IPOセカンダリー投資とは?成功のための5つのポイント

株式新規公開(IPO)は、初値で大きく株価が上昇する傾向があり人気の投資です。

しかし公募によってIPO株を手に入られる人は限られており、利益を得られるのも一握りの投資家だけという難関です。

また、先日のソフトバンク(9434)IPOのような大型IPOでは、IPO株を手に入れやすいものの、供給過多となって売出価格(公募価格)を割り込みやすく、投資メリットは乏しくなってしまいます。

「IPOセカンダリー投資」は上場後にIPO株に投資する方法であり、運に頼る抽選によらず、利益を上げるチャンスがあります。とはいえIPOセカンダリー投資はハイリスク・ハイリターンであり注意も必要です。

この記事では、その方法と成功のポイント、注意点について解説していきます。

1、IPOセカンダリー投資とは

IPO投資というと、通常は新規上場株(IPO株)に公募で応募し、上場前に手に入れ、上場後に売却することで利益を上げるものです。

これはIPO投資のうちの「IPOプライマリー投資」になります。

それに対し、IPO株が上場した後、市場で売買して利益を上げるのが「IPOセカンダリー投資」です。

そしてIPOセカンダリー投資には、主に以下のような特徴があります。

(1)抽選に当選する必要はない

抽選や割当を受けなければならず、一部の投資家しか参加できないIPOプライマリー投資に対し、IPOセカンダリー投資では、通常の株式と同様に自由に売買できるため、収益チャンスはより多くなります。

またどの程度のスケール(株数)で投資するかも自分の判断で決められるため、資金量や許容リスクに応じて柔軟に投資できるといったメリットもあります。

(2)上場直後は値動きが大きい

一般的に上場直後の値動き(ボラティリティ)が大きく、その値動きの大きさをうまく利用できれば、短期間で大きなリターンが狙えます。

一方で損失も大きくなりやすく、ハイリスク・ハイリターンな方法となります。

2、IPOセカンダリー投資の方法

IPOセカンダリー投資で利益を狙う方法としては、主に「初値買い」「公募割れ買い」「時間差買い」という3つのパターンがあります。それぞれどのような方法なのかみていきましょう。

(1)初値買い

ポイント1:初値買いは短期勝負

上場当日には、上場する企業に出資していたベンチャーキャピタルや、公募でIPO株を手に入れた一般投資家の売り注文と、市場でIPO株を買い付けようとする投資家の買い注文をぶつけ、(売りと買いの)需給が釣り合った価格で初値が形成されます。

初値買いは、その名の通り上場後の初値付近で買い付けを行う方法です。公募価格を上回る初値が付いた銘柄のうち、人気によって株価上昇に勢いがついた銘柄を買い付けます。

そして、その上昇に乗って利益をあげていきます。

一般的にIPOの公募価格は、その企業の価値に対して一定の割引を行った上で決定され、いわば100円の価値がある株を80円で売り出すようなものです。

その割安感と、新規上場株に対する期待も相まって、売り注文を上回る買い注文が入り、初値が公募価格を上回るケースが多くなっています(公募価格で取得し初値で売却するIPOプライマリー投資の勝率は平均約8割)。

投資家からの人気が高い銘柄では、初値が公募価格の倍以上となるケースも珍しくありません。

株価上昇に勢いのついた銘柄は、割高ともいえる水準からもう一段上昇することが多く、そこにチャンスがあります。

ただし勢いで上昇した株価は下げるのも早く、初値で買って当日の終値で売るといった短期トレードが基本となります。

ポイント2:初値が高騰している(公募価格の3倍超)銘柄は避ける

下の表は2018年12月に新規上場したIPO銘柄の一覧です。相場環境はかなり悪い状況にありましたが、それでもIPOプライマリー投資は15勝4負(勝率78.9%)と高い水準でした。

2018年12月 IPO銘柄一覧
コード 銘柄 上場日 公募

価格

初値 騰落率

(公募比)

上場日

終値

騰落率

(初値比)

翌営業日

終値

騰落率

(前日比)

4428 リンク 12/25 3,580 7,620 112.8% 8,060 5.8% 9,140 13.4%
7048 ベルトラ 12/25 384 514 33.9% 498 -3.1% 565 13.5%
4427 EduLab 12/21 3,200 3,270 2.2% 3,730 14.1% 4,430 18.8%
7047 ポート 12/21 1,480 930 -37.2% 1,080 16.1% 1,134 5.0%
7037 テノ.ホールディングス 12/21 1,920 2,400 25.0% 2,150 -10.4% 2,093 -2.7%
6232 自律制御システム研究所 12/21 3,400 2,830 -16.8% 2,623 -7.3% 2,428 -7.4%
4424 アメイジア 12/20 1,320 1,756 33.0% 1,880 7.1% 1,649 -12.3%
7671 AmiaAホールディングス 12/20 1,460 1,552 6.3% 1,342 -13.5% 1,200 -10.6%
4425 Kudan 12/19 3,720 14,000 276.3% 13,890 -0.8% 14,010 0.9%
9434 ソフトバンク 12/19 1,500 1,463 -2.5% 1,282 -12.4% 1,296 1.1%
7046 テクノスデータサイエンス・エンジニアリング 12/18 3,200 6,350 98.4% 6,680 5.2% 6,920 3.6%
1450 田中建設工業 12/18 2,400 2,570 7.1% 2,399 -6.7% 2,740 14.2%
2970 グットライフカンパニー 12/17 1,600 1,951 21.9% 1,727 -11.5% 1,508 -12.7%
7045 ツクイスタッフ 12/17 2,630 4,030 53.2% 4,200 4.2% 3,510 -16.4%
7670 オーウエル 12/13 750 855 14.0% 776 -9.2% 829 6.8%
1449 FUJIジャパン 12/13 740 907 22.6% 832 -8.3% 794 -4.6%
4423 アルテリア・ネットワークス 12/12 1,250 1,190 -4.8% 1,200 0.8% 1,260 5.0%
7043 アルー 12/11 1,370 2,010 46.7% 1,705 -15.2% 1,761 3.3%
7044 ピアラ 12/11 2,550 5,030 97.3% 4,190 -16.7% 4,890 16.7%

*ポート(7047)は上場日寄らず初値は12/25

12月のIPOで初値が公募価格を上回った15銘柄のうち、終値で初値を上回ったのは5銘柄です。初値で購入し当日の終値で購入した場合に、上昇率は平均約7%と大きく上昇しています。一方で残りの10銘柄については初値を下回り、初値比の平均下落率は9.5%と大きく下落しました。初値買いがハイリスク・ハイリターンな投資であることがわかります。

特に初値が公募価格の3倍(上昇率200%)を超えるような銘柄は過熱感が強く、初値を高値として上値が重くなりやすい傾向があります。そのような銘柄では、急落リスクが高いため避けるのが無難といえます。

HEROZ(4382)株価(株式分割調整後)
4/24 4/25 4/26 4/27 5/1 12/25
(初値) (高値) (終値) (終値) (終値) (終値) (終値) (終値)
49,000 49,650 42,000 35,000 28,900 26,600 27,300 13,750

 

その顕著な例としては、2018年4月20日に東証マザーズに上場したHEROZ(4382)のケースがあります。

HEROZのIPOでは、IPOが現在の制度となってから最大の上昇率を989%を記録し、公募価格(4,500円)の約11倍となり、49,000円の初値をつけました。

しかし、初値がほぼ天井となり急落し、初値をつけた3営業日後には、ほぼ半値になってしまいました。

2018年12月25日時点では、初値の4分の1に近い水準で推移していますが、それでも公募価格の約3倍です。初値がいかに高騰したかがわかります。

IPOプライマリー投資であれば大儲けできた銘柄ですが、もし初値買いをしていたとすれば、かなり厳しい結果となっていたでしょう。

ポイント3:短期はジャスダック・マザーズへの上場・公開規模10億円程度の銘柄が狙い目

このようなリスクを軽減するには、投資する銘柄の選択が最も重要であり、それには目論見書などから事業内容や財務状況、収益性、成長性などをもとに企業本来の価値を見極めるほか、流動性や需給のバランスもポイントとなってきます。短期的に利益を狙う場合、①ジャスダック・マザーズへの上場、②公開規模10億円程度という条件を満たす銘柄が、流動性や需給のバランスがよく、値動きも軽く上昇しやすい傾向があって狙い目といえます。

(2)公募割れ買い

ポイント4:中長期は、公募割れで株価が企業本来の価値を下回った銘柄(狙い目は東証2部銘柄

公募割れ買いとは、初値が公募価格を下回った(公募割れした)IPO株を買い、株価の反発によって利益を狙う方法です。

相場環境の悪さや、その企業に対する期待・注目度の低さなどを原因に売りが優勢となり、約2割のIPOでは公募割れが起きています。

公募価格を下回るというのは、100円の株が80円に割り引いて売り出したものの、70円しか値段がつかなかった状態です。

公募価格では買い手の少なかった株も、これだけ安いならと買い注文が入り、株価が反発しやすい傾向があります。それを狙うのが公募割れ買いの手法です。

上場初日寄らずの売り気配となり、公募価格を37%下回る初値をつけたポート(7047)は、初値をつけた後には反発し、当日の終値で初値比16%の上昇、翌営業日も前日比で5%上昇して引けています(2018年12月 IPO銘柄一覧 参照)。

このように売られ過ぎからの反発狙いは、短期的に利益を狙える方法ではありますが、公募割れした理由によっては、反発しないどころがさらに下落するリスクもあり、注意が必要です。

公募割れが起こりやすいといわれているのは、一般的に以下のような銘柄のIPOです。

 

  • ベンチャーキャピタルの保有が多い銘柄(ロックアップ(*)期間を要確認)
  • 過去に上場廃止となった銘柄の再上場
  • 成長期待・注目度の低い地味な業種の銘柄
  • 東証2部・地方市場など(流動性が低い市場)への上場
  • 売り出し株数が多い(公開規模が大きい)

 

*ロックアップ:上場から一定期間または一定の株価になるまで、ベンチャーキャピタルなどの大株主が保有株を売却できないルール(例:90日間売却不可、(公募価格の)1.5倍で売却可など)

なんらかの要因で企業本来の価値を大きく下回るような初値を付けた場合は、その後大きく上昇する可能性が高く、中長期的にみたときに投資チャンスとなります。

上場当日にその判断を迅速に行うためにも、上場前から目論見書などを分析し、事業内容や財務状況、収益性、成長性などから企業本来の価値を見極めておくことが大切と言えます。

中長期的な視点で投資する場合に株価の伸びが期待できるのは、地味な銘柄が多いとされる東証2部銘柄です。

比較的新しい会社が多く、高い成長性や将来性が注目され初値から高騰しやすいジャスダック、マザーズ銘柄に比べ、東証2部銘柄は注目度が低く、公募割れしやすい傾向があります。

一方で東証2部銘柄は、堅実な経営で着実に成長してきた企業が多いのが特徴です。設立から上場までの年数はここ数年の平均で約40年と、東証の中でも最も長くなっています。そのためIPO直後には注目されず公募割れするような銘柄であっても、株価上昇が長く続き、中長期的なパフォーマンスが高い傾向があります。

(3)時間差買い

ポイント5:株価の方向性を確認してから、買うという選択もある

値動きが特に激しい上場直後を避け、ある程度株価が落ち着いたタイミングに株を購入する方法です。

株価が下がったタイミング(リバウンド)、あるいはストップ高をつける前が狙い目となります。

初値をつけてから、株価の方向性をある程度確認してから投資判断を行えるため、リスクを軽減する効果が期待できます。

ただし、上場からしばらくは平常時に比べ値動きの大きな状態は続くため、株価の急変には十分注意しなければなりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

IPO投資の王道は、やはり公募でIPO株を手に入れるIPOプライマリー投資になります。

そのため、まずは目論見書などをもとに投資する銘柄をしっかり見極めた上で、抽選に応募するのが先決です。

ただ、いくらいい銘柄だと思っても、なかなか買えるチャンスは巡ってこないものです。そこでIPOセカンダリー投資という選択肢を持っていれば、抽選に外れてしまっても、もう一度同じ銘柄で利益を狙うことができます。

ただし、IPOセカンダリー投資は、中上級者向けのハイリスク・ハイリターンな手法です。

安易に飛びつくと思わぬ損失を出してしまうこともあるため、投資対象の見極めとリスク管理を徹底して行うことがとても重要です。

それをよく理解した上で、IPO投資をうまく活用していただければ幸いです。