みなさんは、投資信託においてどういった原因で損をする可能性があるか知っていますか?投資信託は元本保証の商品ではないため、損が出る場合があります。
しかし、将来の資産形成のために投資信託を購入したのに、失敗はしたくないですよね。今回は、投資信託で損する原因と投資信託の選び方のポイントを解説します。
また、投資信託で損しないポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。投資信託で損する原因を知り、正しく投資して資産運用を成功させましょう。
投資信託における損とは?
まず、投資信託での損がどのようなものか定義しておきましょう。
投資信託における損とは、投資信託の基準価格が下落して、自分の資産の価値が下がってしまうことです。投資対象によっては大きく価値が上下するので、一時的に損が大きくなる場合もあります。
驚くことに、実は投資信託で損することは珍しいわけではありません。2019年1月29日に金融庁が発表した『販売会社における比較可能な共通KPIの傾向分析』(外部リンク)によれば、現状で約50パーセントの人が投資信託で損をしているという結果となりました。
かといって、「投資信託=損する」というわけではありません。さまざまな原因があいまって、結果的に損してしまっているのです。
むしろ、投資信託自体は初心者や長期投資に向いている優良な金融商品です。私たち自身が不利な投資信託を選んでしまったり、失敗しやすい投資をしたりしているため損をしている場合が多いのです。
では。投資信託でなぜ損をしてしまうのか具体的に説明していきましょう。
投資信託で損する7つの原因
投資信託で損する主な原因は、次の7つに分けることができます。
- 銀行や証券会社に勧められた商品を買っているから
- 目論見書が読めていないから
- 一気に資金を投資するから
- 短期売買しているから
- 損切りできていないから
- 分配金が出るものを選んでいるから
- リバランスができていないから
これらの原因を詳しく知っておかないと、投資信託で損してしまうかもしれません。これからそれぞれ説明していくので、しっかりと理解しておきましょう。
原因1:銀行や証券会社に勧められた商品を買っているから
銀行や証券会社の人からすすめられた投資信託は、投資家にとっては不利な場合が多いです。そのため、言われるがまま購入してしまうと損を出す可能性が高くなるでしょう。
「銀行や証券会社の人はプロだから、不利な商品なんてすすめないのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、そこには納得のいく理由があるのです。
銀行や証券会社は、投資信託の手数料で利益を得ています。両者とも営利企業なので、本音は投資家に高い手数料で何度も取引して欲しいのです。
そうすれば、たくさんの手数料をもらって儲けられるからです。
金融機関へ相談に行くと、建前では私たちに最も適している投資信託をすすめてきます。しかし、本当は通常より高い手数料の投資信託をすすめることがあります。
銀行や証券会社の人は商品を売ることを仕事にしています。言葉巧みに不利な投資信託をすすめてくるため注意が必要です。
ここで大切なことは、自分で投資信託の優劣がわかるようになることです。投資信託の相談へ行く前に、投資のことを充分に学んでおきましょう。
学んだうえで、さまざまな投資信託から優良なものを自分で選んでください。決して、勧められたものをそのまま購入しないようにしましょう。
原因2:目論見書が読めていないから
目論見書が読めていないということは、自分の投資のリスクが充分に把握できていないことと同義です。結果的に、投資信託で損をしてしまうでしょう。
目論見書とは、投資家が判断を下すために必要なことが書いてある重要な書類です。そこには、投資信託に関する次の項目が主に書かれています。
- 目的
- 運用方法
- リスク
- 運用実績
- 手続き方法
- 手数料
つまり、目論見書が読めていないということは、どのような投資信託なのか理解できていないことになります。
投資商品を理解していないと、自分がどんなリスクを負っているか分かりません。結果的に、高いリスクの商品を購入していて、大きな損をする場合があります。
目論見書は、投資信託を購入する前に必ず一度は読む仕組みになっています。ただ、難しいことばが並んでいるため、初心者の人の多くは読み流しがちです。
しかし、投資対象や手数料、リスクなど可能な限り細かく理解するまで内容を読み込みましょう。どうしてもわからなければ、購入するべきではありません。
一度、投資信託について勉強し直してから投資を始めましょう。
原因3:一気に資金を投資するから
自分の資金を一度にたくさん投資すると、突然の相場変動で大きな損をする可能性があります。市場にいつ何が起きるかは、厳密には誰にもわかりません。
明日、急なトラブルで相場が暴落する可能性はどうやっても否定できないでしょう。つまり、自分が資金を一気に投資した直後に大損する可能性があるのです。
2008年のリーマンショックの際には、1年も経たずに株価が約50パーセントも下落しました。もし、リーマンショックの直前に資金を一気に投資していたら、そのまま50パーセントほどの損失を抱えていたかもしれません。
私たちは、投資する時にいつでもそれくらいのショックが起きる可能性があると、頭に入れておく必要があります。そういった時に損失を少しでも和らげるために、資金は少しずつ分けて投資するようにしましょう。
原因4:短期売買しているから
短期売買をしていると、手数料の負担が増えるので損をしてしまいます。金融機関の対面取引で購入できる投資信託は、購入時に手数料がかかる場合が多いです。
そのため、投資信託の購入と売却を繰り返していると、その度に手数料がかかります。手数料は、多くなるほど利益を圧迫します。
最大限の利益を得たい場合は、可能な限り手数料を減らす必要があります。
投資信託の中には、購入時の手数料がないものがあります。短期売買するなら、そういった投資信託を選ぶようにしましょう。
また、基本的には投資信託は長期投資に向いている商品です。一度、購入したら大きな理由がない限り、売却せずに保有し続けると良いでしょう。
原因5:損切りできていないから
損切りができていないと、大きな損を抱えて身動きが取れない状況に陥ります。そもそも損切りとは、投資して損失が出てしまった際に、それを受け入れて早い段階で決済することです。
投資初心者はこの損切りがなかなかできません。
自分のお金を投資して、損失が出たとしましょう。多くの初心者は、ここで決済して損失が確定することを嫌います。
同時に、「もう少し待てば、また元の値段に戻るだろう」と根拠のない期待を持つのです。
しかし、そのまま相場が悪い方向へ進んでしまったらどう感じるでしょうか?そのまま損失が膨らんでくると、さらに損切りしづらくなってタイミングを見失ってしまいます。
こうなると損失が大きくなるだけでなく、投資資金を回収して他の投資に回すこともできません。結果的に、その資金を放置してしまうでしょう。
投資信託においては、損切りができないことで損が膨らむことは大いにあります。そのため、いくらまでの損失が出たら諦めて損切りするのか、事前に自分の中でのルールを決めておきましょう。
そして、そのルールを必ず守ってください。感情を捨て、機械的に損切りすることが大切です。
原因6:分配金が出るものを選んでいるから
分配金が出るものを選んでいると、投資効率が落ちて損をしてしまいます。そもそも分配金とは、投資信託の収益から投資家に還元されるお金のことです。
分配金は株の配当に似て魅力的だと思っている人が多いですが、実はそうとも言えないのです。投資信託によって、分配金の仕組みは異なります。
運用成績によって金額が増減するものや、毎月・毎年必ず定期的に受け取れるものなどさまざまです。しかし、共通して、分配金を出すためには私たちが購入した投資信託を一部売却する必要があるのです。
効率良く資産を増やすなら、得た収益をそのまま再投資することが大切です。そうすれば、複利効果を最も大きく出すことができるようになります。
では、「分配金を再投資すれば良いのでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、分配金を得てしまうと、その時点で約20パーセントの税金がかかってしまい、再投資できるのが税引後の金額になってしまうのです。
加えて、購入時に手数料がかかるものであれば、さらにコストが膨らみます。
投資信託でトータルして利益を出すためには、手数料などのコストを上回る成績が必要です。つまり、コストがかかればかかるほど利益が出るまでの期間が長くなり、結果的に損しやすくなってしまうのです。
したがって、基本的に分配金が出る投資信託を選ぶべきではありません。
原因7:リバランスができていないから
リバランスができていないと、自分が負っているリスクの変化に気づかずに損をする可能性があります。リバランスとは、自分のポートフォリオが目的達成のために適した状態になっているか点検し、売却や購入を通して調整することです。
また、ポートフォリオとは、自分が投資する資産の組み合わせや比率のことを指します。ポートフォリオがあることで、自分のリスクや期待リターンが管理できて、目的が達成できるか計算することが可能です。
しかし、ポートフォリオに組み入れている資産の価値は、日々変化します。その影響で、ポートフォリオの資産比率が変わっていくのです。
例えば、100万円を投資信託に次のように分けて投資していたとしましょう。
- 投資信託Aに40万円
- 投資信託Bに40万円
- 投資信託Cに20万円
そして、投資信託Aの価値が2倍になって80万円になったとします。この場合、総資産が140万円になって喜ばしいことですが、当初の資産比率が変わってしまいます。
元々の資産比率は次のとおりでした。
- 投資信託A:40%
- 投資信託B:40%
- 投資信託C:20%
しかし、値動きの影響があり次のように変わりました。
- 投資信託A:57%
- 投資信託B:29%
- 投資信託C:14%
そのため、投資信託Aの比率が高くなり、そのリスクの影響が大きくなりました。そうすると、当初のポートフォリオで考えていたリスクに変化が生じるのです。
これでは、目標に対してリスクを取り過ぎていたり、逆に充分に取っていなかったりします。そのため、今回の場合は投資信託Aを売却して他の投資信託を買いますといった調整をしなければなりません。
このようにリバランスを行わないと、自分に適した投資戦略ができずに失敗しやすくなるのです。投資信託を購入したら、定期的に状況を確認してリバランスを行いましょう。
投資信託で損しない選び方5つのポイント
これまでは、投資信託で損してしまう原因についてお伝えしてきました。続いては、損しないための投資信託の選び方について解説しましょう。
押さえておきたいポイントは次の5つです。それぞれ詳しく解説していきますね。
-
- 目標を決める
- 手数料が安いものを選ぶ
- 純資産の多いものを選ぶ
- 分配金のないものを選ぶ
- 投資先を分散する
それぞれ分かりやすく説明しましょう。
ポイント1:目標を決める
まず、投資目標を決めてから投資信託を選ぶようにしましょう。投資信託はそれぞれ投資対象が異なるため、リスクや期待できるリターンが違います。
目標が明確に定まっていなければ、それを達成するための投資信託を選ぶことができません。具体的な決めるべき目標は、次のようなものです。
- いつまでに
- いくら貯めるか
この2つが分かれば、具体的な投資戦略が立てられるようになります。
例えば、「10年後までに」「1,000万円を貯める」と目標を立てたとしましょう。その場合、単純に貯金するなら、毎年100万円、毎月約83,333円が必要だと計算することができます。
しかし、毎月83,333円の貯金は厳しく、毎月65,000円なら可能だとしましょう。そうすると、利回り5パーセントが期待できる投資信託に投資していけば、10年後に1,000万円の目標が達成できるとわかるのです。
もちろん、5パーセントの利回りがあるということは、リスクを取らなければなりません。しかし、やみくもに投資信託を購入していては、先ほどのような投資戦略は立てられず、目標は達成できないでしょう。
考えなしに投資して損をしないように、事前に目標をしっかりと持つことをおすすめします。
ポイント2:手数料が安いものを選ぶ
できる限り手数料の安い投資信託を選べば、最大限の利益を得ることが可能です。手数料が高いほど、その分の利益が圧縮されてしまいます。
例えば、手数料が1パーセントの投資信託を購入した場合、1パーセントを超えるリターンがあれば、自分に利益を残すことができます。しかし、手数料が3パーセントだった場合、自分の利益を残すためにその時点で3パーセントを超えるリターンが必要です。
このように、手数料の高さは収益に大きく影響します。投資信託にある手数料は、主に次のようなものです。
- 購入手数料
- 信託報酬
これらの手数料がいくらくらいなのか、事前に確認して安いものを選ぶようにしましょう。
ポイント3:純資産の多いものを選ぶ
純資産の多い投資信託を選べば、安定した運用が期待できて損する可能性を低くできます。純資産が少ないと、投資できる対象や量が少なくなってしまい、相場が悪化した際に対応できません。
最悪の場合は償還されてしまい、大きな損を出す可能性さえあります。
純資産は投資信託の体力のようなものです。体力があれば、悪い状況が続いても耐えることができます。できるだけ純資産の多い投資信託を選ぶようにしましょう。
ポイント4:分配金のないものを選ぶ
分配金のない投資信託を選べば、複利効果を最大にできるため損をしにくくなります。長期的に投資信託を運用するなら、得た収益をすべて再投資すれば複利の力が働いて最大限の利益が期待できます。
分配金は収益から支払われるため、わざわざ受け取らずに自動的に再投資してくれた方が効率的です。加えて、先ほどもお伝えしたように分配金として受け取ると税金がかかってしまいます。
したがって、分配金ありの投資信託を選んで再投資しても複利の力の最大化は狙えません。分配金は求めずに、元から設定されていない投資信託を選ぶと良いでしょう。
ポイント5:投資先を分散する
投資先を分散すると、リスクを減らして大きな損をしにくくできます。
例えば、100万円を投資先Aのみに投資したとしましょう。もし、投資先Aの価値が半分になった場合、資産は50万円となり、50パーセントの損失を出してしまいます。
そこで、100万円を投資先AからEの5つに20万円ずつ投資したとしましょう。先ほどと同じように、投資先Aの価値が半分になっても、総資産は90万円となり損失は10パーセントで済みます。
このように、投資先をあらゆる国や企業、金融商品に分散することで、損をしにくい投資が可能です。投資信託を選ぶ際も、投資先を確認して可能な限り広く分散しましょう。
初心者が知っておきたい投資信託で損しない3つの鉄則
最後に、投資信託で損失を出さないために、投資初心者に知っておいてもらいたい鉄則をお伝えしておきましょう。投資する際に守るべき鉄則は次の3点です。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
- 長期投資
- 積立投資
- 分散投資
鉄則1:長期投資
長期の目線で投資信託へ投資すると、利益を出せる可能性が高くなります。経済は一進一退しながら、ゆっくりと成長していくものです。
それは、過去の相場からわかります。次の相場は、アメリカの株式の全体的な指数を示す「S&P500」と日本の株式の指数である「日経平均株価」です。
S&P500
引用元:Google 市場概説
日経平均株価
引用元:Google 市場概説
どちらも上下しながら、長期的にみればゆっくりと右肩上がりであることが分かります。一時的な下落でうろたえずに、長い目で投資してきましょう。
鉄則2:積立投資
積立投資を行うと、同じくリスクが分散されて損しづらいです。積立投資をおこなうと、「ドルコスト平均法」という方法が使えます。
ドルコスト平均法とは、一定期間ごとに一定額の商品を買い続けることです。例えば、毎月1日に5万円という同じ金額で少しずつ継続して購入していく方法が挙げられます。
この方法をおこなうと、価格が高いときは購入量が少なくなり、安いときは購入量が多くなることが特長です。そうすることによって結果的に平均購入単価が下がり、利益を出しやすい状況を容易に作りやすくなるのです。
淡々と投資信託を定期的に購入していくだけなので、初心者でも実行しやすい点が魅力です。
鉄則3:分散投資
分散投資をすると、リスクが分散されて損が出にくい投資ができます。ただし、やみくもに多くの投資信託を購入すれば良いわけではありません。
投資信託を通じて、どこに投資しているかが重要です。
例えば、アメリカの株式に投資する投資信託をいくつも購入しても、それはアメリカに「集中投資」していることになります。そうではなく、アメリカや日本、新興国などに地域を分けつつ、株式や債券といった商品も分散することが大切です。
自分がどこに投資している投資信託を購入しているのかしっかりと判断して、できるだけ幅広く投資するようにしましょう。
まとめ
投信信託は必ず儲かる金融商品ではありません。しかし、適した商品と正しい投資方法を実践すれば、損する可能性を低く抑えることが可能です。
今回お伝えしたことを活かし、投資信託への投資で資産運用を成功させましょう。