、毎日変わる投資信託の基準価額を予測することは困難です。
万一基準価額を予測できたとしても、安いときに買えば利益を得られるというわけではありません。投資信託の運用で利益を得たいのであれば、安いときに買おうと基準価額の低さにこだわるのは危険です。
ここでは買い時に悩んでいる方こそ知っておきたいポイントを5つ、解説していきましょう。
ポイント1:そもそも投資信託の基準価額は株価とは違う
投資信託の価値を示す「基準価額」を株価と同様に考え、少しでも安く買おうと思う方は多いです。しかし、基準価額と株価は根本的に違うため、注意してください。
- 投資信託の基準価額:純資産総額を投資信託の口数で割ったもの。1日1回更新される
- 株式投資の株価:市場の需要と供給によって決まる、株式ひとつあたりの値段。リアルタイムで値段が変動する
株価は株式を買う人が多ければ上がり、売る人が多ければ下がります。需要と供給が株価に直結するため、わかりやすいですよね。
しかし、投資信託の基準価額は、株価のように需要と供給によって決まるわけではありません。基準価額はファンド内に保有している資産の価値が変動したり、分配金を出したりしたときに変動します。
たとえば、運用成績が好調でファンドから分配金が出た場合、一時的に基準価額は下がります。しかし、この場合「基準価額が下がったから需要が減っている」というわけではありませんよね。
また、投資信託の分配金はファンドの運用益から出る収益分配金と、投資元本の払い戻しにしかすぎない特別分配金があります。分配金を出しているファンドでも運用成果が好調とは言えない場合もあるのです。
このように、投資信託の基準価額が変わる仕組みは株価と大きく異なるため、株価と同じ感覚で基準価額を考えてはいけません。基準価額はあくまでその時点のファンドの時価を示す指標であり、株価と混同しないようにしてください。
ポイント2:「基準価額が低い投資信託」=「買い時」ではない
投資信託ではファンドの基準価額が低い(安い)ときに買って、そのファンドの基準価額が高値になったときに売れば利益が出ます。安いときに買って高くなったときに売れば利益が出るという仕組みについては、株価と同じです。
では、基準価額が低くなっている投資信託は買い時なのかというと、実はそうでもありません。なぜなら基準価額は、ファンドの優劣や運用成績を示すものではないからです。
先述したように、基準価額はファンド内の保有資産(株や債券など)の変動や、分配金の有無によって変わります。ファンド内に保有している株式資産の運用が好調で資産価値が上がれば、基準価額は高くなります。
しかし、運用成績が好調で分配金を出したとき、基準価額は反対に低くなります。運用成績が良くて基準価額が高くなるときもあれば、成績が良いのに基準価額が低くなるときもあるのです。
ただ、基準価額の高低を見ても、そのファンドの運用状況が好調かどうかを知ることはできません。基準価額が低いファンドを買い時だと思って投資しても、その後の運用状況が悪ければ基準価額は上がりませんよね。
投資信託で利益を出すには、ご自身が買ったファンドの基準価額がその後に上がっていく必要があります。
つまり、運用成績が好調で成長性のあるファンドを買わないといけません。
基準価額の低さ(安さ)ばかり見てファンドの成長性を見誤ると、もっとも大切な利益を得ることはできないので、気をつけてくださいね。
ポイント3:基準価額が低くて有利になるのは積み立て投資だけ
基準価額が低いファンドをやみくもに買っても、その後ファンドが成長しなければ利益にはならないとお伝えしました。基準価額はあくまで、資産の増減を表しているだけだからです。
そのため、投資信託の一括投資においては基準価額の低さが特段有利になることはなく、過度に買い時を気にする必要はありません。
ただし、一括投資ではなく積み立て投資をしている場合は、基準価額は低いほうがより多くの口数を買えるというメリットがあります。
積み立て投資とは、買う機会を分散させて、ファンドの購入金額を引き下げる投資法です。安いときに買うことにこだわるのではなく、買う機会を分散させることにこだわり結果的に平均購入単価を安くする方法です。
この方法であれば結果的に基準価額を低くでき、投資効果が有利になるのでおすすめです。買う機会の分散効果について、次項でくわしく解説しましょう。
ポイント4:買い時より買う機会を分散させるほうが確実
投資信託では、ファンドが安くなるタイミングを考えるよりも買う機会を分散させたほうが、基準価額を安くできます。
買う機会を分散させる方法の代表例が、投資信託の積み立て投資です。積み立て投資とは同じファンドを一定のタイミング・一定の金額で定額購入する方法です。定期的に購入することでファンドの平均購入金額を抑えられるため、結果的に基準価額を安くできます。
多くの証券会社では、毎月・毎週など任意の期間で積み立て投資を自動化できるようになっています。積み立てる金額さえ設定すれば手間をかけずに投資できますし、基準価額の変動を気にする必要もありません。
買い時に悩んでいては、いつまでたっても投資できません。それならいっそ、買う機会を自動的に分散させてしまうほうがストレスなく手軽に、確実に基準価額を安くできますよ。
ポイント5:株価暴落時の大量買いはアリだがタイミングに注意
投資信託で買い時を予測するのは困難なので、おすすめしません。しかし、「株価暴落などで大幅に基準価額が下落しているとき」は別です。
「株価暴落」とは、株式市場全体で株価が急激に下がることを指します。株価が下がれば株式を含む投資信託にも大きな影響があり基準価額も大幅に下がります。
基準価額が下がったときに大量にスポット買いをしておき、その後基準価額が大幅に回復すれば、大きな利益を得られるでしょう。
このように「暴落時にこそ大量買い」をして利益を得る方法は、投資戦略の一つです。余裕資金があり、相場や基準価額の回復に期待が持てるのであれば、暴落時の大量買いを狙うのも良いでしょう。
ただ、暴落時の大量買いには、それ相応のリスクがあります。暴落が始まってすぐに買いに走ったものの、その後さらに相場が下落して損失を被る可能性もあるので注意が必要です。
暴落時の大量買いはあくまで余裕資金があるとき、自己責任のもとで行うようにしてくださいね。
買う機会の分散「積み立て投資」とは
投資信託では「いつが安いか?」という買い時を考えるよりも、買う機会を分散させるほうが結果的に安く買えるとお話してきました。
買う機会を分散させる方法とは、先述した投資信託の積み立て投資です。投資信託を買うときはスポット買いではなく、できる限り積み立てでファンドを買うようにしましょう。
スポット買いでは「少しでも安いとき、基準価額が下がっているときに買いたい」と考え、買い時に悩んでしまいがちです。しかし、積み立て投資であれば、最初に設定したタイミング・金額で自動的にファンドの買付をしてくれます。
買い時で悩むことがなくなるだけではなく、平均購入金額を抑え結果的に安く買うことができるのです。
予測困難な買い時を延々と考えて結果的に投資機会を見失うことは本末転倒です。買い時に悩んでいるという方こそ、積み立て投資で確実に利益を狙いにいくようにしましょう。
積み立て投資をより効果的にするには、買う機会をできる限り分散させることです。可能であれば「投資信託の毎日積み立て」ができる証券会社を使用し、買付の頻度を高くするようにしましょう。
毎日積み立て投資できるおすすめ証券会社3選
投資信託の買い時を考えずにすむ積み立て投資をするときは、買付頻度がもっとも高い「毎日積み立て」がおすすめです。
一般的な積み立て投資の頻度は「毎月」や「毎週」ですが、最近は一部の証券会社で「毎日」積み立てることが可能になりました。投資信託の基準価額は1日1回更新されるため、毎日の買付は究極の分散効果を得られます。
そのため、今から投資信託を始めるのであれば、毎日積み立てができる以下3つの証券会社をおすすめします。いずれの証券会社もネット証券で、手数料の低さやオンライン上での投資のしやすさには定評があります。
ファンドによっては100円から毎日積み立ての設定ができるため、少額でコツコツ投資したいという方にもおすすめですよ。
SBI証券
SBI証券はネット証券最大手で、口座開設数ナンバーワンです。ファンドの取り扱い本数や検索機能が充実しています。
画像引用元:SBI証券
楽天証券
楽天証券は、楽天グループの証券会社です。楽天ポイントを使って投資できるため、楽天ユーザーはとくにメリットが大きいといえます。
マネックス証券
マネックス証券は、ゴールドマンサックス出身の松本大氏(現グループCEO)が創業した会社です。サイトが見やすく使いやすい特徴があります。
NISAの毎日積み立ては、2020年秋から対応予定です。
投資信託の「本当の買い時」とは
これまでのお話から、投資信託の買い時とは安くなるタイミングではないということがおわかりいただけたと思います。では、本当の意味で「買い時はいつなのか」と言うと、それは資産額が上がっていく投資信託を見つけたときです。
大切なポイントなので、くわしく解説していきましょう。
本当の買い時とは「タイミング」ではない
投資信託は、安いときに買えれば利益を得られる可能性があります。しかし、安ければ良いというわけではなく、買ったファンドの基準価額が上昇していかなければ利益を得ることはできません。
安くなっているタイミングで買うのは大切だけど、もっとも大切なのはファンドの成長性があるかどうかです。つまり、本当の買い時とは、これからゆるやかに成長するファンドを見つけたときなのです。
資産額が上がっていく投資信託こそ買い時
成長性のあるファンド、つまり資産額が上がっていくファンドを見つけたときこそ、投資信託の本当の買い時であるとお伝えしました。なぜなら、投資信託の利益は買ったときの基準価額から売ったときの基準価額を差し引いて決まるからです。
買ったときの基準価額が高くても、その後ファンドの運用成績が好調で資産額も順調に増えていけば、基準価額は少しずつ上がっていきます。この成長性こそが、投資信託の利益のもとになるのです。
とはいえ、「これから資産額が上がっていくファンドを、どうやって見つければ良いの?」と思いますよね。ファンド選びに大切なポイントがあります。
悩んだらまずは運用開始後のトータルリターンと、純資産総額の推移を見るようにしてください。できれば運用開始後10年ほど経過していて、累計で安定したリターンを出しているファンドが良いでしょう。
また、ファンドの将来性をはかるために、基準価額よりも純資産総額の推移を見るようにしてください。
純資産総額が右肩上がりで成長し続けているファンドは、それだけ多くの投資家から指示されているということです。ファンドの資金が集まれば集まるほど運用効率は上がりますし、盤石な運用体制を築くことができます。
良質なファンドを見つけることは大変です。しかし、やみくもに買い時を考えるよりも、ファンド選びに時間を費やしたほうが、本当の意味で良いファンドの買い時に出会えるはずですよ。
自分なりの売買ルールは決めておく
投資信託で買い時を考えるときは、同時に売り時も考えておかなければいけません。ただ、買い時を考えるときと同様、正確な売り時を見極めるのも困難な話です。
買い時の場合、これまでお話してきたようにタイミングを気にせず、良いファンドへ積み立て投資をしていくことで対処できます。しかし、売り時となるとそれこそ正解がないので、タイミングを考えだしたらきりがありませんよね。
買い時も売り時も、タイミングを悩んだところで解決はしません。そのため、投資信託を始めるときは、ご自身の中で一定の売買ルールを決めておくことをおすすめします。
投資資金はいつまでにいくら必要なのか、投資の目的を振り返り、ご自身の資産形成に適した売買ルールを考えてください。利益が出たとき、損失が出たときはどうするのか、一定のルールを決めておかないと適切な投資判断ができません。
投資を続けるうえで大切なことは、相場の変動に流されない冷静な視点です。買い時や売り時で悩まないようにするためにも、必ずご自身の売買ルールを決めておくようにしましょう。
まとめ
投資信託の買い時とは、「ファンドが安いときに買う」ことではありません。
たしかに、安いときに買って高いときに売れれば利益にはなります。しかし、安さだけ考えて投資をしても、利益につながるとは限らないのです。
そもそも、買い時で悩んでいるのは投資信託で利益を得るためですよね。利益を確実に得たいのであれば、以下のポイントをふまえたうえで、買い時を見直すようにしてください。
- 投資信託の基準価額は株価とは異なるため、基準価額の高低や安さにこだわってファンドを買うのは危険
- ファンドが安くなるタイミングを見極めるよりも、買う機会を分散させるほうが結果的に平均買付け金額を安くできる
- 買う機会を分散させるために有効的な方法は、毎日積み立て投資
- 本当の買い時は、資産額が上昇していく成長のあるファンドを見つけたとき
いずれも重要ポイントです。ファンドを買うタイミングに悩むより、買うファンド選びに時間を費やし、確実に利益を得ることを目指していきましょう。