3,000万円と言えばかなりの大金ですが、早期リタイアして悠々自適な暮らしができるほどの資産ではありません。3,000万円の資産を築いた人でも、お金の悩みからは解放されないのです。
この記事では、3,000万円では足りない理由や、どうやって資産を増やしていけば良いのか、3,000万円の資産を築いた人と、これから目指す方のために解説していきます。
- 3,000万円の資産でも不十分な理由
- お金を減らさないための基礎知識
- 3,000万円を目指す人・貯められた人のための運用方法
3000万円の資産があるのはどんな人?
自分の資産は人よりも多いのか少ないのか、誰しも気になるところです。3,000万円を貯めた人でも、「ひょっとして少なかったらどうしよう…」と思っているのではないでしょうか。
また、これから3,000万円を目指そうと思っている人も、3,000万円を持っているのは上位何パーセントの人なのか気になることでしょう。そこで、3,000万円の資産を持っているのはどんな人なのか解説していきます。
金融資産3,000万円以上は上位何%?
2017年の野村総合研究所の調査では、世帯別に金融資産の保有額を調査し、マス層(一般的な層)から超富裕層までの5つのカテゴリーに分けて集計されています。各層に何世帯が含まれるか表にまとめたので、まずはご自身が上位何パーセントに含まれるのか見てみてください。
マーケットの分類 | 世帯ごとの純金融資産保有額 | 世帯数 | 割合 | 上位割合 |
---|---|---|---|---|
超富裕層 | 5億円~ | 8.4万世帯 | 0.16% | 0.16% |
富裕層 | 1億円~5億円 | 118.3万世帯 | 2.20% | 2.36% |
準富裕層 | 5000万円~1億円 | 322.2万世帯 | 6.00% | 8.36% |
アッパーマス層 | 3,000万円~5000万円 | 720.3万世帯 | 13.41% | 21.77% |
マス層 | ~3,000万円 | 4203.1万世帯 | 78.24% | 100% |
金融資産が3,000万円の世帯はアッパーマス層に含まれ、その割合は13.41%です。金融資産の保有額でランキングを作った場合、アッパーマス層は上位22.77%に含まれます。トップの約2割に入るので、3,000万円の資産を持っている方は、いわゆる「お金持ち」と言えるでしょう。世の中の約8割の世帯は資産が3,000万円以下なので、一般的な家庭よりも多くの資産を保有していると言えます。
では、3,000万円があれば遊んで自由に暮らしていけるのでしょうか?答えは「No」です。3,000万円の資産があっても、収入が絶たれたら困窮してしまう人が多いのです。次の章で詳しく解説していきます。
3000万円でFIREは可能?
近年話題になっている、早期リタイア。「経済的自立と早期リタイア」という意味の用語「FIRE」として注目を集めています。一生懸命に働いてお金を貯めている人の中には、定年よりも早く退職して悠々自適な生活を送るFIREに憧れを抱いている人も多いでしょう。
残念ながら、基本的に3,000万円の資産でFIREはできません。3,000万円は大きな資産に感じられますが、取り崩し始めたらあっという間に底をついてしまうからです。
取り崩すだけではダメ
収入がなく、3,000万円を取り崩して生活していく場合を考えていきましょう。毎月の支出が30万円、20万円、15万円の3パターンを想定し、いつお金が底をつくのか表に整理しました。
月間支出 | 底をつくまでの期間 |
---|---|
30万円 | 8年4ヶ月 |
20万円 | 12年6ヶ月 |
15万円 | 16年8ヶ月 |
月間の生活費を15万円に抑えられたとしても、17年足らずで3,000万円の資産は底をついてしまいます。年金受給年齢を60歳とすると、20代~40代で早期リタイアした場合、年金の受給が始まる前に資産が空っぽになってしまうのです。
したがって、3,000万円の資産が貯まったからといって、働かないで悠々自適な暮らしができるわけではありません。早期リタイアしたいなら、他の収入源を確保した上で、計画的に実行する必要があります。
仕事と投資でFIREを達成
3,000万円の資産が貯まってすぐにリタイアしたいなら、ストレスの少ない仕事に切り替えたり、投資で収入を得たりと、他の収入源を確保する必要があります。3,000万円の資産を使わずに運用し、仕事や投資の収入で日々の生活費をまかなうのです。
ここでは、3,000万円を投資に回す場合を想定し、1年でどれくらい収益が発生するか考えていきましょう。投資額に対して得られる利益の割合(利回り)を3%、5%、10%と仮定すると、以下の収益が発生します。
利回り | 年間の収益 |
---|---|
3% | 90万円 |
5% | 150万円 |
10% | 300万円 |
年間で150万円~300万円の収益が得られれば、これだけで生活できる方もいるのではないでしょうか。投資の成果は不確実なので、年によって変動する可能性はありますが、毎年この程度の収益が得られれば、3,000万円を取り崩さずに悠々自適なリタイア生活を送れます。
投資の収益だけでは生活費が足りない、という方には、自由な生活をしつつ少しだけ仕事をするのがおすすめです。また、ブログやYouTubeの広告収入などの不労所得があれば、投資であまりリスクを取らなくても、FIREは実現できるでしょう。
- 3,000万円を取り崩すと、10年~20年で底をつく
- 投資、仕事、広告収入で生活し、3,000万円には直接手をつけない
FIREを目指すお金の基礎知識
3,000万円の資産を運用する方法を解説したいところですが、その前にFIREを目指すなら知っておくべきお金の基礎知識について解説します。お金を貯めるのに大切なのは、増やすことより、減らさないことだからです。
投資の方法を学ぶ前に、どうしたらお金を減らさなくて済むのかを知っておきましょう。
- 増やす前に、お金を減らさない
- 節税や優待で支出を少なくする
お金を減らさないために役立つ節税や優待として、次の3つを解説していきます。
- ふるさと納税
- iDeCo、NISA
- 株主優待
ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付ができる制度です。寄付金のうち、2,000円は自己負担となりますが、2,000円を超える部分については、所得税の還付や住民税の控除が受けられます。
ふるさと納税をした場合・しない場合とで、自治体に支払う金額は変わりません。しない場合、所得税や住民税として同額を納税するからです。むしろ、ふるさと納税は2,000円の自己負担があるので、ふるさと納税しない場合よりも支出そのものは多くなります。
したがって、ふるさと納税は節税できる制度ではありません。それでもおすすめである理由は、返礼品にあります。
一部の自治体では、ブランド牛や高級フルーツなどの名産品を、ふるさと納税の返礼品にしているのです。所得税や住民税を支払っても返礼品はもらえませんが、ふるさと納税すればもらえます。どうせ納税するので、ふるさと納税を活用し、生活費の節約につなげましょう。
また、収入額が大きくなるほど、ふるさと納税で受けられる控除や還付の額も大きくなります。つまり、「収入が多い人は、たくさんふるさと納税ができる」と考えてください。しかも、収入額によらず自己負担は2,000円です。高収入な人ほど、多くの返礼品をゲットすることができてお得です。
iDeCoで節税する
iDeCo(イデコ)とは、老後の年金を自分で準備する個人年金の一つです。国民年金や厚生年金などの公的年金とは別に積み立てる年金で、60歳以降に一時金や年金として受け取ることができます。自分で月々の掛け金を決めて運用し、運用する商品も自分で選びます。
iDeCoには、積立時・運用時・受取時の3つのタイミングで税制優遇が受けられます。つまり節税に大いに役立つのです。
積立時
月々の掛け金の全額が、所得控除の対象となります。つまり、所得税・住民税が軽減されます。
運用時
通常、預金や投資信託などの金融商品で資産を運用すると、得られた利益に対して約20%の税金がかかります。しかし、iDeCoで運用すれば税金はかかりません。
受取時
iDeCoで積み立てたお金は、60歳以降に一時金か年金で受け取れます。いずれの場合も一定額まで非課税となり、年金で受け取る場合は「公的年金控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。場合によっては、まったく税金がかからないこともあります。
以上のように、iDeCoは節税メリットが大きい制度です。投資信託で運用を考えている方は、iDeCoの活用をおすすめします。ただし、iDeCoで積み立てたお金は、原則として60歳まで引き出せません。すぐに使う予定のあるお金の運用には向いていません。
株主優待を活用する
企業の中には、株主に対して自社商品や割引券、金券などを贈る「株主優待」を導入している企業があります。食品や日用品がもらえる銘柄を選んで投資をすれば、生活費の節約に役立ちます。
優待銘柄を中心に1億円単位で投資をしている投資家の中には、食事のほとんどが優待でまかなえるため、食費がほぼかからない人もいます。
しかし、優待内容だけで投資する株式を決めてはいけません。株価が大きく値下がりして大損が出たら、優待をもらった得よりも損のほうが大きくなるかもしれないからです。
投資先の企業の業績や将来性を見極めなければならず、株式投資は投資中級者以上に向いた投資方法です。
これから3000万円を目指す資産運用
お金を減らさない節税や優待がわかったら、次はいよいよ運用してお金を増やす方法を学んでいきましょう。ここでは、次の2パターンに分け、おすすめの運用方法を解説していきます。
- これから3,000万円を目指す人
- 既に3,000万円前後の資産があり、もっと増やしたい人
まずは、これから3,000万円を目指す人の運用方法です。以下の表はおすすめの商品で、上から下にいくにつれて難易度が上がっていきます。初めて投資に挑戦する方は、一番上の投資信託から始め、徐々にステップアップしていくのがおすすめです。
商品 | 最低投資額 | リスク・リターン | 特徴 |
---|---|---|---|
投資信託 | 100円 | 低 | 少額で投資できるので初心者におすすめ |
ETF | 約2万円 | 低 | 投資信託と似た商品でより低コスト |
株式 | 約10万円 | 中 | 株主優待が節約に役立つ |
ソーシャルレンディング | 1万円 | 高 | リスクは高いが利回りも高い |
投資信託
投資信託は、投資会社にお金を預け、投資のプロにかわりに運用してもらう商品です。インデックス型とアクティブ型の2種類があり、初心者に向いているのはインデックス型です。
インデックス型の投資信託の値動きは、日経平均株価やTOPIXといった株価指数などに連動します。すなわち、市場の平均的なパフォーマンスと同じような成果になるため、平均を大きく上回る利益は狙いにくいものの、平均に比べて大きな損失が生じるリスクが小さいです。
インターネット証券を使えば、100円から投資することができます。投資できる資金が少ない人や、投資に慣れていない初心者におすすめです。
ETF
ETFは、投資信託と同様、投資のプロに運用してもらう商品です。国内で売買できるETFはすべてインデックス型で、市場平均並みのパフォーマンスが期待できます。
ETFは証券取引所に上場している商品で、投資家は証券会社を通して売買注文を出します。投資信託と異なり、銀行や証券会社などの販売窓口を通さないため、手数料が低い場合が多いです。コストの節約ができるので、投資信託で投資に慣れたら、ETFに挑戦してみてはいかがでしょうか。
株式
企業が発行する株式を購入すると株式になることができ、定期的に配当金をもらったり、株主優待をもらったりすることができます。購入時よりも株価が上昇してから売却すれば、差額を利益として得ることもできます。
株式の大きなメリットは、一部の銘柄では株主優待がもらえることです。上述したとおり、優待を使いこなせば生活費を大いに節約できます。
ただし、銘柄選びは簡単ではありません。今後、株価が上昇すると期待を持てる企業を選ばなければならないからです。業績や将来性を判断する知識が必要なので、初心者向けの方法ではありません。投資に慣れてから、企業分析の方法を学んで株式投資を始めるのが良いでしょう。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングは、お金を借りたい企業とお金を貸したい投資家をオンラインで結びつける、融資型クラウドファンディングです。投資信託やETF、株式よりも高い利回りの案件が多いので、お金を早く増やすことができます。
投資できる金額が数十万円と少ないけれど、早く3,000万円を目指したい、といった方に向いています。
ただし、ソーシャルレンディングは貸し倒れのリスクが高く、投資して良い案件かどうかは慎重に判断しなければなりません。リスクを適切に判断するための知識が必要なので、投資に慣れて知識も身についた上級者向けの方法です。投資信託やETF、株式への投資を経験してから、ソーシャルレンディングを検討しましょう。
3000万円を達成した後の資産運用
ここからは、既に3,000万円の資産をお持ちの方や、上述の方法で3,000万円前後に資産を増やした方のために資産運用の方法を紹介していきます。元手が大きくなれば、資産運用の選択肢は広がります。
引き続き、投資信託やETF、株式、ソーシャルレンディングで運用しても良いのですが、3,000万円の資産があるなら、不動産やヘッジファンドでの運用を検討してはいかがでしょうか?
不動産
不動産投資は、マンションやアパートを購入し、入居者に貸し出して家賃収入を得る方法です。賃貸マンション経営、アパート経営とも言い、投資の一形態でありながら経営の側面を持ちます。
基本的にはローンを組んで不動産を購入するので、自己資金の金額を上回る不動産を手に入れることができます。少ない資金で大きな資産を運用する「レバレッジ効果」を活かした投資です。
頭金は0円でも始められますが、不動産価格の1割~3割程度とする場合が多いです。200万円の頭金を支払ってローンを組み、2,000万円の不動産を手に入れるといったことが可能なのです。
なお、空室が生じると家賃の収入は途絶えてしまいます。不動産投資を成功させるためには、賃貸の需要があるエリアを慎重に選ばなくてはなりません。
不動産投資を始めたい人の中でも特に慎重な人は、まず「リスク」を知りたいのではないでしょうか?メリットだけを強調するような不動産投資会社の担当者もいますが、不動産投資には良い面だけでなく、リスクも存在します。 この記事では、不安を抱えている[…]
ヘッジファンド
ヘッジファンドは投資信託と同様、投資会社に運用を任せられる商品です。投資信託よりも運用の自由度が高いので、年率10%や20%といった高い利回りを出すファンドも珍しくありません。
最低投資額は1,000万円であることが多く、高額なため投資を諦める人が多いですが、3,000万円の資産があるなら活用できます。仮にヘッジファンドで3,000万円を運用し、毎年10パーセントの成果を上げられたら、投資の年収は300万円に上ります。これだけで生活できる人なら、3,000万円でもFIREは達成できるといえます。
まとめ
3,000万円の資産を持っているのは上位約2割と少数ですが、早期リタイアして悠々自適な暮らしが送れるほど十分な資産ではありません。仕事を続けたり、投資で収入を得たりして、生活費を工面していく必要があります。
既に3,000万円の資産を築いた人はもちろんですが、これから3,000万円を目指して頑張りたい人も、紹介した投資方法を活用して資産を増やしていきましょう。