昼は本業があるため相場に張り付くことができないが、リアルタイムで売買したい、そんな人におすすめしたいのがPTS取引です。
夜間に取引できるだけでなく、手数料や売買価格の面でも有利になる可能性があります。
メリットやデメリット、取り扱っている証券会社などをまとめました。
株式投資の手法の一つとして、こんな取引も行われていることを知っておいて損はないでしょう。
これからもっと広まっていくと、参加者も増えて大きな市場になるかもしれません。ぜひ今のうちに、PTS取引について知っておきましょう。
1、PTS取引(夜間取引)とは?
PTSとは、証券会社が独自に開いた市場のことを言います。
Proprietary Trading Systemの略で、私設取引システムや私設取引市場などと訳されます。
通常の株式取引は、証券取引所で行われる売買を証券会社が取り次ぐ形になりますが、PTS取引では証券会社の顧客同士で取引を成立させます。
証券取引所とは別の市場なので、価格が微妙に違うことがあります。
この価格差を利用した裁定取引を行う人もいるようです。
例えばA株がB証券会社のPTSで100円、東京証券取引所で101円だったときに、PTS取引価格で買い、通常の東京証券取引所価格で売ると1円の差が儲けになります。
サヤ抜きとも言います。
もっとも大きな違いは、取引可能な時間帯です。
東京証券取引所の個別株市場は9時~15時、間に1時間の昼休みをはさみますが、SBIジャパンネクスト証券が運営するPTSのJ-Marketは8時20分から23時59分(16時~16時30分は休憩)と、ほぼ1日市場が開いています。
この中で、証券会社が定める時間に売買可能です。
※図はわかりやすくするため証券会社を単独にしていますが、実際のPTS取引は間に別の証券会社が入ります(SBI証券など)。
2、現在夜間取引できる証券会社はSBI証券だけ
2018年1月末現在、PTSで夜間取引を行える証券会社はSBI証券のみです。
子会社のSBIジャパンネクスト証券が運営するJ-Marketを利用することにより、8時20分~16時、17時~23時59分と、帰宅後もリアルタイムで取引できます。
かつてはマネックス証券やカブドットコム証券などもPTSを取り扱っていましたが、あまり利益があがらず撤退したようです。
淘汰されてSBI証券が残ったとも言えます。
SBI証券のPTS取引では、上場されている株式や投資信託約3800銘柄ほとんどが売買できます。
3、PTS取引のメリット・デメリット
便利なPTSですが、それだけではないメリットや注意したいデメリットがあります。
(1)メリット
①チャンスが増える
夜間も日付を超える一分前まで取引ができ、昼は仕事に忙しくて取引画面を見ているヒマもないという人でもゆっくり売買できます。
通常は取引できない9時前や、昼休みとなる11時30分~12時30分なども取引可能です。
また、決算などの重要な情報は証券取引所が閉まった15時以降に発表されることが多いものですが、翌営業日を待たずして市場に入ることができます。
予想以上に増益した場合などは大きく株価が上がることがあるので、このチャンスにすぐ買いに入ることができるというわけです。
②手数料が安い
SBI証券は、PTSのほうが通常の取引所を利用した取引よりも手数料が低く設定されています。
例えば約定代金が50万円以下の場合、前者は257円、後者は270円と、5%ほど割安です。
- PTSの手数料
出典:SBI証券ホームページ
③有利な価格で買えることがある
取引所との価格差を利用した売買方法については先ほど述べました。
中長期の保有を目的にした場合にも、PTSで取引すると株を安く買えることがあります。
PTS価格と取引所価格を比較して、安いほうで買い、高いほうで売ればよいのです。
PTSを取り扱っている証券会社では、SOR注文が可能です。
異なる市場の中から、自動的にもっとも有利な価格で注文が出される方法を言います。
SBI証券では、取引所とJ-Market 、SBIジャパンネクスト証券が運営するもうひとつのPTSであるX-Market、この3つの市場からもっとも安い価格で買い注文が執行されるわけです。
少しでも取引コストを減らしたいという人にとっても、PTS取引が可能な証券会社で売買することはおすすめです。
(2)デメリット
①すぐに売買できるとは限らない
PTS取引における最大のデメリットは、市場に出ている注文数が少ないことです。
取引を行う人が通常の取引所に比べて少ないので、出した注文がすぐに成立するかどうかはわかりません。
また、予想した価格とずいぶん離れて約定してしまうこともあります。
取引所取引と比べて、価格が大きく動くことがあったり、そうかと思えば待っていても一向に売買できなかったりすることがあるのです。
②注文方法が制限される
PTS取引では通常の取引所取引で可能とされている多彩な注文方法が利用できないことがあります。
SBI証券のPTS取引では指値注文(◯円以下なら買う、◯円以上なら売る)のみ受け付けており、逆指値注文(◯円以下なら売る、◯円以上なら売る)や成行注文(いくらでもいいから買う・売る)などはできません。
株式取引に慣れている人はかえって戸惑うかもしれません。
③対応している証券会社が少ない
前述のとおり、現時点でPTSの夜間取引ができる証券会社はSBI証券しかありません。
口座を持っていない人は開設する必要があります。
楽天証券は日中取引のみ対象です。
しかし、これからサービスを開始する証券会社もあります。
4、PTS取引をこれからスタートする証券会社のご紹介
一時期は各証券会社がこぞって参入していたPTS取引、SBI証券の独壇場となって数年、他社でも復活の兆しが見えています。
(1)楽天証券
楽天証券は2017年12月25日にPTS取引を再開しました。
SOR注文により、SBIジャパンネクスト(J-Market)と独立系のチャイエックス、そして証券取引所の中からもっとも有利な価格で売買することができます。
国内にある2つのPTSを両方とも取り扱うのは、主要証券会社の中では初の試みです。
夜間取引ができるようになるのは2018年度中ということですが、時間外取引としては8時~16時はチャイエックス、8時20分~16時はJ-Marketの注文に対応しています。
証券取引所が昼休みに入る12時前後や、寄付(9時)前、引け(15時)後の取引が可能です。
(2)松井証券
ネット証券の雄、松井証券もPTS取引を再開します。
2018年3月よりJ-Marketへの取り次ぎ開始を予定しています。
詳細な時間は明らかになっていませんが、夜間取引に対応するということです。
おそらく17時~23時59分に取引可能なSBI証券と同等になるのではないでしょうか。
5、PTS取引の情報サイト
PTSについての説明を読んで興味を持ったら、実際に市場の状況を見てみましょう。
(1)モーニングスター
大手投資情報サイトのモーニングスターでは、リアルタイムにPTSにおける株価の一覧を見ることができます。
大きく分けて「PTS銘柄一覧」「PTS株式ランキング」「PTSヒートマップ」の3つがあります。
PTS銘柄一覧は4000近くある銘柄すべての直近の取引価格、出来高、売買代金などを業種別または証券コード順に見ることができます。
PTS株式ランキングでは、証券会社やYahoo!ファイナンスなどの株式ランキングのように、値上がり率・値下がり率・出来高・売買代金それぞれのベスト100が一覧になっています。
面白いのはPTSヒートマップです。
業種(建設業、小売業など)と市場(東証一部、ジャスダックなど)によってマス目を区切られ、騰落率によって色分けされているため、今値動きの激しい業種と市場がどこなのかひと目でわかるようになっています。
出典:モーニングスター
(2)Money Box
Money Boxも各国株式やPTS、決算情報など幅広い投資情報を集めたサイトです。
終値ベースでのランキングや銘柄一覧を公開しています。
東京証券取引所の株価に対する騰落率や会員限定の夜間指数ランキングなど、独自の分析が参考になります。
まとめ
PTSとは証券会社が運営する、証券取引所を介さない取引システムのことです。
通常の市場取引が終わった15時以降、夜間も最長23時59分まで取引が可能であり、昼間働いている人にとってはそれだけでも魅力があります。
他にも手数料の安さや、取引所との価格差を利用した売買ができるメリットもありますが、注文数が少ないため思った価格で取引できない事態に陥りやすいというデメリットもあります。
2018年1月時点で夜間取引に対応しているのはSBI証券のみですが、楽天証券、松井証券も順次、参入を予定しています。