ヘッジファンドは「大損」しやすい?大損する3パターンと対策

コロナショックやリーマンショックのような金融危機が起きると、「〇〇というヘッジファンドが大損を出した」「数百憶ドルの損失が出たと見られる」などのニュースが報道されます。金額が大きいので、「ヘッジファンドって危ないんだ……」と思ってしまう方も多いのでは。

ヘッジファンドは高利回りが期待できる商品で、正しく活用できるなら非常に魅力的な投資先です。しかし、他の投資商品と同様、損失が生じるリスクはあります。大損するのはどのような場合なのかを理解し、対策した上で投資することが大切です。

この記事では、ヘッジファンドが大損する3つのパターンと、個人の投資家でもできる対策を解説していきます。大損しにくいように対策し、リスクを下げた運用を心がけましょう。

ヘッジファンドは大損しやすい?

ヘッジファンドも投資商品なので、株式投資や不動産投資など他の商品と同様、リスクはあります。利益が出るか損失が出るかは、運用環境やファンドマネージャーらの手腕に左右されますし、大きな利益を上げられる可能性がある一方、大損する可能性もあります。

ヘッジファンドの「ヘッジ」とは「避ける」という意味の英語で、元々はリスクをコントロールしながら運用する商品でした。常にプラスの収益を上げることを目標とし、パフォーマンスが運用環境に左右されにくいよう工夫を行っているのです。

そのため、下落相場など運用環境が悪いときでも、プラスの収益を上げられるファンドがあります。

 

しかし、最近のヘッジファンドは積極的な運用を行うことが多く、商品によってはハイリスクです。いくら適切なリスクヘッジがなされていると言っても、ファンドマネージャーらの想定外の事態が起こる可能性は、ゼロではありません。大損するリスクがないとは言えないことは理解した上で投資を申し込みましょう。

ヘッジファンドで大損する3つのパターン

ヘッジファンドで大損するパターンは、以下の3つに大別できます。

  • ヘッジファンドが運用に失敗する
  • 高額な手数料を差し引かれる
  • 詐欺ファンドに引っかかってしまう

ヘッジファンドで大損しないようにするためには、これらのパターンに引っかかりにくいと考えられる商品を選べば良いといえます。大損しないためにも、上記の3つのパターンについて理解を深めましょう。

ヘッジファンドが運用に失敗する

大損するパターンとして多いのが、ヘッジファンドが運用に失敗する場合です。

ヘッジファンドはファンドマネージャーやアナリストなど投資のプロが運用する商品ですが、失敗することはあります。基本的には、あらゆる不測の事態に備えておくのがヘッジファンドなので、想定内のリスクであれば大損せずに済むことが多いです。

しかし、プロの投資家や経済の専門家にすら想定できない事態は起こりうるので、大損が出てしまうことがあります。

 

たとえば、2020年のコロナショックです。世界中の誰もが予期していなかった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、ロックダウンなどが行われ先進国を始め各地の経済がストップしました。いつ回復するかわからない状況のなか、株式市場も大いに下落しました。

中国で1人目の感染が発覚したときに手を打ち、損失の幅を最小限に押さえることができたヘッジファンドもあれば、市場の下落に巻き込まれて大損を出したヘッジファンドもあります。パンデミックへの想定が甘かったり、運用資産の規模が大きすぎて機動的な対処ができなかったりと、大損の原因はさまざまです。

投資のプロが運用するヘッジファンドといえど、不測の事態が起きて大損が出る可能性はあります。どんな投資商品でも、損失が生じるリスクはあると理解しておきましょう。

高額な手数料を差し引かれる

高額な手数料も、ヘッジファンドで大損する原因となります。

ヘッジファンドはプロに運用を任せる商品なので、手数料がかかります。ヘッジファンドの手数料は、主に管理報酬と成功報酬の2つです。これらの手数料が高額なのに、利益が少ししか上がらないヘッジファンドだと、手数料が膨らんで大損につながる可能性があります。

 

成功報酬は利益が出たときに発生する手数料で、利益の20パーセントから50パーセント程度としているヘッジファンドが多いです。利益が出なければ発生しない手数料なので、成功報酬によって大損する可能性は低いです。

気をつけなければならないのが、管理報酬です。こちらは資産の管理や実際の運用にかかる手数料であり、運用資産の何パーセントという形で運用成果に関係なく一定の割合で差し引かれます。

ヘッジファンドが損失を出しているときでも差し引かれるので、あまりに管理報酬が大きいファンドに投資してしまうと、手数料で大損する可能性があるのです。

 

一般的には、管理報酬は2パーセントから20パーセント程度に設定しているヘッジファンドが多いですが、20パーセント前後はかなり高額といえます。ヘッジファンドの過去のリターンと比較し、管理報酬がリターンを上回って手数料負けした年があるか、よく調べてから投資しましょう。

詐欺ファンドに引っかかってしまう

利益が見込めるヘッジファンドに見せかけた、詐欺ファンドに引っかかってしまうこともよくある大損パターンです。詐欺ファンドに申し込みしてしまうと、利益が出ないどころか元本をすべて奪われてしまうので、非常に大きな損失になります。

詐欺ファンドの手口として多いのが、次のような勧誘です。

  • 投資商品なのに元本保証をうたう
  • 月利20%など無謀な収益性をアピールする
  • 「あと1人しか募集していない」など投資家を焦らせる

まず、ヘッジファンドに限らず投資に元本保証はありません。将来の相場が読めない投資について、「月利何パーセントは確実」といった勧誘をすることも不可能です。確実に利益が出るような勧誘を受けたら、詐欺だと疑ってください。

また、詐欺ファンドは投資家の判断力を奪ってその場で契約させるため、「今すぐに申し込まないと損」という勧誘をしてきます。「今なら手数料が半額」「今申し込めばキャッシュバックがある」など、投資家を焦らせる勧誘には注意してください。

ヘッジファンドで大損する人の5つの特徴

ヘッジファンドで大損するパターンは3つでしたが、どのような人が大損パターンにはまってしまうのでしょうか?大損する人の5つの特徴をまとめるので、ご自身に当てはまる部分はないか、厳しめにジャッジしていきましょう。

商品を理解せずに投資してしまう

商品の内容を理解せずに投資してしまう人は、ヘッジファンドに限らず、投資で大損しやすいです。

大損を避けるためには、投資を申し込むか検討する際に、「この商品はどのような場合に損失が生じるのか」を理解しなければなりません。投資とは、損失が生じるケースは稀なのか頻繁に起こるのか、損失が生じたらどれくらいの大きさになるのかを理解し、そのリスクを受け入れて収益を追求することだからです。

ヘッジファンドなど投資商品の良い面だけ見て、投資を申し込んでしまう人は大損しやすいです。良い面・悪い面の両方から、商品を理解する必要があります。

投資先が少なく集中投資をしている

投資先を厳選し、少ない投資先に集中投資している人も、大損しやすいです。特に、ヘッジファンドの最低投資額は1,000万円であることが多く、億単位の資産を持つ投資家でなければ集中投資になりがちです。

集中投資の問題は、損失が生じると大きくなりやすいことです。一つの投資先に全財産を投資した場合、その投資先が破綻して投資価値がゼロになってしまったら、全財産を失うことになってしまいます。

投資を始めた後放置している

投資を始めた後に放置している人も大損しやすいです。放置している間に損失が膨らみ、気づいた頃には手遅れになっていたという事態が起こりがちです。

ヘッジファンドなどプロに運用を任せられる商品は、投資家は放置で利益を得られるから楽、と言われることがあります。しかし、任せられるのは運用の判断のみであり、投資を続けるかやめるかは投資家が判断しなければなりません。

 

申し込んだヘッジファンドはきちんと利益を上げているか、何か問題は起きていないかなどは、投資家が自分から確認する必要があります。分配金が減っているなど将来の収益性に疑問を感じた場合、ヘッジファンドに問い合わせをしたり、解約を検討したりする必要があるでしょう。

余剰資金以上のお金を投資してしまう

再起不能な大損を被る可能性があるので、余剰資金以上のお金を投資している人も要注意です。

ヘッジファンドの最低投資額は1,000万円であることが多く、まとまったお金がなければ申し込みできません。そのため、マイホームや老後の生活のために貯金していたまとまったお金を取り崩し、ヘッジファンドに投資する人もいます。ヘッジファンドが収益を上げてくれれば、生活に潤いが出ることもあるでしょう。

 

しかし、ヘッジファンドで大損が発生した場合、お金は減ってしまいます。マイホームを買えなくなったり、老後の生活が苦しくなったりするかもしれません。生活に必要なお金まで投資に回して損失が生じると、人生設計が大きな打撃を受けることになってしまいます。

投資の基礎知識がない状態で申し込む

詐欺ファンドを見抜くために重要なのが、投資の基礎知識です。最低限の知識がない状態だから、「元本保証で月利20パーセント」などあり得ない広告を嘘と見抜けず、詐欺に引っかかってしまうのです。

自分で判断できないなら、信用できる家族や友人に相談したり、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談したりすべきです。投資をした経験がない人や、マネーの知識に自信がない人は、勧誘を受けたその場で申し込みをしないようにしましょう。

ヘッジファンドで大損しないための6つの対策

ヘッジファンドで大損する人の特徴を押さえたら、次は大損しないための対策を学んでいきましょう。知識を身につけ、あらかじめ対策することで、大損するリスクを下げることができます。

大損する特徴に当てはまった人も、対策方法を理解して大損しにくい投資をしていきましょう。

投資の基礎知識を身につける

ヘッジファンドに限らず、投資で大損しないために最も重要なのが、投資の基礎知識を身につけることです。知識があれば、商品の説明を読んだとき、リスクの大小を把握することができます。リスクが高すぎる商品を避け、自分のリスク許容度に合った商品を選ぶことができるのです。

また、知識があれば詐欺ファンドを見抜くことも可能です。プロでも引っかかるような巧妙な詐欺もありますが、個人の投資家に勧誘する詐欺ファンドの多くは、知識がある人なら見抜けます。

「投資に元本保証なんてない」「月利20パーセントなんて利回りを継続するのはほぼ不可能」といった基礎的な知識があるだけで、酷い詐欺被害に遭うことを避けられます。

面談で商品の疑問点を解消する

ヘッジファンドに申し込む際には、ファンドの担当者と面談を行います。商品に関する疑問点は、必ず面談で質問して解決しておきましょう。

ヘッジファンドに申し込む際に理解しておきたいのは、たとえば次のような項目です。

  • どのような場合に利益が出るのか
  • どのような場合に損失が出るのか
  • 最大損失額をコントロールする仕組みはあるか
  • 手数料はいくらか

ヘッジファンドは専門家が運用する商品なので、説明も難しくなりがちです。それでも、上記のような事柄は質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

特に、最大損失額のコントロールは、大損を避けるために確認しておきたい項目です。

ヘッジファンドによっては、「月の損失が何パーセントを超えたら、その月の運用をストップする」など、いたずらに損失を膨らませないための制限を設けていることがあります。それ以上の損失は生じない、ということなので、ヘッジファンドでの大損を避けるためにも把握しておきましょう。

商品の手数料を比較する

ヘッジファンドによって手数料が異なるので、複数のファンドを比較し、良心的な手数料のファンドを選びましょう

ヘッジファンドの手数料は、管理報酬は2パーセントから20パーセント、成功報酬は20パーセントから50パーセントの間に入ることが多いです。会社によって手数料の体系は全く異なり、非常に幅が広いのです。

 

手数料が高くても、それを上回る収益が期待できるヘッジファンドもあります。しかし、管理報酬が20パーセントなのに利回りは10パーセントで、10パーセントも手数料負けしているといったファンドがあるのも事実です。

商品の内容が良いと感じられるファンドをいくつかピックアップしたら、手数料も比べてみましょう。あまりに高額な管理報酬や成功報酬がかかるようなら、他のファンドを検討してみると良いでしょう。

余剰資金で投資をする

ヘッジファンドに限らず、どのような投資でも損失が生じる可能性はあります。損失が生じたとき、自分の許容範囲に収めるためには、余剰資金だけで投資をしていることが重要です。

上述したように、生活に必要なお金を使って投資に失敗すると、人生設計に大きな影響が生じます。パートナーに黙って投資し、夫婦で貯めた貯金を溶かしてしまった、などの失敗談は枚挙に暇がありません。

 

このような失敗を避けるためには、生活費や目的があって貯めているお金以外の、余剰資金を使って投資しましょう。使い道が特に決まっておらず、生活のために必要というわけでもないお金なら、損失が生じても暮らしに影響は出ないからです。

投資先を分散させる

投資先を分散させることも、大損を避けるために有効です。

複数の投資先に分散投資をしていれば、そのうち一つの投資先が破綻しても、損失はそこに投資した分だけで済みます。場合によっては、他の投資先の利益が損失を補ってくれる可能性があります。

ヘッジファンドの最低投資額は1,000万円程度であることが多いので、億単位のお金を投資できる人でなければ、どうしても一つのヘッジファンドに集中投資となりがちです。そのような方は、ヘッジファンドが分散投資をしているかチェックしてから申し込みましょう。種類が異なる複数の商品に投資しているヘッジファンドであれば、分散投資の効果が期待できます。

定期的に資産を見直す

プロに任せきりにするのではなく、定期的に運用資産を見直しましょう。投資したヘッジファンドは期待どおりの利益を出しているか、運用資産は減っていないかなどを確認します。

毎月分配型のヘッジファンドは分配金を口座に振り込んでくれるので、それを見ただけで「きちんと運用しているから大丈夫」と判断する方がいますが、それだけでは不十分です。利益が出ていなくても、運用資産を取り崩すなどすれば、分配金を用意することはできるからです。

 

運用成果を評価するためにも、運用レポートを確認しましょう。レポートを出す頻度はヘッジファンドによって異なりますが、毎月や四半期、半年などが多いです。運用成果を客観的にジャッジし、このまま投資を続けるか、解約するかを判断しましょう。

まとめ

ヘッジファンドで大損するのは、

  • ヘッジファンドが運用に失敗した場合
  • 手数料が高すぎる場合
  • 詐欺ファンドの場合

の3つです。大損する人の特徴や対策は解説したとおりで、ヘッジファンドで利益を得るためには、これらの3パターンに対処しなければなりません。

ヘッジファンドは高い利回りが期待できる魅力的な商品で、正しく活用すれば高い収益性が期待できます。大損を避けるための対策を行い、正しくヘッジファンドを活用しましょう。

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