資金決済法改正で加速する日本のステーブルコイン|JPYC・USDC関連銘柄5選

日本のステーブルコイン市場は、制度整備と金融インフラ実装が揃って本格始動したのが最大のポイントです。

この記事ではJPYCの円建てローンチ、メガバンクの共同検証、USDCの国内取扱開始を整理し、投資で狙うべきインフラ銘柄を株式目線で分かりやすく解説します。

目次

2026年が日本の「ステーブルコイン元年」となる背景

2026年が日本のステーブルコイン市場にとって転換点となったのは、単なるブームとしてではなく、社会の仕組みを変える金融インフラとしての一歩を踏み出したからです。

国内での実装、金融機関による信頼性の担保、そしてグローバルな接続性という3つの要素が揃い、本格的な普及期を迎えました。

これら3つの動きは個別に進んでいるようで、実は相互に連携しています。

国内での利用環境、金融機関による信頼性の担保、そして世界との接続性が整ったことで、日本市場は新たなステージに入ったのです。

JPYCローンチによる円とブロックチェーンの融合

JPYCは、日本円と1対1の価値で連動するように設計された、円建てのステーブルコインです。

発行体は裏付けとして100%以上の日本円資産(預貯金や国債)を国内で保有しており、これが価値の安定を支えています。

価格変動の激しい他の暗号資産とは一線を画し、決済や送金の手段として現実的な選択肢となります。

JPYCの登場は、これまで別世界であったブロックチェーン技術と、私たちの生活に身近な日本円を直接結びつけた点で画期的です。

この仕組みによって、企業は低コストで迅速な決済手段を手に入れることが可能になります。

3メガバンク共同検証による社会実装の加速

社会実装とは、特定の技術やサービスが実験段階を終え、広く社会で実用化されることを指します。

三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3メガバンクが共同でステーブルコインの発行・送金インフラを検証している事実は、この流れを決定づけました。

これは、金融システムの根幹を担う企業群が、ステーブルコインを次世代の決済手段として真剣に捉えている証拠です。

個別の銀行がそれぞれサービスを提供するのではなく、業界全体でインフラを整えるアプローチは、日本市場での普及を後押しする大きな力となります。

USDC国内取扱い開始というグローバルな入口の整備

USDCは、米ドルと1対1で価値が連動する、世界で広く利用されているステーブルコインです。

SBI VCトレードが国内で初めて「電子決済手段等取引業者」として登録され、USDCの一般向け取引サービスを開始したことは、日本の利用者が安全に海外のステーブルコインへアクセスできる道を拓きました。

これにより、国内の円建てコインだけでなく、国際的な取引で標準的に使われるドル建てコインも活用しやすくなります。

円建てのJPYCとドル建てのUSDC、この両方が国内で利用しやすくなったことで、日本企業や個人投資家は、用途に応じて最適なステーブルコインを選択できる環境が整ったのです。

信頼性構築の鍵となった日本のステーブルコイン規制

日本のステーブルコイン市場が米国などに比べてゆっくりと立ち上がっているように見えるのは、意図的なアプローチの違いによるものです。

日本では技術やサービスが先行するのではなく、まず利用者保護と金融システムの安定を担保する「制度設計」を優先しました。

この慎重な姿勢が、結果として国内外の企業が安心して参入できる、信頼性の高い市場の土台を築いています。

一見すると遠回りに見える日本の進め方は、投機的な側面を抑え、決済インフラとしての健全な成長を目指す上で、きわめて合理的な戦略と言えます。

実装先行から規制整備へ向かう米国モデル

米国では、新しい技術やサービスをとにかく先に市場へ投入し、問題が起きてから規制を整備する「実装先行」のアプローチが取られてきました。

これは、イノベーションのスピードを何よりも重視する文化が背景にあります。

実際に、世界初のステーブルコインとされるTether(USDT)は2014年に登場しましたが、その準備金の透明性などを巡る規制当局の議論が本格化するには数年を要しました。

このモデルは市場を急速に拡大させる原動力となった一方で、発行体の信頼性や規制の不確実性といった課題を常に抱えてきました。

イノベーションを加速させる力強さを持つ反面、利用者保護の観点ではリスクが伴うアプローチです。

制度整備を優先した日本独自の慎重なアプローチ

日本のアプローチは、米国とは対照的です。

過去の金融行政の経験から、「利用者保護」と「金融システムの安定」を最優先し、新しい金融商品やサービスに対してはまずルールを定める文化が根付いています。

この方針により、ステーブルコインに関わる事業者は、どのようなルールを守ればビジネスができるのかを明確に理解した上で参入できます。

これにより、計画的で安定した事業展開が可能となり、結果的にサービスの質も高まります。

この制度的な信頼性は、海外の企業が日本市場へ参入する際の大きな魅力となるでしょう。

時間をかけてでも堅牢な土台を築く日本のやり方は、ステーブルコインが社会インフラとして定着していく上で、中長期的に大きな強みとなります。

改正資金決済法による「電子決済手段」としての明確化

日本の制度整備を象徴するのが、2023年6月1日に施行された改正資金決済法です。

この法律では、ステーブルコインを新たに「電子決済手段」と法的に定義し、これまでの暗号資産とは異なる、決済機能に特化した新しいカテゴリーとして位置づけました。

この法改正の最も重要な点は、発行者のライセンスを銀行、資金移動業者、信託会社に限定したことです。

さらに、発行者には預金と同レベルの厳格な資産保全義務が課せられました。

これにより、万が一発行事業者が経営破綻するような事態に陥っても、利用者の資産は確実に保護される仕組みが整ったのです。

この法整備によって、日本のステーブルコインは投機対象ではなく、信頼性の高い「お金」として機能するためのスタートラインに立ちました。

ステーブルコインが切り拓く日本市場の主な成長領域

日本のステーブルコイン市場は、個人が日常的に利用するよりも先に、法人利用が成長を牽引する見込みです。

これまで時間とコストを要していた企業間の決済や国境を越えた送金が、ブロックチェーン技術によって効率化されるため、企業の導入意欲は高いと考えられます。

日本の強みは、法制度が明確であることです。

この信頼性が海外の事業者を惹きつけ、市場の成長を後押しするでしょう。

法人利用が先行する企業間決済と国際送金

企業間決済(B2B決済)とは企業同士で行われる取引の支払いを指し、国際送金は国境を越えて資金を移動させることを意味します。

ステーブルコインは、これらの領域で大きな変革をもたらす技術です。

従来の銀行を通じた国際送金では、着金までに数日を要し、数千円の手数料が発生することも珍しくありませんでした。

しかし、ステーブルコインを利用すれば、送金はほぼリアルタイムで完了し、手数料も10分の1以下に抑えられるケースもあります。

このコストと時間の削減効果は、特に貿易や海外拠点との取引が多い企業にとって大きなメリットです。

そのため、消費者向けの決済よりも先に、明確な利点がある法人向けの分野でステーブルコインの採用が進んでいくと考えられます。

制度の明確さがもたらす海外からの投資機会

日本のステーブルコイン市場が持つ大きな強みは、法制度の信頼性です。

米国などが技術の普及を先行させ、後から規制を整備するアプローチを取ったのに対し、日本は改正資金決済法のもとでルールを先に明確化しました。

発行者のライセンスや準備金の管理方法など、事業を行う上でのルールがはっきりしているため、海外の金融機関やフィンテック企業から見れば、事業計画が立てやすく安心して参入できる市場として映ります。

実際に、海外の大手ステーブルコイン発行者が日本法人を設立する動きも出てきています。

この制度的な安定感が、海外からの直接投資や日本企業との提携を促進し、市場全体の成長を加速させる重要な要因となるでしょう。

決済と価値保存の役割分担

ステーブルコインの登場は、ビットコイン(BTC)のような既存の暗号資産の価値をなくすものではありません。

むしろ、それぞれの役割がより明確になります。

ステーブルコインは価格が安定しているため、送金や支払いといった「決済手段」としての役割を担います。

一方で、ビットコインは発行上限が定められていることなどから、金(ゴールド)のように価値を長期的に保存する「価値保存手段」としての特性が評価されています。

日常の買い物で値動きの激しいビットコインを使うのは現実的ではありませんが、将来のための資産として保有する需要は根強く残ります。

このように、ステーブルコインとビットコインは競合するのではなく、決済と資産保全という形で役割分担が進むことで、暗号資産市場全体の健全な発展に貢献していくと考えられます。

日本のステーブルコイン市場を支える注目の関連銘柄5選

日本のステーブルコイン市場で成長の恩恵を受ける可能性が高いのは、コインの発行体そのものではなく、決済やシステム連携といった金融インフラを裏側で支える企業です。

なぜなら、ステーブルコインが社会に普及すればするほど、これらのインフラ企業の技術が必要不可欠になるからです。

投資の観点では、この「インフラを支える企業」にこそ中長期的な妙味があります。

ここでは、それぞれの得意分野で市場の成長を支える注目の5銘柄を紹介します。

これらの企業は、ステーブルコインという新しい技術が社会に根付くための土台作りを担っています。

短期的な値動きに惑わされず、どの企業が未来の金融インフラの中核を担うかを考えることが、投資成功の鍵となります。

TIS(3626) 決済インフラの社会実装を担う本命格

TISは、クレジットカード決済をはじめとする日本の決済システムを長年にわたり支えてきた実績を持つ、金融インフラの専門家です。

ステーブルコインが普及する上で、既存の金融システムとの安全で確実な接続は避けて通れません。

同社が持つ豊富な実績と信頼性こそが、社会実装における最大の強みとなります。

実際に、円建てステーブルコインを発行するJPYC社と「決済支援サービス」の社会実装に向けて協業することを発表しており、ステーブルコインの実用化に直接関わっています。

企業が安心してステーブルコイン決済を導入するためには、TISのような企業のシステム開発力が不可欠なのです。

結論として、TISはステーブルコインという新しい決済手段を、現実世界の金融システムに組み込むための「橋渡し役」を担う企業といえます。

そのため、市場の拡大に比例して事業機会が増加する、本命格のインフラ銘柄です。

アステリア(3853) 企業導入の壁を下げるデータ連携基盤

アステリアは、専門的なプログラミング知識がなくても、異なるシステム間のデータを簡単につなぐことができる「ノーコード」技術の先駆者です。

企業がステーブルコイン決済を導入する際、既存の会計システムや販売管理システムとの連携が大きな課題となります。

同社はこの課題に対し、JPYCの決済データを様々なシステムと自動で連携させるためのソフトウェア「ASTERIA Warp」のアダプターを開発しました。

これにより、企業は開発コストや時間を大幅に削減しながら、ステーEブルコイン決済を導入できます。

導入する企業が増えれば増えるほど、同社のデータ連携技術への需要は高まっていきます。

アステリアは、ステーブルコイン普及の「潤滑油」となる役割を果たします。

企業が導入しやすくなる土壌を整えることで、市場全体の成長を加速させ、その恩恵を受ける銘柄です。

電算システムHD(4072) 既存決済網とステーブルコインの融合

電算システムホールディングスは、コンビニエンスストアでの公共料金支払いやネット通販の代金収納代行サービスを手掛けており、私たちの生活に密着した決済インフラを全国に展開しています。

同社の最大の強みは、デジタルな世界だけでなく、現金がやり取りされる現実の決済網を持っていることです。

同社もJPYCとの業務提携を発表しており、長年培ってきた決済・送金サービスのノウハウとステーブルコイン技術を融合させることで、新しいインフラの社会実装を検討しています。

例えば、銀行口座を持たない人々への送金手段など、既存の金融サービスではカバーしきれなかった領域での活用が期待されます。

電算システムホールディングスへの投資は、ステーブルコインがオンライン決済だけでなく、より幅広い層に使われる未来への期待を反映するものです。

デジタル通貨が日常に溶け込む過程で、重要な役割を担う可能性を秘めています。

シンプレクスHD(4373) 発行と規制対応を支える金融システム

シンプレクス・ホールディングスは、大手金融機関向けに高度なシステム開発を提供してきた実績を持つ、金融テクノロジーのプロフェッショナル集団です。

ステーブルコインを安全に運用するためには、発行や償還の管理だけでなく、本人確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)といった規制への対応が絶対に欠かせません。

同社は、まさにその心臓部となるステーブルコイン発行・管理システム「Simplex Stablecoin」を開発し、金融機関に提供しています。

規制が厳しく、高い信頼性が求められる金融業界において、同社の高度な開発力と規制対応のノウハウは、ステーブルコイン発行を目指す企業にとって強力な武器となります。

ステーブルコイン市場が健全に成長するためには、シンプレクスHDが提供するような信頼性の高いシステムが不可欠です。

市場の「縁の下の力持ち」として、その存在価値は今後ますます高まっていくでしょう。

Speee(4499) Progmatと連携するデジタル資産決済網

Speeeは、不動産やリフォームといったリアルな産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業ですが、ブロックチェーン技術にも早くから着目しています。

特に注目すべきは、三菱UFJ信託銀行などが主導するデジタル資産のプラットフォーム「Progmat(プログマ)」との関わりです。

Progmatは、不動産や有価証券などをデジタル化して取引可能にする「トークン化」市場の中核となる基盤です。

SpeeeはこのProgmatに関連するプロジェクトに関与しており、ステーブルコインを決済手段として利用する、より大きなデジタルアセット市場全体の成長から恩恵を受ける可能性があります。

Speeeへの投資は、ステーブルコインという単一のテーマに留まりません。

不動産をはじめとする様々な資産がデジタル化される未来を見据え、その決済インフラを担う企業として、大きな成長が期待されます。

ステーブルコイン関連株への投資戦略とリスク管理

ステーブルコインは価格が安定している金融商品ですが、関連する企業の株価は安定していません。

むしろ、新しい技術テーマであるため、市場の期待やニュースによって大きく変動する可能性があります。

だからこそ、投資においては冷静な戦略とリスク管理が不可欠です。

感情的な売買を避け、計画的に資産を運用することが成功の鍵となります。

市場の期待が先行する価格変動リスク

価格変動リスクとは、企業の実際の業績以上に、将来への期待感だけで株価が大きく上下する危険性を指します。

ステーブルコインは社会実装が始まったばかりの分野であり、たった一つのプレスリリースで株価が急騰することも珍しくありません。

しかし、実証実験の開始といったニュースが出ても、それが企業の収益に結びつくまでには数年の期間を要するケースがほとんどです。

期待が先行している段階で高値掴みをしてしまうと、その後の調整局面で大きな損失を抱えることになります。

大切なのは、ニュースの派手さに惑わされず、事業の進捗を冷静に見極める姿勢です。

規制変更や採用遅延などの事業リスク

事業リスクとは、企業の努力だけではコントロールが難しい外部要因によって、計画通りに事業が進まなくなる危険性のことです。

特にステーブルコインの分野では、金融庁による規制変更や法改正が、事業モデルの前提を根底から覆す可能性があります。

また、企業への採用が遅れるリスクも考慮しなくてはなりません。

例えば、大手企業が実証実験を行ったとしても、セキュリティや費用対効果の問題から本格導入を見送るという判断も十分に考えられます。

国の規制動向や主要企業の導入事例を継続的に追いかけ、事業環境の変化に注意を払うことが重要です。

資産全体における適切な投資比率

ステーブルコイン関連株は将来的な成長が期待できる一方で、不確実性も高いテーマです。

そのため、自身の資産すべてを投じるような集中投資は避けるべきです。

ひとつの目安として、ステーブルコイン関連への投資額は、ご自身の金融資産全体の5〜10%以内に抑えることを推奨します。

この比率を守ることで、万が一このテーマが期待通りに成長しなかった場合でも、資産全体が受けるダメージを限定的にできます。

新しい技術への投資は、ポートフォリオの成長を加速させるスパイスとして活用するのが基本です。

複数銘柄への分散による集中リスクの回避

集中リスクとは、特定の1銘柄に投資を偏らせることで、その企業の業績悪化や不祥事といった個別の問題が資産全体に大きな打撃を与えてしまう危険性を指します。

このリスクを避けるためには、複数の銘柄に資金を分けて投資することが有効です。

例えば、紹介した5銘柄に投資する場合、1銘柄あたりの投資額を資産全体の2〜3%程度に抑えることで、1社の株価が下落しても他の銘柄でカバーできる可能性が高まります。

決済インフラのTIS、データ連携基盤のアステリアといったように、異なる強みを持つ企業群に分散することで、ステーブルコイン市場の成長を多角的に捉えることが可能となります。

短期的な材料に惑わされない中長期的な視点

ステーブルコイン関連株への投資で最も重要なのは、短期的な値動きに一喜一憂しない中長期的な視点を持つことです。

「大手企業との協業開始」といったニュースは確かに魅力的ですが、それがすぐに業績に反映されるわけではありません。

本当に見るべきなのは、四半期ごとの決算発表で、ステーブルコイン関連事業が売上や利益として数字に表れているかという事実です。

金融インフラの変革は、数年単位の時間をかけて進んでいきます。

投資も同じく、腰を据えて企業の成長を見守る姿勢が求められます。

まとめ

この記事では、日本のステーブルコイン市場が制度整備と金融インフラ実装の両輪で本格始動しつつある点を整理しました。

改正資金決済法によってステーブルコインが**「電子決済手段」**として法的に位置づけられたことは、市場の信頼性と社会実装を支える最重要ポイントです。

  • 制度整備の明確化(電子決済手段としての法的位置づけ)
  • JPYCとUSDCによる国内・国際の決済環境の整備
  • 決済・システム連携・KYC/AMLを担うインフラ企業に追い風
  • B2B決済・国際送金を中心に採用が広がる可能性

投資では、短期の材料に振り回されず、まずは紹介した5銘柄の決算・提携の進捗を四半期ごとに確認することが重要です。そのうえで、資産全体の**5〜10%**を上限に、複数銘柄へ分散させる形で中長期視点の投資を検討してください。