新社会人になると、さまざまなことが新しく始まります。
これから自分で稼いだお金をどう使うのか、将来に向けての貯蓄や投資といったお金の問題についても、自分自身の責任で考えていく必要があります。
iDeCoは、そんな新社会人にまず知っておいて欲しい貯蓄・投資の方法です。
この記事がお金を増やすことについて興味を持つきっかけになれば幸いです。
1、新社会人でもすぐわかる個人型確定拠出年金「iDeCo」とは?
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称です。
老後に必要となるお金に備える方法としては、自分で貯金していく方法に加え、公的年金(老齢年金)や企業年金、退職金などがあります。
日本では公的年金や企業年金、退職金などの制度が充実しており、定年まで働けば老後のお金の心配はしなくても良いという時代もありました。
しかし、少子高齢化の影響などで、年金受取開始年齢の引き上げや、年金額の減額など公的年金制度は変更を余儀なくされています。
また、1つの会社で定年まで働くといった終身雇用制度も崩れつつあり、将来企業年金、退職金などが従来のように支払われる保証もありません。
このように、将来年金や退職金が受け取れるか不確かな状況の中で、老後に必要なお金を自ら備えることの重要性はますます大きくなっています。
そこで登場したのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoは公的年金に上乗せされる「私的年金」のひとつで、毎月の掛金で定期的に運用商品を購入し、自ら運用方法などを決定して運用を行なう仕組みです。
積み立てたお金を受け取れるのは、原則60歳以降となります。
iDeCoは税金面で大きな優遇を受けられるため、かなり有利な条件で積立・運用を行えるのが最大のメリットです。
そのため、老後資金準備を考えるのであれば、まず最初に検討したい方法です。
また、2017年からはiDeCoに加入できる対象が大幅に拡大されたため、20〜60歳までのほとんどの人がiDeCoを利用できるようになりました。
利用するには、自分で申し込む必要があります。
毎月の掛金(拠出額)の上限は、職業や他の企業年金制度の有無などによって決まり、最低額は5,000円です。
対象者 | 会社員 | 公務員 | 自営業 | 専業主婦 など |
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企業型確定拠出年金制度 | ||||||
あり | なし | |||||
その他の企業年金 | ||||||
あり | なし | |||||
拠出限度額 (月額) |
¥12,000 | ¥20,000 | ¥23,000 | ¥12,000 | ¥68,000 | ¥23,000 |
加入 | 任意加入(加入するには申込が必要) | |||||
掛金拠出者 | 加入者本人 | |||||
税制 メリット |
掛金は全額所得控除対象 (小規模企業共済等掛金控除) |
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拠出方法 | 給与天引き または口座振替 |
口座振替 | ||||
運用方法の決定 | 加入者本人が行う | |||||
運営費用 負担者 |
加入者本人 | |||||
給付方法 | 5年以上20年以内の年金受取、または一時金 | |||||
受給権 付与条件 |
拠出開始時期から受給権あり | |||||
運営主体 | 国民年金基金連合会 | |||||
運営管理 | 加入者本人が選定 | |||||
資産管理 | 国民年金基金連合会(委託金融機関) |
2、理想的な貯蓄額は?
(1)貯蓄する習慣を身につけることが大切
新社会人となれば、もらったお給料をどう使い、いくら貯蓄するかも、自分の責任で決めていくことになります。
欲しいものを買うという目標があってもいいですが、ひとりの社会人として将来を見据えた貯蓄についても考えて行かなければなりません。
結婚資金や教育資金、住宅購入資金、老後資金など、人生の様々な場面でお金は必要になります。
どのくらいの資金が必要かは、あなたが人生において何を重視し、どのような人生設計を立てるかによって変わってきます。
老後に必要な貯蓄額については、3,000万円程度が目安とされることが多いですが、実際にはその時になってみなければわかりません。
それはあなたが老後を迎えたとき、年金制度を含めた社会保障がどうなっているか、家族構成やいつまで働くのかなど、様々な要素によっていくら貯蓄が必要かは変わるからです。
新社会人となった段階では、何十年も先の老後資金まできっちりとした目標額を定める必要はないでしょう。
むしろ貯蓄する習慣を身につけることが、今後の人生においてとても重要になります。
(2)毎月の貯蓄額の目安は手取り収入の2割以上
貯蓄目標額については、年齢を重ね、人生設計が明確になってきた段階で明確に定めても遅くはありません。
まずは毎月の貯蓄額を決め、貯蓄を始めましょう。
新社会人の場合、毎月の貯蓄額の目安は「手取り収入の2割以上」です。
手取り収入が20万円であれば、毎月4万円以上貯蓄できるのが理想です。
ただし、手取り収入が少ないほど、収入に占める生活費の割合は大きくなるため、生活に無理がない範囲で貯蓄額を調整することも必要です。
無理をして貯蓄が続かないことのほうが、長い目でみればむしろマイナスとなることが多いです。
逆に手取り収入が多い人、あるいは実家で暮らしであったり、地方に住んでいて家賃や物価が安く、生活費が抑えられるのであれば、貯蓄割合を増やすようにしましょう。
3、新社会人はじめての投資はiDeCoがオススメ
新社会人として貯蓄は大切ですが、投資を行うことでその効率は飛躍的にアップします。
その際に、最初にオススメしたいのがiDeCoです。
それには、主に次のような理由があります。
- 税制優遇によって有利な積立・運用ができる
- 毎月5,000円から投資が始められる
- 長期にわたる定期・定額積立による投資リスクの軽減(ドル・コスト平均法)
このように、iDeCoにはリスクを抑えながら有利な条件で積立・運用ができるというメリットがあります。
また新社会人としてスタートを切ったばかりで、「お金」にあまり余裕はありませんが、「時間」という味方はついています。
少額から始められ長期運用に向いたiDeCoは、まさに新社会人にぴったりの投資方法です。
4、はじめてでもすぐわかるiDeCo運用の3つのメリット
ではiDeCoのメリットについて、より詳しくみていくことにしましょう。
(1)税制優遇
iDeCoの最も大きなメリットが、税制面での優遇が受けられるということです。
掛金支払時(拠出時)、運用による利益(運用時)、年金受取時のそれぞれタイミングで優遇があり、税金が安くなります。
税制優遇の内容 | |
掛金拠出時 | 掛金は全額所得控除の対象 (所得税・住民税が軽減される) |
運用時 | 運用益は非課税 (通常は20.315%課税) |
年金受取時 | 年金での受取は公的年金等控除の対象 一時金での受取は退職所得控除の対象 (所得税・住民税が軽減される) |
①掛金拠出時
iDeCoの掛金は、全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象です。
例えば年収300万円(税込・扶養家族なし)の方が、掛金として毎月1万円を積み立てた場合、所得税・住民税が年間18,100円安くなります(年末調整で還付)。
このケースでは、1年間で掛金2ヶ月分に近い税金が戻ってくるため、これだけでも普通に貯金するよりかなり有利です。
また年収300万円で掛金を月2万円にすると年間36,200円、年収500万円・掛金月1万円なら年間24,200円の所得税・住民税がそれぞれ安くなり、掛金や年収が多いほど、より多くの税金が戻ってきます。
②運用時
また、iDeCoでは投資信託などの運用商品で掛金を運用していくことになります。
投資信託などで運用して得た利益には、通常20.315%の税金がかかります。
しかし、iDeCoで購入した運用商品の利益には税金がかかりません。
これは実質的に利益が2割増えるのと同じ効果があり、かなり有利な条件で運用できることになります。
③年金(給付金)受取時
iDeCoでの積立金を60歳以降受け取る場合には、所得として税金がかかります。
しかし分割して年金で受け取る場合には「公的年金等」、一時金として受け取る場合には「退職所得」となり、いずれの場合も大幅な所得控除の対象となります。
(2)月5,000円から少額で投資できる
iDeCoは毎月5,000円の少額から投資することができます。
無理なく継続することができ、着実に積立を行えるというメリットがあります。
(3)ドル・コスト平均法による投資リスクの軽減効果
またiDeCoでは定期的に同じ金額ずつ投資するため、運用商品が安いときには多く、高いときには少なく買うことになります。
これをドル・コスト平均法と言います。
この方法では、運用商品の価格が高いときすべての資産を投資してしまい、資産全体の価値が下がってしまうリスクを抑えられます。
また平均の購入単価も下げることができ、運用の効率がアップするというメリットがあります。
5、必ず確認したいiDeCoデメリットと注意点
メリットの多いiDeCoですが、デメリットや注意しておかなければならないこともあります。
(1)原則60歳までお金を引き出せない
iDeCoは原則60歳までお金を引き出すことができません。
そのため、結婚資金や教育資金、住宅購入資金など、60歳より前に必要となる資金を積み立てる方法としては使えません。
貯蓄全体のバランスを考えた上で投資することがポイントであり、いくら有利な方法だとはいえ、毎月の貯蓄額すべてをiDeCoに投資してしまわないようにしましょう。
60歳より前に必要となる資金の積立・運用方法としては、通常の預貯金や金融商品を利用することになりますが、NISAなどの優遇制度も積極的に活用しましょう。
(2)投資リスクはゼロではない
iDeCoでは、掛金でどのような運用商品をどのくらいの割合で購入するかを自分で決める必要があります。
この運用商品としては、元本確保型商品(定期預金・保険)と元本変動型商品(投資信託)があります。
元本確保型商品は、元本保証でリスクは少ないものの、資産はほとんど増えません。
一方元本変動型商品は、運用成果次第で資産を大きく増やすこともできますが、元本割れのリスクもあります。
60歳まで時間があり長期の運用ができる新社会人であれば、長期運用やドル・コスト平均法によりリスクを大きく下げることができるため、元本変動型商品を選び、リスクをとってしっかりとリターンを狙うのがオススメです。
ただ、いくらiDeCoにリスク軽減効果があるとはいえ、元本変動型商品を選ぶ以上は投資リスクがあることを認識し、運用商品の選択はしっかりと行うことが大切です。
(3)手数料がかかる
iDeCoで積立・運用を行う場合、口座開設時や運用中には手数料がかかります。
口座開設時のみかかる手数料 | |
加入時手数料 | 3,000円弱 |
毎月かかる手数料 | |
国民年金基金連合会手数料 | 103円(共通) |
事務委託金融機関手数料 | 64円(共通) |
運営管理機関手数料 | 0〜600円程度(金融機関による) |
信託報酬 | 運用商品・運用残高により異なる |
口座開設時にかかる費用は1回で済みますが、毎月かかる手数料は積み重なると大きな負担となります。
そのため口座を開設する金融機関や運用商品は、この手数料(コスト)についてもよく考えて選ぶようにしましょう。
6、金融機関の選び方のポイントは?
iDeCoを始めるには、銀行や証券会社など金融機関(運営管理機関)に自分で申し込み、口座を開設する必要があります。
(1)手数料(コスト)
どの金融機関を選ぶかは自由ですが、前述の手数料(コスト)は金融機関による違いがあります。
普段使っている金融機関と同じでいいやと思って適当に選んでしまうと、月数百円以上余分にコストがかかってしまうこともあります。
それが何年も続くとなると大きな出費です。
(2)運用商品のラインナップ
また、取扱金融機関によって運用商品のラインナップにも差があり、金融機関を選ぶ上でのポイントとなります。
(3)おすすめの金融機関
iDeCoの口座を開設できるのは、1人1金融機関に限られます。
口座開設後に金融機関を変更することもできますが、時間(1〜2ヶ月)と費用がかかるため、最初にしっかりと選ぶことが大切です。
手数料の安さや、商品ラインナップの充実など総合的にはSBI証券がオススメです。
運営管理機関手数料 | 商品ラインナップ | ||
元本確保型商品 | 元本変動型商品 | ||
SBI証券 | 0円 | 4商品 | 63商品 |
楽天証券 | 0円 | 1商品 | 27商品 |
マネックス証券 | 0円 | 1商品 | 21商品 |
*商品数は、SBI証券H29.12.20時点、楽天証券H29.5.30時点、マネックス証券H29.9.14時点
(出所:iDeCo公式サイト・運営管理機関一覧)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
新社会人にとって老後は、まだまだ先の話かもしれません。
しかし老後を迎えたときのことを考え、備えておくことは決して早すぎることではありません。
iDeCoは老後に必要となる資金を効率的に備えることができ、活用しなければもったいない大きなメリットのある仕組みです。
長期投資は早く始めるほど有利であり、より楽により大きな成果を得ることができます。
まずはiDeCoから投資を始めてみましょう。