株主総会という名前は知っていても、株主が集まる会議というぐらいで、実際になんのためのものかよくわからない。
株を持っている会社から株主総会の案内が来ても、自分には関係ないと思ってそのままにしている、そんな方も多いのではないでしょうか。
せっかくその会社の株を買って株主になったのに、それではもったいないです。
株式投資をさらに楽しむために知っておきたい、株主総会で、何を話し合っているのか?
今回の記事では株主総会が株式投資にどう役立つのかを知ることができます。最後までお読み頂ければ株式投資の成功確率が高まるはずです。
この記事が株式投資中の方のご参考になれば幸いです。
1、株主総会とは?
株主総会とは、その株式会社の株主が集まって会社にとって重要な事項を決定する場のことです。
株主総会では、会社を運営している経営者が、業績や今後の見通しなどを株主に対して説明し、役員や配当金の額などについて多数決で決めていきます。
ときにはトップの解任や、ほかの会社との合併や会社の解散といった、会社の根幹に関わるような事項を扱うこともあります。
これらの事項は、いくら社長であっても独断で決めることはできず、必ず株主総会で承認を得なければならないことになっています。
つまり、株主総会は株式会社における最高の意思決定機関なのです。
2、そもそも株式会社の仕組みはどうなっている?
会社は製造した商品や仕入れた商品を販売したり、サービスを提供することで利益をあげることを目的とする組織のことです。
商品を製造するには工場や機械、商品やサービスを提供するには店舗などの設備投資が、売れる商品を生み出すには研究開発が必要となり、それには資金(資本)が必要となります。
小規模な事業であれば、創業者や社員などが自分たちで持ち寄って資金を準備することもできますが、大規模な事業を行うには限界もあります。
そこで考え出されたのが「株式会社」という仕組みです。
株式会社では会社の価値を「株式」という形に細かく分け、この株式と引き換えに多くの人からお金を出資してもらい、その資金を事業の元手(資本)として事業を行います。
株式を引き受けた出資者(株主)は会社の所有者となり、その保有する株数に応じて、株式会社が得た利益や解散した場合の財産の分配を受ける権利、経営方針などを決定する権利が与えられます。
株式会社はその会社で働く社員のものでも、役員や社長のものでもなく、株主のものなのです。
役員や社長など経営陣は株主からの会社の経営を任されているのであり、社員は経営陣からの指示のもと利益をあげるために働き、その対価として給料を得ているにすぎません。
日本の会社の大部分を占めている中小企業では、役員がすべての株式を保有し、実質的に『経営者=所有者』となっていることも多いのですが、『経営』と『所有』が分離されているのが株式会社の基本形です。
わたしたちが市場で株を買うことのできるような上場企業・大企業では、当然、経営(取締役、執行役)と所有(株主)の分離を原則としています。
つまり、会社の経営は経営のプロである経営者に任され、所有者である株主は会社の利益の分配を受け、重要な事項の最終決定を行うというのが株式会社の構造です。
3、株主総会の役割は?
株主総会の役割は、株式会社にとって重要な事項について株主が意見を述べたり、投票により採決を行うことで、株式会社としての最終決定を行うことにあります。
株主総会で決定される主な事項は、合併や解散、約款変更など会社の根幹に関わる事項や役員人事に関する事項、株主配当や役員報酬額など株主の利害に関する事項などです。
4、株主総会には参加した方がいい?参加するメリット
株主総会に参加して、会社の重要事項の決定に関与できることは、株主にとって大切な権利です。
ただ株主総会における投票権(議決権)の数は保有する株数に応じて決まっており、保有株数の少ない個人投資家が決定を左右することは難しいといえます。
だからといって、個人投資家にとって株主総会に参加する意味がないというわけではありません。
個人投資家には、個人投資家として株主総会に参加する意義、メリットがあるのです。
(1)経営者から直接企業のビジョンを聞くことができる
株主総会では重要事項についての議決とともに、経営者から会社の業績や今後の見通し(ビジョン)が語られます。
例えばソフトバンクの株主総会に参加すれば孫社長から、トヨタ自動車の株主総会に参加すれば豊田社長から、直接企業のビジョンを聞くことができるのです。
おおよその内容自体は発表される資料などで知ることはできますが、直接経営者と対面し、その口から語られるのとではやはり違いがあります。
経営者から感じられる熱意や姿勢なども、その会社の成長や投資判断の材料となります。
(http://webcast.softbank.jp/ja/shareholder/20170621/index.html)
(2)経営者に直接質問することができる
株主総会では、株主から経営者に質問する機会があります。
すべての株主が質問できるわけではありませんが、経営者が質問に対しての適切な受け答えができるかといった点は、投資判断の材料となります。
(3)投資家同士での情報共有の機会となる
株主総会にはその会社に投資している投資家が集まります。
どんな点に魅力を感じてその企業に投資しているのか情報を共有することは、その後の投資判断の材料となります。
また他の投資家の人たちと横のつながりをつくることができれば、その会社の情報に限らず、有益な投資情報を得られる可能性も拡がります。
(4)お土産がもらえることも
最近は実施している会社は減少傾向にありますが、株主総会の参加者に自社製品など「お土産」を用意している会社もあります。
限定のオリジナルグッズなどにはプレミアがつくものがあったり、何がもらえるかも楽しみのひとつだといえます。
5、株主総会では何をする?内容と流れについて
では、株主総会当日はどのようなことをするのでしょうか。
実際に参加する前に、その内容と流れを確認しておきましょう。
株主総会の内容と流れ | ||
1 | 議長就任 | まず初めに、株主総会の進行を行う議長が選任されます。 通常は会社定款に定められており、社長が務めることが一般的です。 |
2 | 開会宣言 | 議長から株主総会の開会が宣言され、株主総会が始まります。 |
3 | 営業報告 | 議長から、営業報告書・財務諸表の内容について説明が行われます。 |
4 | 監査報告 | 監査役から、会計監査・会計書類(財務諸表)やこの総会における議案・営業報告などについて法令や定款に沿って適切なものであることが報告されます。 |
5 | 議案(決議事項)上程 | 議長から、この総会で議決を行う議案の内容について説明され、審議方法について株主の了承を得ます。 |
6 | 質疑応答 | 報告事項や決議事項に関して株主からの質問・意見・動議(提案)などを受け、それに対し議長や担当役員などから回答を行います。 |
7 | 株主数・議決権数報告 充足宣言 | 議長から株主数・議決権数の報告と、審議に必要な株主数・議決権数(定足数)を満たしていることが報告されます。 |
8 | 採決 | 議案(決議事項)について採決を行います。 |
9 | 新役員紹介 | 議案で役員人事が可決され、新役員が就任した場合には、新役員の紹介や挨拶がおこなわれます。 |
10 | 閉会宣言 | すべての審議・決議・目的事項が終了すれば、議長から総会の閉会が宣言され、株主総会は終了です。 |
上記の表は、一括上程方式(全議案を一緒に上程し、採決を順次行なっていく)を想定したものです。
会社によっては、4監査報告が5営業報告と入れ替わったり、3株式数・議決件数報告・充足宣言が7質疑応答の後にくる場合もあります。
会社によって順序が異なります。
ソフトバンクの株主総会は、ホームページ上でも公開されおり(ソフトバンク第37回定時株主総会)、実際の株主総会の様子を見ることができます。
総会は1〜2時間というのが一般的ですが、ソフトバンクに限らず新しいことに次々と挑戦している会社の株主総会は飽きません。
不祥事や業績悪化、賛否の分かれる議案審議などが行われる場合には、株主からの質疑が長引くこともあり、1984年のソニーの株主総会では13時間半、2012年アコーディア・ゴルフという会社の株主総会では24時間3分という記録があります。
ただあくまで特殊な例なので、安心して株主総会に行きましょう。
6、株主総会で決めることは?
株主総会では会社の重要事項を決めるのですが、その事案の重要度に応じて決議に必要な議決権割合の異なる「普通決議」と「特別決議」という大きく2つの決議方法があります(ごく一部の事案では特殊決議という方法も用いられることもあります)。
(1)株主総会・普通決議で決めることは?
①株主総会の普通決議とは?
株主総会における普通決議とは、原則行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、決議に出席株主の議決権の過半数の賛成が必要となる方法です(会社法309条1項)。
②普通決議で決めることは?
普通決議で決める事項は、役員や会計監査人の選任や解任など人事に関する事項や、役員報酬に関する事項、剰余金分配(配当)に関する事項などです。
普通決議によって決定される主な事項(取締役会設置会社) | (根拠法令) |
株主総会決議による自己株式の取得 (会社法160条1項により特定の者からの取得する場合を除く) | 会社法156条等 |
株主総会に提出された資料等を調査する者の選任 | 会社法316条等 |
株主総会の延期または続行 | 会社法317条等 |
取締役の選任 | 会社法329条、341条等 |
取締役の解任 | 会社法339条、341条等 |
会計参与の選任 | 会社法329条、341条等 |
会計参与の解任 | 会社法339条、341条等 |
監査役の選任 | 会社法329条、341条等 |
会計監査人の選任 | 会社法329条、341条等 |
会計監査人の解任 | 会社法339条等 |
取締役の報酬(定款で定めていない場合) | 会社法361条等 |
監査役の報酬(定款で定めていない場合) | 会社法387条等 |
責任軽減後の取締役等に対する退職慰労金の支給等の取扱い | 会社法425条4項・5項、426条6項等 |
計算書類の定時株主総会での承認 (会計監査人設置会社の特則を定める会社法439条の場合を除く) | 会社法438条等 |
株主総会で剰余金の分配を決議する場合(現物配当を除く) | 会社法454条1項等 |
株主総会で現物配当を決議する場合(株主に金銭分配請求権が与える場合に限る) | 会社法454条4項等 |
法的準備金の減少 | 会社法448条等 |
(2)株主総会・特別決議で決めることは?
①株主総会の特別決議とは?
株主総会における特別決議とは、原則行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、決議に出席株主の議決権の2/3の賛成が必要となる方法です(会社法309条2項)。
②特別決議で決めることは?
特別決議で決める事項は、普通決議よりも慎重に決定する必要のある事項であり、定款変更や会社の合併・分割、事業譲渡、解散など会社の根幹に関わる事項や、資本金減少、株式併合、監査役の解任、新株の有利発行など株主にとって不利益をもたらす恐れのある事項などです。
特別決議によって決定される主な事項(取締役会設置会社) | (根拠法令) |
会社法160条1項により特定の者からの自己株式を取得する場合 | 会社法309条2項2号、160条1項等 |
株式併合 | 会社法309条2項4号、180条等 |
第三者に対する新株の有利発行など | 会社法309条2項5号、199条、201条等 |
第三者に対する新株予約権の有利発行 | 会社法309条2項6号、238条、240条等 |
監査役の解任 | 会社法309条2項7号等 |
株主総会による取締役・監査役・会計監査人等の責任軽減 | 会社法309条2項8号、425条等 |
資本金の額の減少(一定の要件をみたした場合を除く) | 会社法309条2項9号、447条等 |
株主に金銭分配請求権が与えないで行われる現物配当 | 会社法309条2項10号、454条4項等 |
定款変更(一部の定款変更を除く) | 会社法 309条2項11号、466条等 |
事業の全部の譲渡などの承認決議 | 会社法309条2項11号、467条等 |
株主総会決議による会社の解散 | 会社法309条2項11号、471条等 |
合併・会社分割・株式交換・株式移転の承認決議 | 会社法309条2項11号、783条、795条、804条等 |
7、アクティビスト投資家やアクティビストファンドが株主総会でやっていることは?
投資家の中にはその会社の株を大量に保有し、会社に対して自ら様々な要求をすることで、株主としての利益を最大化しようとするアクティビスト投資家もおり、「もの言う株主」とも呼ばれています。
この「もの言う株主」は、配当の増額や自ら推薦する取締役の選任を要求するなど株主提案を行い、経営陣に対して積極的に働きかけを行う場として株主総会を利用しています。
2006年ニッポン放送に関するライブドア事件に関与し、世間でも注目を集めた村上世彰氏(村上ファンド)についてご存知の方は多いのではないでしょうか。
この事件では村上氏がインサイダー取引を行い、有罪判決を受けたことで、もの言う株主に対してあまりいい印象を持たれていない方もいらっしゃるかもしれません。
ただ本来「もの言う株主」とは、正当な方法で株式を取得して、会社の方針を決定するという株主の権利を行使して、株主がより多くの利益を得られるよう会社に対して提案を行う投資家のことです。
ハゲタカファンドといわれるような強引な手法を用いるファンドも存在しますが、会社の業績が向上し、株価の上昇や配当の増加など、その会社の株主全体にとって利益をもたらす可能性が高まるのは事実です。
株主提案を行うことのできる条件は、総株主の議決権の1%以上、または300個以上の議決権を6ヶ月以上前から引き続き保有している株主が、株主総会の日の8週間前までに行うこととなっています(会社法条の公開会社、定款により条件が緩和される場合もあります)。
8、上場企業の株主総会の日程を調べる方法は?
日本の多くの企業では、決算日に株主名簿に記載されている株主に対して株主総会での議決権が与えられる、基準日制度が採用されています。
定時株主総会はこの基準日(決算日)の3ヶ月以内に開催することが定められているため、年度末である3月決算の多い日本では、その3ヶ月後の6月に多くの株主総会が集中します。
いつ株主総会を開催するかは、基準日後3ヶ月以内で会社ごとに決めており、毎年決まった日というわけではありません。
保有する会社の株主総会の日程は、2週間前までに株主に通知されることになっていますが、早く日程を知りたい、あるいは保有していない会社の株主総会の日程を調べたいという場合には、以下のサイトを利用するのが便利です。
本社の集中する東京近郊や平日に開催されることが多いので、地方にお住まいの方や平日は仕事だという方には特に、参加を希望する株主総会の日程をあらかじめ調べて、計画を立てるのに役立つと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
株主総会の活用の仕方は人それぞれですが、株主総会によって投資する会社についてより深く知ることができ、株式投資の楽しみ方が広がっていきます。
さらに多くの情報に触れることは今後の投資判断における重要な材料となり、ひいては株式投資の成功につながっていくといえます。
この記事をきっかけに株主総会に参加し、株式投資をもっと有意義なものとしていただければ幸いです。