投資を始めるにあたって多くの人が持つ悩みが、「一体どの銘柄を買えばよいのか」ということです。
上場企業は3500社以上もあり、知っている会社はいくつかあるものの、どの企業の株を買えば上がるのか、ということはなかなかイメージとして掴みにくいのではないでしょうか。
そこで役に立つのが「スクリーニング」です。
チャートの形や企業業績を基にした割安さの数値などを使い、銘柄を絞り込んでいくものです。
スクリーニングは「面倒で時間がかかりそう」という印象を持つ方も多いかもしれませんが、いくつかのポイントを押さえればそう難しくはありません。
今回の記事では、そういったスクリーニングの視点や莫大な利益をあげている著名投資家ウォーレン・バフェットがどのような投資方法(スクリーニング方法)をとっているのかなどについて見ていきます。コツを押さえて投資の腕を上げていきましょう!
1、株のスクリーニング:おすすめ絞り込みの条件は?
(1)株スクリーニング条件
どういった視点からふるい分けをするか?というのは投資目標やどんな銘柄を購入したいかによって大きく異なってきますが、その絞り込み条件は数多く存在しています。
例えばSBI証券のスクリーニングの検索条件を見てみると、一度目にしただけでも数えきれないほどの条件が存在しています。
勿論全ての条件を使って検索をかける必要はありませんし、どの条件が大事なのか?どれを重視して使えばよいのか?ということを頭に入れておけば、スクリーニングは想像ほど面倒なものではありません。
(2)初心者でもすぐ実践できるスクリーニング条件
①PER:15倍以下
収益から見た割安性がわかります。15倍以下というのは、1÷15×100=6.6%
利回り6.6%が見込めることになります。
②ROE:10%以上
株主資本利益率は、高いほうが資金の効率性が良いことを表します。
10%以上が株主資本の活用効率や収益性が良いという目の数値になります。
③時価総額:300億円以下
成長バリュー株投資を行う場合は、事業規模が300億以下の企業がいいでしょう。ここれからの成長が期待できます。
④純利益伸び率:10%以上
成長性と株価の動きは連動するので10%以上を選びのが良いでしょう。
⑤売上高伸び率:10%以上
純利益の伸び率と同じに成長する株を探す目安になります。
次の項目では、一例としてアメリカの著名投資家ウォーレン・バフェットの銘柄選択(スクリーニング)について見ていくことにしましょう。
2、バフェットに学ぶ!株式投資の原理原則は割安株を見つけて長期投資すること
「投資スタイル」「銘柄選択」などといった要素は、銘柄のスクリーニング方法と大きく関係しています。
例えば投資スタイルに関しては「バリュー(割安株)投資」「グロース(成長株)投資」というものがありますが、前者の「業績に対して割安で放置されている銘柄を購入する」バリュー投資は、世界で最も有名と言っても過言ではないウォーレン・バフェットが好んで使うスタイルです。
バフェットの投資哲学の本質は至ってシンプルです。いくつかその例を挙げてみると、
・株価・市況が大きく下落(暴落)したタイミングで買う
・高い利益成長率を継続しているか
・消費者独占型企業を選ぶ(例:コカ・コーラなど)
などです。
ただ、これらのポイントはアメリカ株であるからこそ当てはまるとも言え、こと日本企業については適していない場面もあります。
バフェットの銘柄選択術やその考えを知っておくことは非常に重要で、長期投資をする方であれば必見とも言えるのですが、「あくまでも米国株のケースなのだな」と考えておくことは必要です。
バフェットは一貫して長期投資を行っており、IBMやアップルといった我々でも知っている有名企業を投資先に選んでいます。
これらの銘柄は皆さんご存知の通り右肩上がりに成長しており、世界でそのバリューを高め続けていますが、バフェットは銘柄を「いかに安いときに購入できるか」を大事にしています。
たとえばリーマンショックなどの世界的な株価暴落のタイミングで必要以上に売り込まれたときに逆張りをして安く買う、まだ市場から注目されていない割安放置銘柄を買う、などがそのタイミングの一例として挙げられます。
特に日本の個人投資家は「高くなったものを更に値上がりを見込んで買う」という行動をし高値掴みになってしまう…というパターンの方が多いため、バフェットの「安いときに買う」という姿勢は頭に刻み込んでおきたい考え方だと言えるでしょう。
3、株のスクリーニング方法:割安株を探しているならここを抑えろ!株のスクリーニングで重視すべき条件
ここからは株のスクリーニングにおいて重視すべき条件をいくつかピックアップしていきます。
「1、株のスクリーニング:絞り込みの条件は」でも触れたように、その条件はかなり多く存在しているのですが、今回は「長期投資で値上がりする銘柄を選ぶ」という視点からスクリーニングで大事にしたいポイントを見ていきましょう。
(1)PER・PBRといった割安性を示す指標
まずはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった、株価の割安性を示す指標です。
これらの数値は低ければ低いほど割安ということになりますが、その数値については同業他社の平均値と比べてみてどうなのか?ということを確認することが大事です。
企業規模・業種によって大きく異なりますので、日本証券取引所から毎月発行されている資料を眺めながら見てみるとよいでしょう。
―規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧(JPX日本取引所)
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/04.html
また、マザーズ市場は新興企業が多くなっており、どちらかというとPERやPBRが非常に高い銘柄が存在します。
これらの銘柄はグロース株と言われ、PERが高くても将来の収益率の拡大を見込まれて需給面で大きく買われているというものも多く、今回のターゲットからはやや外れますが購入する際には注意しておきたいポイントです。
(2)時価総額の大きさ
株価がより上がるには、収益・業績が大きく上伸する必要があります。
その点で大企業は市場のシェアを既に拡大してしまっており、安定性はあるものの、成長の伸びにはやや欠けるといった側面があります。
対して中小企業であれば新しいビジネスモデルを採用している会社も多く、またその会社規模の小ささから経営に小回りがきき、景気トレンドの動向に対応しやすい会社が多く存在します。また「中小」ということは逆に言えばこれから大企業になれるようなポテンシャルを秘めているとも言え、そういった点で時価総額が比較的小さめの企業を選ぶということは大事になってきます。
(3)収益性が高く、かつ安定して利益を計上している
毎日株価のチェックをしている個人投資家は多くいますが、適時開示やIRを逐一チェックするという方は意外にもそこまで多くないと言えます。
そういった情報を見て更なる情報を知っておくことで、他の投資家たちが知らないような視点を身に着けられるかもしれません。
収益性が高い企業を選ぶ、というのは当たり前の条件のように思えますが、それが一過性のものではなく、過去安定して利益を積み上げており、また将来それが伸び続けていくかどうか、というのが更に重要なことになってきます。
(4)ビジネスモデル
(1)、(2)のような点を踏まえたうえで、ビジネスモデルというのも重要になってくるでしょう。
例えば現在の業界トレンドを考えてみると、ネットを通したEコマースが発展してきている中で、百貨店のような販売モデルは逆風が吹いています。
全てのビジネスモデルについて詳細を理解することは難しいのですが、会社概要などを見て「この企業は伸びそうだな」ということを知っておくことは必要となりそうですね。
(5)過去のチャートをチェックする
また、過去のチャートをあわせて見ておくことも大事です。
自分が買いたい銘柄だけでなく、直近大きく値上がりしている銘柄とその理由を調べておくことで後々のスクリーニングに役立つことは間違いありません。狙いたい銘柄としては、一気に株価が急騰しているものではなく、ゆっくりと時間をかけて右肩上がりに株価が上昇してきているものです。
イメージとしてはこういった形のものです。(週足チャート)
過去こういった値動きをした銘柄・その背景を知っておくことはケーススタディとして非常に役に立つのではないでしょうか。
4、株のスクリーニング:おすすめツール5選
株のスクリーニングに使うツールとしては、無料で多機能のものが数多く存在しています。
今回は代表的なもの5つをその例として紹介していきます。
(1)SBI証券スクリーニング(銘柄条件検索)
まず最初に紹介するのが、前述したSBI証券のスクリーニングツールです。
無料で開設できる証券口座を持っていれば使用することができます。
非常に多機能で使いやすく、探したい条件にあった銘柄をスムーズに見つけることが可能です。
(2)トレーダーズウェブ銘柄スクリーニング
こちらは口座開設などをする必要なく、37つのポイントから銘柄を検索することができます。
業績面・チャート面両方からスクリーニングをすることができ、口座開設などの手続きなしに使えるため、まずはこちらから使ってみるのもよいかもしれません。
(3)株map
こちらも無料・口座開設不要ながら、直近の株価動向やチャートなど珍しい切り口から銘柄をスクリーニングできるサイトです。
先に紹介した2サイトは自らで条件を入れていく必要がありますが、こちらのサイトはランキング別に表示されており視覚的に捉えやすくなっています。またスクリーニング以外の機能も非常に優れており、投資をしている方であれば定期的にチェックしたいサイトです。
(4)Yahoo!ファイナンス 株式ランキング
株mapと同じく、こちらもランキング別で様々な条件から銘柄を検索することが可能です。
当日の値上がり率トップ・出来高増加率トップなどといった市況情報から、先ほど挙げたPERやPBRといった指標、営業利益・経常利益などの業績面からもアプローチをすることが可能です。
スクリーニングというよりも、企業ランキングを眺めていると色々と気づきが得られるかもしれません。
自分の買いたいと思う銘柄以外も市場から注目を集めている銘柄を見てみる、ということは非常に大事なことだと言えます。
(5)楽天証券 iSPEED(スマートフォンアプリ)
最後に紹介するiSPEEDはスマートフォンアプリです。楽天証券の口座を開設していれば無料で使用できます。
アプリでありながらパソコンのツール以上の機能を備えているといえ、特に優れているのはテーマ別の銘柄検索機能です。
直近値上がりした人気テーマやジャンル別に銘柄を検索できる機能は他のツールではなかなかないでしょう。
どのツールを使うのがベストか?ということについては人それぞれだと言えるので、まずは気になったものを触ってみると良いと思います。
最初に紹介した二つは自分でデータを打ち込むのでより詳細な検索が可能なもの、後の三つは直観的に銘柄をスクリーニングできるものをピックアップしているので、まずは後半にご紹介したものを使ってみてください。
段々と慣れていったり、また次に見ていくスクリーニングの手順を使ったりするなかで、自身でどんどん絞り込みの手法を見つけられるようになっていけると思います。
5、株のスクリーニングの具体的な手順
「3、割安株を探しているならここを抑えろ!株のスクリーニングで重視すべき条件」では、いくつかの重視すべきポイントを挙げてきました。
ここでもう一度その条件をおさらいしてみましょう。
今回はSBI証券のツールを使いながら、上の条件を踏まえつつ銘柄を探していきます。
(1)PER・PBRといった割安性を示す指標
まず、PER・PBRといった割安性を示す指標です。
先ほども書いたとおり、ここは業種によって平均が異なるのですが、今回はPERは日経平均の平均PER14~16あたりの数値以下、PBRは1以下と入力します。PER・PBRに関しては一概に低ければ低いほど良い、とは言えないのですが、最初のうちは「低ければ割安」と考えておいてよいでしょう。
(2)時価総額の大きさ
次に時価総額の大きさです。
今回は300億円以下で入力していますが、絞り込む際にはここをもう少し狭めていくとよいかもしれません。
時価総額が小さいとちょっとした材料や業績の変貌で大きく株価が変動することが多く、その点で時価総額の小ささというのは一つの大事なポイントです。
(3)収益性が高く、かつ安定して利益を計上している
収益性が高く、かつ安定した利益の計上についてです。
今回のスクリーニングツールではそこまで詳しくここをチェックすることはできないのですが、「今期経常利益変化率」「過去3年平均売上高変化率」といったデータをあわせて表示できるのでそれを見てみるとよいでしょう。
ここまでの条件で大体200社ほどが該当銘柄として表示されますが、業種を見ると建設系がかなり多くなっています。このあたりは業種別で表示されやすい・表示されにくいといったところがあるので、もう少しPER・PBRを高めに設定してもよいかもしれません。まずは幅広く銘柄を眺めてみて、そこから更に絞り込んでいく、ということが大事だと思います。
(4)ビジネスモデル・過去のチャートをチェックする
ビジネスモデル、過去のチャートをチェックに関しては別のステップになります。
全体の流れとしては、
i)スクリーニングツールやニュースなどで気になる銘柄を見つける
ii)その銘柄のHPやIRをチェックし、収益性や企業業績、ビジネスモデルをチェックしてみる
iii)同銘柄、同業他社のチャートや株価を見てみる
といったような感じでしょうか。
はじめのうちは一つ一つに時間をかけるというよりは、先ほど紹介したようなツールを使いながら色々な銘柄を眺めてみたり、スクリーニング条件を変えてみたりということが重要だと言えるでしょう。あくまでもPER、PBRといったものも一つの目安なので、やはり「同業他社や市場平均と比べてどうなのか」といった比較が大事になってきます。
まとめ
今回は株のスクリーニング方法やそれに関するツールをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
銘柄の選択方法というのは人や市場によって違いますが、バフェットのような成功者からその考え方を学ぶことも可能です。
バフェットが言うように「購入タイミング」は株式投資において重要で、スクリーニングは売買に至るまでの一つのステップにしか過ぎません。しかしどの銘柄を選ぶか、ということはとても重要なポイントであることは間違いないでしょう。
今回の記事を参考にしながら、銘柄選択に関する技術を磨いていきましょう!