資産運用に興味がある人なら、転換社債(CB)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
- どんな商品?普通の社債とどう違うの?
- 転換社債のメリットやデメリットは?
- 転換社債はどこで買えるのか?
などいろいろ知りたいことがあると思います。
これらの疑問についてまとめました。
メディア「BIGTRADERS」がまとめた内容なのできっと参考にしていただけることでしょう。
今回の内容が投資を考える際のご参考になれば幸いです。
1、転換社債とは?
(1)転換社債型新株予約権付社債(CB)とは?
転換社債とは、株式に換えることのできる社債です。
正式名称は「転換社債型新株予約権付社債」と言います。
2002年の商法改正によってこれまでの転換社債から呼び名が変わりました。
英語ではConvertible Bond、略してCBとも呼ばれます。
(2)新株予約権とは?社債とは?
転換型「新株予約権付社債」の新株予約権とは、株を一定の価格(行使価格)で買うことのできるチケットのようなものです。
行使価格よりも株価が上がると、投資家は権利を行使して株式を買い、市場で売却することで差額が利益となります。
社債は、言ってみれば借用証書です。
期日になるとあらかじめ決められた価格(額面)が持ち主に支払われます(償還)。
企業は運転資金や設備投資のためのお金などが必要になったときに社債を発行することで資金を調達します。
社債を持っていることで投資家は年1~2回、利子を受け取ることができます。
新株予約権や社債は上場されていれば、期日前に売買することもできます。
(3)転換社債の取引
転換社債は、これら新株予約権と社債を一緒にしたような商品です。
2つを切り離して売買したり、権利を行使したりすることはできません。
期日まで持っていれば額面で償還されますが、それまでに新株予約権を行使すれば、転換社債と引き換えに株式を手に入れることができます。
受け取れる株数は転換価格によります。
例えば転換価格1万円、額面100万円の転換社債は、100万円÷1万円=100株と引き換えることができるのです。
株価がこの転換価格を上回れば、転換して利益を出すことができます。
この場合は株価が1万円を超えると含み益が出るわけです。
転換社債は上場されていれば、株式と同様、自由に売買できます。
上記の性質上、基本的に価格は株価と連動します。
2、転換社債投資のメリット・デメリット
(1)転換社債のメリット
①下落局面でも損失を抑えることができる
転換社債は「株式」と「社債」両方の特徴を持っています。
発行企業の業績が悪く、株価が下がり続けたとしても、社債は額面で償還されるので、最低でも一定の金額が保証されることになります。
例えば、額面100万円のA社転換社債を120万円で買ったとします。
A社の株価は現在120万円です。
利益の下方修正が発表され、A社株は60万円に下がってしまいました。
もし株を買っていたら、60万円の含み損となり、保有資産は購入時の半分になっています。
その後も回復するかどうかはわかりません。
しかし、償還されるのを待てば、100万円が返ってくるので、20万円の損失で済みます。
転換社債の価格は株価と連動すると書きましたが、基本的に額面よりも下がることはないのです。
②株価が上がれば転換社債も上がる
株価の上昇に際限はありません。
連動する転換社債も、2倍3倍と大きく価格を上げる可能性があります。
③利子を受け取ることができる
社債投資の目的は基本的に利子を受け取ることです。
転換社債も例外ではありませんが、0%のものが多いことには注意してください。
新株予約権が付いている代わりに、利率は低く設定されるのです。
(2)転換社債のデメリット
①下がれば損をする
損失が限定されていることは確かですが、必ず損をしないというわけではありません。
価格が額面を下回ることはあまりないので、償還された場合、購入価額と額面の差額が投資家の損失となります。
②コールオプション条項
転換社債の発行には、付帯条項が付けられていることがあります。
そのうちのひとつ、コールオプション条項には要注意です。
コールオプション条項とは、株価が一定の価格を上回った場合、発行企業が任意に額面で償還できるというものです。
行使されると、投資家は値上がり益を受けることができません。
株価が大きく上がったとき、転換社債を持つ投資家は株式へ転換すれば利益を手にすることができます。
ところが、発行企業は普通に増資したほうが多くの資金を調達できるので、上がりすぎないうちに転換して欲しいと思います。そこで転換を促すためにコールオプション条項が使われるのです。
③利率が低い
前述のとおり、新株予約権というメリットがある分、利率は普通の社債よりも低めです。
3、転換社債の発行について
転換社債の発行例をみてみましょう。
<長野銀行 120%コールオプション条項付第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)>
発行日:2014年3月17日
償還日:2021年4月30日
社債価額:100万円
社債総額:30億円
利率:0%
償還額(額面):100円
発行価格:102.5円
転換価格:社債発行時の株価によって決定(1960円)
コールオプション条項:株価の終値が、20営業日連続で転換価格の120%を上回ったとき、発行企業は発表から15日後に額面の金額で繰り上げ償還できます。
社債価額が100万円なので、100万円単位で投資することになります。
最初にこの社債を買う人は、発行価格の102.5円を支払います。
最低投資額で取引するなら102万5000円です。
もし償還日の2021年4月30日までに株価が転換価格を上回らなかったら、投資家は100万円の償還を受け、差し引き2.5万円の損失となります。
転換価格は1960円なので、100万円÷1960円=510株と交換することができます。
仮に株価が2500円になったら、転換後に2500円×510株=127万5000円で売却することができるので、127万5000円-102万5000円=25万円の儲けです。
転換せずに売って利益を確定する方法もあります。
(手数料・税金は考慮していません)
もし株価が1960円の120%である2352円を20営業日連続で超えたら、発行企業である長野銀行はコールオプション条項の行使を発表するでしょう。
投資家は15日以内に株式に転換すれば利益が得られますが、しなければ100万円で償還されてしまいます。
ちなみにこの社債は東京証券取引所に上場しており、大和証券などで売買できます。
4、転換社債の価格について
株にはPBRやPERなど割高・割安を判断する指標があります。
投資を検討する際にはこのように何らかの基準が欲しいところです。
転換社債にもパリティと呼ばれる理論価格が存在します。
(1)パリティとは
パリティは次の計算式で求めます。
(株価/転換価格)×100(円)=理論価格
例えば、先ほどの長野銀行の社債の場合、株価が2100円のときのパリティは次のように計算します。
(2100円÷1960円)≒107.14円
現在価格が107.14円よりも高ければ割高、低ければ割安と言えます。
(2)乖離率とは
パリティと現在価格がどれだけ離れているかを表した指標が、乖離率です。
{( 現在価格-パリティ)/パリティ}×100(%)=乖離率
現在価格が110円の場合、
{(110円-107.14円)/107.14}×100(%)≒2.67%
乖離率が小さければ小さいほど、株価と転換社債価格は連動しやすいと言えます。
大きくマイナスになっていれば割安と判断でき、プラスの乖離率が大きければ、株式とは別の要素が高く評価されていると考えられます。
会社や銘柄によって水準は異なるので、一概には言えません。
投資先として転換社債を探しているときに、乖離率が大きいものを見つけたら、「なぜ株価と連動しないのか」「この社債のどこがどう評価されているのか」考えることが大事です。
5、転換社債マーケット情報〜個別銘柄を見てみましょう
2018年2月7日現在、東京証券取引所と名古屋証券取引所には19社20銘柄の転換社債が上場されています。
取り扱っている証券会社は野村證券、大和証券、SMBC日興証券などの大手が中心です。
ネット証券で買えるところは少ないですが、SBI証券は電話注文でのみ受け付けています。
各証券会社で個別銘柄の価格やパリティ、乖離率などが掲載されていますので、興味がある人は見てみてください。
6、転換社債の税金について
転換社債で利益を得るパターンには、利子と売却益、株式に転換した後の売却益の3つがあります。
転換社債の売却益と株式の売却益の税務上の取り扱いは同じです。
(1)利子にかかる税金
転換社債を含む債券の利子は、20.315%が源泉徴収されます。
例えば額面100万円、年率1%の転換社債を1年保有していると1万円の利子が付きますが、20.315%が差し引かれて支払われます。
もちろん確定申告する必要はありません。
100万円×1%×1年=1万円
1万円×20.315%=2031円(源泉徴収税額)
1万円-2031円=7969円(手取り額)
(2)売却益にかかる税金
売却損益にかかる税金は、上場株式と同様に扱います。
特定口座(源泉徴収あり)を選択すれば、売却益の20.315%が源泉徴収されます。
売却損が出た場合、他に株式や投資信託、債券などで売却益が出ていれば相殺して還付を受けることができるので、確定申告するとよいでしょう。
債券を売買する際には、未経過利子のやりとりが行われます。
売り手が保有していた期間に相当する利子を、買い手が支払うわけです。これは利子ではなく、売却損益を加味して計算します。
例えば、前の利払日から半年後に債券を売った場合、約半年分の利子を買い手から受け取ることになりますが、これは売却益として計算されるわけです。
(3)償還差益が出た場合
額面よりも低い金額で購入し、満期になって額面で償還されると、差額が利益になります。
これは売却損益と同じように処理します。
まとめ
転換社債は、株式に転換(交換)できる社債です。
株価が上がることによって利益を生むことができますが、大きく下がったとしても債券として償還を受ければ、額面は手元に残ります。
値上がり益を狙いながらも損失を限定した運用ができる商品です。