長期投資は儲かる?メリット・デメリットと成功のコツ

投資・資産運用をするときに、大事な視点というのはいくつも存在しますが、その一つが「時間軸」です。

よく耳にするデイトレードのような一日だけで銘柄の売買を終了させる売買手法から、数か月~数年のスパンで投資を行う中長期投資まで、人によってその投資スタイルはさまざまです。

日本の個人投資家で有名なBNFやcisといったトレーダーは短期・中長期などさまざまな売買を得意としていますが、投資の神様と呼ばれる米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は長い時間軸の長期投資で多額の資産を築いています。

そこで今回は投資初心者にも向いているとされる長期投資にスポットを当て、そのメリット・デメリットや成功のコツを見ていきましょう。

目次

1、長期投資とは?

まず、「長期投資」とはいったいどれくらいの期間の投資のことを指すのでしょうか。

投資における時間軸のタイミングをかんたんに分けて列挙してみました。

(1)短期投資

  • スキャルピング(数秒~数分)
  • デイトレード(数分~数時間:一日のうちに売買を終了)

(2)短期~中期投資

  • スイングトレード(数日~数週間)
  • 中期投資(数週間~数か月)

(3)長期投資(数か月~数年)

それぞれ明確な定義があるわけではなく、あくまでもひとつのイメージとして捉えていただければよいと思います。

中長期投資に関しては「中期は短期より長く、長期は中期より長い」といったぼんやりとしたイメージです。

短期での値動きに一喜一憂せず、長い目で見た成長に投資をするのが長期投資の特徴のひとつです。

投資における基本的な考え方のひとつとして、「目標値に達したら利益確定・損切をルール通り行う」というものがあります。

値動きに気持ちを惑わされないことは重要なのですが、株価が大きく下落してしまった場合、長い間戻ってこないというケースも少なくありません。

そういった場合は長期投資と前もって計画していたとしても、損切りを自分のルール通り行うという柔軟さが必要となるでしょう。

逆のケースも同様で、買ったらまもなく大きく値上がりしたから利益確定というのもありですね。

「時間軸」というのは投資におけるひとつの重要なポイントではありますが、絶対視するものでもないと言えます。

投資における大事なルールには「売買タイミング」「資金管理」などがありますが、「時間軸」もそのうちの一つの要素です。

長期投資を始めようと思った方でも、まずはそのメリット・デメリットなどを知ったうえで、時間軸にこだわりすぎず投資を行っていくことが重要です。

2、「長期投資は優れている」と言われる理由とその言葉の注意点

「1、長期投資とは?」でも書いたように、「時間軸」というのは必ずしも気にすべき要素ではありません。

「長期投資は(他の時間軸に比べて)優れている」という意見も多く目にしますが、基準や目的によって異なるので一長一短だと言えます。

長期投資の大きなメリットの一つは、やはり本業の仕事があって忙しくても、投資にかける時間を少なくできるという点でしょう。

時間軸が短くなればなるほど株価の値動きを注視する必要があり、時間的なコストがかかってしまうというのが短期投資のデメリットです。

日本においては圧倒的に専業投資家よりも兼業投資家の方が多いので、相対的に長期投資は優れているという声が多くなるのかもしれません。

とは言え、先にも書いた通り中長期投資も短期投資もそれぞれメリット・デメリットがありますので、あくまでもひとつの側面として知っておく程度でよいでしょう。

3、長期投資をするメリットは?

ここでは長期投資におけるメリットをいくつか挙げていきます。

(1)株価の上下動に一喜一憂する必要がない

先ほども書いたように、本業がある方だと常に株価をチェックするというのは非常に困難です。

証券取引所で売買がなされているのは、例外を除き平日9時~11時30分、12時30分~15時ですから、多くの方はその時間に市況を見るということは困難でしょう。

また、毎日株価やニュースを見ることも時間の面から難しいといった方も多いのではないでしょうか。

そういった場合であっても長期投資であれば「長い目で見て会社が成長し、株価が上がればよい」というスタンスなので、良い意味で放置しながら利益と配当を狙えるということになります。

(2)長い目で見た積み立て投資が可能(ドルコスト平均法)

長期投資における二つ目のメリットは、積み立て投資と複利運用が可能になるという点です。

これは一つの銘柄を長い間保有する長期投資というよりは、こつこつと長い間一定額を投資していくという、有用な投資手法として知られています。

積み立て投資の一つドルコスト平均法は、一定のスパン(例えば一か月ごと、三か月ごと)で一定額の同株式を購入することにより、取得単価を安くしていくことが可能になります。

また、複利運用においては、株式投資もしくは投資信託で得た利益を再度投資に回すことで元本増加し、それによって利回りは同じでも得られる利益額がどんどんと大きくなっていきます。

富むものは富む、とはよくいわれたもので、例えば同じ利回り5%でも投資元本1000万円の場合と投資元本100万円の場合では、得られる利益が50万円と5万円と大きく差があります。

短期の利益に目をくらまさず、淡々と長い目で見て投資をしていくということは、こういったポイントからも大事だと言えるでしょう。

(3)売買手数料が短期投資に比べてかからない

株式投資や投資信託を購入する際には、銘柄の売買を繰り返すとその分手数料がかかります。

例えば以下の画像は、SBI証券の手数料プランの一つですが、意外にもこれは忘れてはいけないコストだと言えます。

デイトレードやスキャルピングは短いスパンで売買を繰り返しますが、細かい勝ちを積み重ねても手数料が必要以上にかかってしまい「手数料負け」となってしまうパターンもあります。

その点長期投資であれば一回買ったら売るのは数年後なので、一回の売買(買ってから売るまで)に関わるコストが非常に安くなります。

投資初心者の方であればあるほど一攫千金を狙う短期投資に注目してしまいがちなのですが、千里の道も一歩からというように、長い時間軸を持つというのは投資行動、手数料からも重要なポイントの一つであると言えるでしょう。

4、長期投資するデメリットは?

先ほどの項では長期投資におけるメリットを挙げましたが、デメリットにはどのようなものが存在するのでしょうか?

(1)マーケットに対するリサーチの意識が薄れる可能性がある

先にメリットの(1)として、「株価の上下動に一喜一憂する必要がない」ということを挙げました。

これは裏を返せばリサーチを行う時間が減り、現在のマーケットに関する情報に敏感になれなくなってしまうということにもなります。

長期投資だから日経新聞やニュースは逐一チェックしなくてもいいという考えになるのではなく、長期投資だからこそ腰を据えて色々な勉強をしてみましょう。

投資信託もそうなのですが、「ほったらかしで儲けられる」というのはあくまでも相場・株価が上がった場合です。

逆に下がってしまえば、よく分からないままに評価損が膨らんでいくというケースも十分考えられます。

そういったことを防ぐためにも、最低限自分の持っている銘柄やその業種に関わるニュースやマクロな報道はチェックしておくとよいでしょう。

(2)利益がすぐに出るケースが少ない

ここからも何度か書いていく長期投資のポイントの一つとして、「値動きが少なく、だんだんと株価が上がっていきそうな企業を選ぶ」というものがあります。

そのため、急騰や株価が短期間で大きく上がっている会社に比べると、利益結果がすぐには出にくいというのが長期投資のデメリットと言えるかもしれません。

(3)株価・基準価額が値下がりした場合、塩漬けになってしまう場合がある

3つ目のデメリットは、「株価や基準価額が値下がりした場合、塩漬けになってしまう場合がある」ということです。

長期投資をしていたら損がどんどん膨らんでしまったという事例があります。

それは、「銘柄選び」「投資タイミング」「損切り・利益確定のルール」などが関係してきます。

長期投資であれば、ある程度の損失は想定の範疇として見過ごすのも一つのやり方ではありますが、想定外に損失が出てしまった場合は潔く損切りをすることも必要になるでしょう。

「銘柄選び」に関して、当たり前ですが短期投資でも長期投資でもそのスパンにおいて値上がりする銘柄を選んで買う必要があるわけです。

こちらは後の項目で詳しく見ていきますので、ぜひ続けてお読みいただければと思います。

5、長期投資を成功させるために知っておきたい資産運用の原理原則

さて、ここまでは長期投資のメリット・デメリットについて簡単に見てきました。

そういったことを踏まえたうえで、長期投資を成功させるために知っておきたい資産運用の原則というものもあわせてチェックしていきましょう。

(1)成長しそうな市場・ビジネスモデルを持つ会社への投資

デメリットの(3)、「株価・基準価額が値下がりした場合、塩漬けになってしまう場合がある」でも書いたように、長期投資であっても買ってから売るまでに価格が上がらなければ投資家としてはうまみがないわけです。

成長が期待されるテーマ株と聞くと、難しく聞こえますが、例えば普段のニュースからもそういったヒントは得られるでしょう。

「メガバンク、数万人単位での人員削減」などというヘッドラインがあれば、「金融業界は人を削ってコスト削減しなければならないような厳しさなのか?」というような予測が立てられます。

逆にEC市場や電気自動車市場など、ここ数年で台頭してきた事業は荒波を乗り越えながらも、更なる事業拡大がありそうです。

こういったように身近なニュースから予測し、そして実際に検証をしてみましょう。

そのバックテストを繰り返しながら投資を行っていくことが大事だと言えます。

(2)売買タイミング

投資において最も重要と言っても過言ではないのが「売買タイミング」になります。

いつ買っていつ売るか?ということです。

人は株価が大きく上がっているのを見ると「もっと上がるのではないか?」と思い買ってしまうというのが行動経済学の見地からも言われていることです。

往々にして高値掴みとなって損失を出してしまうというような場合もあり、売買タイミングは非常に重要であると言えるでしょう。

価格が上がっているのを見て、それにつられて買いが集まるというのが現在の仮想通貨のような状態と言えます。

明らかな過熱相場はどこで買ってどこで売るか、というタイミングが非常にシビアになってしまい、初心者の方にとってはかなり難しい投資機会であることは間違いありません。

長期投資においても、「安いところで買って高いところで売る」というのが大事で、相場が外部要因の悪化などで大きく下がったときに買っておいてそれを寝かしておき、地合いが良くなったところで売却するという手法をとっている投資家の方は多く存在します。

上がってきたから、動いているからと考えるのではなく、「もっと安く買えるタイミングはないか?」というのを探ることも大事です。

(3)利益確定・損切りのルール設定

資産運用において多くの人が重要であると指摘するのが「利益確定・損切りのルールを決め、それ通りに売買するこ」です。

特に損切りに関しては「まあ長期投資だし、どうせそのうち値上がりするだろうしこのままでいいか」という気持ちで保有してしまった結果、更なる価格下落に見舞われ評価損拡大、ということも少なくありません。

個人投資家の多くはここをないがしろにしている方が多いようです。

「損小利大」というのはよく言われる相場格言ですが、取引のルールを自分なりに決めておく、というのはかなり大事なポイントだと言えます。

6、その他長期投資を成功させるためのコツ

「5、長期投資を成功させるために知っておきたい資産運用の原理原則」に加えて、長期投資を成功させるためのコツもいくつか紹介しておきます。

(1)株式投資を楽しめるか、好きになれるか

長期投資を行い、長い間利益を積み重ねていくために必要なことはいくつかありますが、「株式投資を楽しめるか」というのは大きな要素になると思います。

好きこそものの上手なれ」と言いますが、損をしても得をしてもそこから反省や改善を繰り返していくためにも投資をまずは好きになることが重要でしょう。

まずは色々な状況を楽しめるようになり、そこから学習を継続していけば段々と経験値も積み上がり、投資の勘が磨かれていくはずです。

(2)自分の売買ルールにこだわる

投資におけるコツの二つ目は、「自分の売買ルールにこだわる」ということです。

たとえば評価損が5%より膨らんだら損切り、急騰している銘柄は触らないなど、人によってその設定は様々ですが、ルールをきっちりと守ることが大切です。

長期投資における「時間軸」という考え方もそうで、一回買ったらあとは頻繁に売買を行わないなどといったものもルールの一つに含まれるかもしれません。

自分で売買や相場のチェックを行っていくなかで、マイルールをじっくりと組み立てていくと良いでしょう。

(3)過去のチャートで値動きをチェックする

どんな市場においても、全く同じ値動きが起こるといったことはありません。

しかし過去の値動きから「似たような動き」を読み取ることは可能で、それを将来の値動き予想に活かしている投資家は多く存在しています。

各証券会社のホームページやツールを使って「チャート」を見ることで、過去の株価分析を行ってみるとよいでしょう。

長期投資であれば同業種の他の会社のチャートの日足~週足チャートをチェック、マクロな指数である日経平均などのチャートを確認するなどして、この先自分が買う銘柄がどのような値動きになりそうか、ということ予測に役立ててみましょう。

ここまで紹介したのは一例で、「これを知れば絶対に投資は上手くいく!」というものはありません。

他にも相場格言を見るとコツやヒントを知ることが出来ますので、こちらも参考にしてみてください。

7、長期投資に適した金融商品の選び方

長期投資にはどのような金融商品が適しているのでしょうか?

株、FX、投資信託、金、仮想通貨など、様々な投資先がありますが、リスクリターンが比較的安定したものかつ長期投資に向いているものとしては株や投資信託が筆頭候補に挙がるでしょう。

例えばNYダウの週足チャート3年分をチェックしてみると、基本的には右肩上がりに株価が推移しています。

また日経平均株価も単純な右肩上がりとはいかないものの、下値を切り下げながら段々と上値を更新しています。

もちろん景気サイクルは考慮する必要はありますが、基本的には上場企業は業績を拡大する、というのがミッションの一つになっています。

外部要因によって業績が悪化することもあるものの、多くの日本企業は過去に比べて「稼ぐ力」というのが段々と強くなってきており、未だ課題はありますが業績・総時価総額は拡大傾向にあります。

対してFX(為替)はあくまでも相対的な為替の値動きであるため右肩上がりになる、ということは少なく、長期スパンでの投資にはやや向いていないと言えるでしょう。

またFX・先物取引ともに大きなレバレッジをかけるため、小さな値動きで大損というケースもあり、そういった点でも不向きだと考えられます。

長期投資においては、基本的に「じわじわと右肩上がりに価格が上がっていく」商品が適していると言えます。

そのため株式・投資信託を選択することが賢明です。

これら二つの金融商品は特徴が似ていますが、投資信託の場合は、信託報酬という手数料が余計にかかるため、これを考慮しておくことが必要となります。

「プロに運用を殆ど任せられる」一方、ややコストがかかってしまうというのが株式投資と異なるポイントです。

8、株式で長期投資する場合の銘柄の選び方

株式投資で長期投資を行う場合、どんな銘柄を選べばよいのでしょうか?

ここまで見てきたことを踏まえつつ、新たな視点も加え、4点のポイントをピックアップしてみました。

(1)値動きが荒くなく、業績・市場シェアが拡大しそうな企業

まず先にも書いた通り、長期投資に向いているのは「値動きが荒くなく、右肩上がりに業績が拡大しそうな企業」です。

日本においては東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQが主な4市場ですが、さきの二つが大企業多いのに対し、マザーズ・JASDAQ市場は中小・新興企業がメインとなっています。

傾向としては、大企業は値動きがゆったりとしている一方で極端に大きなリターンが見込みにくい一方、中小・新興企業は値動きが激しい一面もあるものの、株価の値上がりが大きくなりやすいというものがあります。

個人投資家の多くは値動きが大きい新興企業を好むのですが、長期投資に適しているのは東証一部・東証二部の時価総額が大きめの企業だと言えます。

比較的時価総額が大きめで東証一部・二部に属している企業の中から、業績・市場シェアを更に拡大させていきそうなところを選ぶとよいでしょう。

(2)グローバル展開をしている企業

少子高齢化が急速に進んでいる日本においては、ビジネスチャンスや市場規模というのも比例して縮小傾向にあります。

対して中国はじめとしたアジアや新興国では人口が増加傾向にあり、日本企業も会社の規模関係なくグローバルなビジネス展開を図っている会社は少なくありません。

もちろん国内のみを対象としたビジネスを行っている会社が良くないというわけではありませんが、長期目線で見た場合にはグローバルな活動を行っている会社を選ぶのがよいでしょう。

(3)利益率が高いこと、また継続的に利益を計上している企業

長期投資をするにあたっては、決算書もしくは決算発表会説明資料などのIRに目を通すことも必要となるでしょう。

決算書を見ると数字ばかりで何が何だか分からないという方も、決算発表会説明資料などであれば分かりやすくその企業の動向を確認できるため、こちらだけでもチェックしておくとよいと思います。

また表面上の数字だけで会社を捉えないように、段々と決算が読めるような勉強を継続していけるとよいでしょう。

そういった資料を眺めると、株価が上昇傾向にある多くの企業は利益率が高く、また継続的に利益を計上しています。

継続的に、というのは過去から現在までの地点でもそうですが、現在から将来にかけてもその業績を拡大させていけそうな見込みがあるということです。

業種によって利益率の基準は異なるため、同業他社の利益率と比較しながら投資したい企業を選ぶことが大事です。

(4)自己資本比率が高めであり、また借入金が少なめの企業

また数字という面に関しては、自己資本率が高めであり、借入金(借金)が少なめであるかどうか、といった点も重要です。

会社経営をしていくうえで借入金というのはマイナスではなく、むしろもっと業績拡大を図るうえで必要な存在なのですが、あまりその数字が大きすぎるのも問題です。

自己資本比率というのは、総資産に対しての自己資本の割合のことですが、40%以上がボーダーラインで高ければ高いほど優良とされ、理想は70%以上と言われています。

日本企業で有名なところだとソフトバンクは借入金多めで自己資本比率が10%近くなっていますが、「企業買収や投資に積極的」という姿勢を貫き続けているためこのような数値になっています。

というような例外もありますが、その点を踏まえて銘柄選びのポイントに加えてください。

まとめ

「長期投資をしたいけど、どの企業を選べばよいか分からない」というのは多くの人が抱える悩みでしょう。

しかしチャンスは意外と近くに転がっており、自分の興味のある分野や身近な会社の株を買ってみるというのも悪くない選択です。

投資の神様ウォーレン・バフェット氏は、アップル、マイクロソフトのような我々でも知っている企業に投資して大きなリターンを出していますし、著名ファンドマネージャーのピーター・リンチ氏も「自分がよく知っている、身近な企業の株を買うべきだ」と強く主張しています。

習うより慣れろとはよくいうもので、まずは買ってみる、というのが長期投資の第一歩です。

今回の記事のポイントを踏まえたうえで実際に株を購入、もしくは買うシミュレーションをしてみてそこから学習・改善を重ねていくとよいでしょう。