投資信託は複利効果で利益を増やす!単利と比較し仕組みと利用方法を解説

お金を効率よく増やしたい方には、複利を適用した資産運用がおすすめです。

100万円を年利5%で運用すると、税金を考慮しないならば20年後に200万円を受け取れますが、複利で運用するならば、同じ条件でも20年後には265万円もの高額を受け取れるのです。

投資信託も複利効果を利用することができる投資の1つです。

この記事では複利の仕組みと投資信託での活用方法、複利を活かす投資信託ファンドの選び方についてまとめました。少しでも投資益を増やしたい方、必見です。

複利とは利息にも利息が発生する仕組みのこと

金利が設定されている金融商品には、金利に従って利息が発生します。たとえば金利3%の定期預金に100万円を預けると、税金を考慮しないなら1年後には103万円を受け取れます。

このように、常に元金に対してのみ利息が発生する計算方法を「単利」と呼びます。1年目に発生する利息は30,000円ですが、2年目も100万円に対してのみ利息が発生するため、受け取れる利息は30,000円です。金利と元金が変わらない限り、常に同額の利息を受け取ることになります。

単利の計算方法
預入元金×金利×預入日数÷365(うるう年の場合は366日)

一方、発生した利息に対しても利息が生じる計算方法を「複利」と呼びます。年に1回のみ利息が発生する商品なら、1年目は単利と同様の利息が発生しますが、2年目以降は利息にも利息がつくため、単利よりも高額の利息を得られます。

複利の計算方法
(預入元金+利息計算時までに発生した利息)×金利×預入日数÷365(うるう年の場合は366日)

金利3%の定期預金に100万円預けて複利で運用するなら、1年目は30,000円の利息、2年目は103万円の3%なので30,900円の利息、3年目は1,060,900円の3%なので31,827円の利息と、預入年数が増えるごとに受け取れる利息も増えます。

複利を活かせる投資商品の例

以下の金融商品は、基本的に複利を活かして運用できます。

複利を活かす金融商品

  • 預金(普通預金、定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金など)
  • 投資信託を配当金再投資型で運用する

預金は「口座にある金額に対して利息が発生する商品」のため、基本的に複利で運用されます。普通預金や定期預金、外貨普通預金、外貨定期預金はいずれも口座からお金を引き出さない限り、途中で発生した利息にも利息が生じます。

一方、投資信託は単利にも複利にもなり得る投資商品です。分配金が設定されている投資信託では、開始するときに「分配金を受け取る」か「分配金を再投資する」のいずれかを選択しますが、「分配金を受け取る」を選ぶと単利運用になり、「分配金を再投資する」を選ぶと複利運用になります。

投資信託ファンドの分配金の有無と運用方法
分配金の有無 分配金の扱い方 運用方法
なし 単利運用
あり 受取型 単利運用
再投資型 複利運用

複利と単利!どちらがおすすめ?

利息にも利息がつく複利運用。元金にしか利息がつかない単利と比べると非常にお得な印象を受けます。

しかし、複利にもデメリットがあり、単利にもメリットがあるため、一概にどちらが良いとは言えません。まずは、複利で運用するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

複利運用するメリット・デメリット

メリット デメリット
・利息に利息が発生する
・投資信託の場合は、追加購入の手間と手数料がかからない
・長期間、資金が拘束される
・投資信託の場合には、分配金が出なくて複利効果そのものが得られない可能性がある

やはり利息にも利息が発生することが、複利運用の最大のメリットです。

また、投資資金で運用する口数を増やしたいときには追加購入をすることになります。取引開始時に「分配金を再投資する」ことを選択している場合なら、自動的に分配金が運用口数に組み込まれるため、手間や手数料をかけずに投資資金を増やせます。

しかし、利益が発生してもそのまま預け入れておかなくては、複利効果は得られません。

利息が発生する度に利息分を抜き出していては、結局元金にしか利息がつかず、単利で運用しているのと同じになってしまいます。複利効果を得るためには、長期間、預けっぱなしにしておける余剰資金を使って運用することが必要です。

また、複利効果を得ようと投資信託を配当金再投資型で運用していたとしても、運用成績が悪く、まったく配当金が出ないファンドを保有しているなら、複利効果は得られなくなってしまいます。

複利効果を期待するなら、かならず過去の配当金実績もチェックしてからファンドを購入するようにしたいものです。

まとめるなら、長期的に運用して利益を得たいと考えている方は、複利運用できる金融商品を選ぶほうがよいといえるでしょう。

単利運用するメリット・デメリット

メリット デメリット
・定期的に利益が入る
・分配金を他の投資で運用できる
・基準価額が急上昇しても、投資信託を分配金再投資型で運用するほどは利益が得られない
・分配金がないときもある

分配金を受け取って投資信託を単利運用する場合は、定期的に利益が入るというメリットがあります。お小遣いとしても嬉しいものですし、別の投資商品を購入することもできるでしょう。

分配金再投資型の場合は同じファンドにしか利益を投入できませんが、分配金受取型ならどのファンドでも資金を投入できます。気になるファンドに分配益を使って投資するのもおすすめです。

しかし、新たなファンドに投資するときは、購入手数料や手間、時間などがかかります。また、ファンドの運用成績が思わしくないときは、分配金を受け取れない可能性もあります。反対に基準価額が上昇してファンド自体の価格が上がっても、かならずしも利益がそのまま分配金に反映されるわけではないため、期待するほど分配金を得られないこともあるでしょう。

まとめるなら、運用する商品をこまめに変える予定の方は、単利で運用するほうがおすすめだといえます。

シミュレーションしてみよう

実際に単利と複利でどの程度利益に差が出るのかシミュレーションしてみましょう。

まずは100万円を一括で預け、年5%の金利で10年間運用した場合です。預けっぱなしにしておくだけでも13万円弱も利益が変わります。

100万円を年5%の金利で10年間運用した場合
単利運用 複利運用
1年目の利益 50,000円 50,000円
2年目の利益 50,000円 52,500円
3年目の利益 50,000円 55,125円
4年目の利益 50,000円 57,881円
5年目の利益 50,000円 60,775円
6年目の利益 50,000円 63,814円
7年目の利益 50,000円 67,004円
8年目の利益 50,000円 70,354円
9年目の利益 50,000円 73,872円
10年目の利益 50,000円 77,566円
10年間の総利益 500,000円 628,891円
最終元利総額 1,500,000円 1,628,891円

次は積立投資をおこなった場合をシミュレーションしてみましょう。積立型の定期預金や積立投信、つみたてNISAなどで定期的に一定額を積み立てる予定の方は、ぜひ参考にしてください。

月々5万円を利回り5%のファンドで積み立て、10年間運用した場合は、以下のようになります。なお、月初めにお金を積み立て、月終わりにその月分の利息が発生するとして計算しました。複利で運用すると単利よりも33万円以上も利益が増えることが分かります。

毎月5万円を積み立てて、年5%の利回りで10年間運用した場合
単利運用 複利運用
1年目の利益 8,125円 13,943円
2年目の利益 38,125円 45,354円
3年目の利益 68,125円 78,370円
4年目の利益 98,125円 113,078円
5年目の利益 128,125円 149,560円
6年目の利益 158,125円 187,908円
7年目の利益 188,125円 228,220円
8年目の利益 218,125円 270,593円
9年目の利益 248,125円 315,134円
10年目の利益 278,125円 361,954円
10年間の総利益 1,431,250円 1,764,114円
最終元利総額 7,431,250円 7,764,114円

参考:金融庁「資産運用シミュレーション」

参考:アセットマネジメントOne「資産運用かんたんシミュレーション」

複利・単利の計算は、72・100の法則で簡単に!

単利と複利の計算方法について説明してきましたが、実際のところ、計算は簡単ではなく、特に複利計算は手間もかかってややこしいものです。

簡単に「何%の金利(利回り)で運用すれば何年後に元手が2倍に増えるか」を知りたいときは、72の法則を利用して計算してみましょう。たとえば金利3%の金融商品ならば、72÷3=24となるため、約24年運用すればお金が2倍になると分かります。

一方、単利で運用するときは100の法則が有効です。たとえば金利3%のとき、100÷3=33.33…となるため、約33年運用すればお金は2倍になると計算できます。

複利効果を最大限にする方法

複利で運用すれば、単利運用よりも短期間でお金を増やすことができます。

しかし、複利ならばいつでも効率よく利益を得られるというわけでもありません。複利で運用するときは、以下のポイントに充分に注意してください。

<複利効果を高めるポイント>

  • 長期的に運用する
  • 運用費用や管理費用が低い投資商品を選ぶ
  • 再投資の頻度が低い投資商品を選ぶ

複利効果を実感できるのは、運用期間が長い場合のみです。

先程2つのケースをシミュレーションしましたが、元金を一括で100万円預けたときの例をもう一度ご覧ください。単利運用と複利運用では10年後には利益に13万円弱もの差が生じていますが、最初の1年ではまったく差が生じていません。

つまり、短期間の運用では、単利と複利で大きな違いは生じないのです。複利効果を高めたいのなら、余剰資金を使って長期的に運用していくことは鉄則です。

とはいえ、管理費用が高額な投資商品では、長期間運用すると管理費用もさらに高額になるため、せっかくの複利効果も薄れてしまいます。投資信託なら信託報酬が管理費に該当しますので、信託報酬が年0.5%以下程度のものを選ぶようにしましょう。

また、投資信託は分配金を再投資することで複利効果を生み出しますが、複利運用のデメリットのところでも触れたように再投資の度に税金が発生する可能性があるため、できるだけ再投資の頻度が少ないものを選んでください。決算のタイミングが年に1、2回程度なら、源泉徴収される頻度も少なく、複利効果を高められるでしょう。

複利で投資信託を運用する際の注意点

特に使途が決まっていない余剰資金があり、長期的な運用を予定している方には、投資信託を分配金再投資型で運用することがおすすめです。複利効果を期待でき、ハイペースで利益を得ることも夢ではありません。

しかし、分配金再投資型で長期運用すればいつでも利益を得られるというわけでもありません。とりわけ以下の3点には注意をしてください。

<投資信託を複利運用する際の注意点>

  • 分配金がないときには投資口数は増えない
  • ファンドを売却するときまで利益を得られない
  • 「分配金なし」のファンドでは再投資ができない

分配金がないときには投資口数は増えない

分配金再投資型で複利効果を得られるのは、分配金が新たな投資資金として組み込まれ、投資口数が増えるからです。

しかし、運用成績が悪く分配金がないときには、投資口数も増えないため複利効果は得られません。投資信託ファンドの中には何年も分配金が出ていないものもありますので、複利効果を期待したい方は過去の分配金実績もかならずチェックしておきましょう。

利回りがマイナスでも分配金が出ることがある

利回りがマイナスでも、ファンドの資産(純資産総額)を取り崩して分配金が出ることもあります。

投資口数が増えるかどうかは「利回りがプラスか」ではなく「分配金があるか」によりますので、複利効果を期待したい方は分配金の履歴に注意をしてください。

なお、利回りがマイナスあるいは低いにもかかわらず分配金が多いファンドは、資産を大幅に取り崩していることになるため、基準価額の低下が危ぶまれます。大幅に価格が下落する前に手放すほうがよいかもしれません。

ファンドを売却するときまで利益を得られない

分配金受取型なら、定期的に利益を得ることができます。しかし、分配金再投資型を選択しているときは、ファンドを売却するまでは利益を一切得られません。

ファンドの価格が上昇してキャピタルゲイン(売却価格と購入価格の差額による利益)を得られるなら良いのですが、価格が下落したタイミングで売却してしまうと損失を被ることになります。

少額であってもこまめに利益を得たい方は、分配金受取型のほうを選びましょう。

「分配金なし」のファンドでは再投資ができない

長期運用に適した投資信託ファンドが見つかったとしても、そのファンドが「分配金なし」の場合は分配金を再投資することができません。

ファンドの目論見書に分配金の設定について記載されていますので、複利効果を狙っている方はかならず確認するようにしましょう。

複利で運用する投資信託ファンドの選び方

では、具体的にどのような投資信託ファンドが複利運用に向いているのか見ていきましょう。当然のことですが、そもそも分配金の設定がないファンドは除外してください。

<複利運用に適した投資信託ファンドの特徴>

  • 決算期が年に2回以下
  • 分配金が少なめ
  • 運用期間が5年以上残っている

決算期が年に2回以下のファンドがおすすめ

決算の度に普通分配金に生じた税金が源泉徴収されるため、できれば決算の回数が少ないファンドを選ぶようにしてください。

決算回数が年に1回か2回程度なら、源泉徴収される回数が少なく、複利効果が薄れにくいでしょう。

分配金が少なめのファンドを選ぶ

分配金には、利益を分配する「普通分配金」と資産を取り崩して分配する「特別分配金」の2つの種類があります。

利回りが低いのに分配金が多いファンドは特別分配金が多いと考えられます。特別分配金は資産を取り崩しているため、場合によってはファンド自体の基準価額が下がり、複利効果も薄れる恐れがあります。利回りに比べて分配金が少なめのファンドを選ぶようにしましょう。

分配金が少なめかどうかを判断する方法

分配金が多めか少なめかを見分ける明確な判断基準はありません。手間はかかりますが、以下の手順で分配金の多少をチェックしてください。

<分配金が少ないかどうかをチェックする手順>

  1. 購入を検討しているファンドと、利回りや基準価額、価格推移が類似するファンドを2、3選ぶ
  2. 各ファンドの1年あたりの分配金を計算して比較する

運用期間が長いファンドを選ぶ

複利効果は長期運用で力を発揮します。ファンドの運用期間がどの程度残っているのかかならず確認しておきましょう。

できれば無期限のものが良いですが、少なくとも5年ほどあると安心です。

なお、ファンドの運用成績が良好なときは、運用期間が延長されることもあります。どうしても購入したいファンドの残りの運用期間が5年以下のときは、ファンドの利回りが大きく、純資産額が着実に増えていることも確認してから購入に進みましょう。

まとめ

資産を効率よく増やしたい方には、複利運用できる金融商品がおすすめです。投資信託は「分配金再投資型」を選択すれば複利運用が可能なため、効率よく増やしたい方はぜひ検討してみてください。

最後にこの記事の要点を整理したので確認しましょう。

  • 複利効果を期待したい方は、投資信託では「分配金再投資型」を選択する
  • 分配金が多めのファンドや決算回数が多すぎるファンド、運用期間の残りが短いファンドは再投資に向かない