配当利回りが高い銘柄を狙った高配当株5選|割安バリュー日本株と分散投資の秘訣

最も重要なのは、配当利回りの高さだけで銘柄を選ばないことです

この記事では、日銀や米国の相場環境を踏まえて、5銘柄を例に、配当の持続可能性や割安性の見方をわかりやすく解説します。

利回りに惑わされず、分散とNISAを活用して着実に資産を育てていきましょう。

なぜ今、割安な高配当株への注目度が高まっているのか?

これからの資産形成を考える上で、株式市場の大きな変化を見逃すわけにはいきません。

これまで市場を牽引してきた成長株から、安定した収益が期待できる割安な高配当株へと、投資家の注目が移り始めているのです。

この背景には、「2026年を見据えた日本銀行の金融政策の行方」や「米国で過熱するAI関連銘柄からの資金シフト」といった国内外の経済環境の変化があります。

このような状況が、「成長株から割安なバリュー株へ移る相場の主役」交代ともいえる動きを後押ししています。

これからの投資戦略を考える上で、この市場の変化を理解することが非常に重要になります。

2026年を見据えた日本銀行の金融政策の行方

日本銀行が物価の安定などを目指して、世の中に出回るお金の量を調整することを金融政策と呼びます。

2024年3月、日本銀行は長年続けてきたマイナス金利政策を解除しました。

これは事実上の利上げであり、今後も2026年にかけて段階的に金利が引き上げられていくとの見方が市場で強まっています。

金利が上がると、銀行などの金融機関は収益が改善しやすくなるため、株価が上昇する傾向が見られます。

このような金利上昇局面では、安定した収益基盤を持つ高配当株が、投資先として見直されることになります。

米国で過熱するAI関連銘柄からの資金シフト

資金シフトとは、ある投資対象から別の投資対象へと、まとまったお金の流れが移る現象を指します。

近年、米国株式市場ではNVIDIAをはじめとするAI関連銘柄が驚異的な上昇を見せましたが、その一方で株価が高くなりすぎているという警戒感も高まってきました。

実際に、好調な決算を発表した後でも株価が急落する銘柄が増えており、過熱していたAI関連株から利益を確定し、より割安な銘柄へ資金を移す動きが活発化しています。

この米国発の大きな資金の流れが、日本の割安な高配当株市場にも追い風をもたらしています。

成長株から割安なバリュー株へ移る相場の主役

成長株が将来の高い成長性を期待されて買われる株であるのに対し、割安株(バリュー株)は、企業の本来持つ価値に比べて株価が割安に放置されている銘柄のことです。

高配当株は、このバリュー株に含まれることが多くあります。

これまでの市場は、金利が低い環境で将来の成長が期待されるIT企業などの成長株が主役でした。

しかし金利が上昇する局面では、将来の利益の価値が現在価値に割り引かれるため、成長株には不利に働きます。

その結果、すでに安定した利益を生み出し、配当という形で株主に還元する力のあるバリュー株に投資家の関心が集まっているのです。

このように、相場の主役が部分的に交代しつつある今こそ、ポートフォリオに割安な高配当株を組み入れることを検討する絶好の機会と言えます。

配当利回りの高さだけで選ばない、高配当株選び3つの視点

高配当株投資で最も重要なのは、目先の利回りの高さに惑わされず、将来にわたって安定的に配当を受け取れる企業を見極めることです。

そのためには、「配当の継続性」「株価の割安度」「セクター分散」という3つの視点を総合的に評価する必要があります。

これから解説する3つの視点を身につけることで、一時的な人気や株価の変動に惑わされず、長期的な資産形成につながる優良な高配当株を選べるようになります。

配当の継続性を見極める配当性向や業績トレンド

配当性向とは、会社が稼いだ利益のうち、どれくらいの割合を配当金の支払いに充てているかを示す指標です。

例えば、配当性向が80%を超えている場合、利益のほとんどを配当に回していることになり、少し業績が悪化しただけで減配に追い込まれるリスクが高まります。

逆に30~50%程度であれば、まだ配当を増やす余力がある健全な状態と判断できます。

利益が出ていないにもかかわらず、資産を取り崩して配当を出す「タコ足配当」になっていないか、企業の決算情報で必ず確認しましょう。

企業の収益力と株価の割安度を示す指標

配当利回りが高い理由が、単に業績悪化への懸念から株価が下落しているだけの場合があります。

そこで重要になるのが、企業の収益力に対して株価が割安かどうかを判断することです。

代表的な指標としてPBR(株価純資産倍率)があります。

これは会社の純資産に対して株価が何倍かを示すもので、一般的に1倍を下回ると割安と判断されます。

東京証券取引所もPBR1倍割れの企業に改善を要請しており、注目度の高い指標です。

これらの指標を同業他社と比較することで、その企業の株価が客観的に見て割安な水準にあるのかを判断する手助けになります。

金融や製造業など異なる業種へのセクター分散の重要性

セクター分散とは、特定の業種に投資資金を集中させるのではなく、金融、製造、通信、内需関連など、性質の異なる複数の業種に分けて投資することです。

例えば、金利が上昇する局面では銀行などの金融株が有利になる一方、金利上昇がコスト増につながる不動産業などは不利になることがあります。

このように、経済状況の変化によって業種ごとに株価の動きは異なるため、分散しておくことでポートフォリオ全体のリスクを抑えられます。

最低でも3つ以上の異なるセクターに分散させることで、ある業種の株価が下落しても、他の業種がカバーしてくれる効果が期待できます。

2026年に向けた割安高配当の日本株おすすめ5選

これからの株式市場では、これまで相場を牽引してきた成長株だけでなく、安定した収益が見込める銘柄にも目を向けることが重要になります。

大切なのは、表面的な配当利回りの高さだけでなく、事業の安定性や将来性までをしっかりと見極めることです。

ここでは、現在の市場環境を踏まえ、事業内容やリスク要因が異なる5つの銘柄を紹介します。

工場自動化の波に乗るTHK、金融サービスを展開するFPG、事業の多角化で安定感のあるグンゼ、内需を支えるサンゲツとLIXILなど、それぞれに違った魅力があります。

※数値は、12月16日時点。

これらの銘柄はセクター(業種)が異なるため、組み合わせて保有することで、特定の業界の景気変動が資産全体に与える影響を和らげる効果が期待できます。

ご自身の投資戦略に合わせて、ポートフォリオへの組み入れを検討してみてください。

THK(6481)FA需要と「フィジカルAI」への期待

THKは、「FA(ファクトリーオートメーション)」、工場の生産工程を自動化するシステムに欠かせない部品を作るメーカーです。

特に主力製品である「直動システム」は、機械の直線運動をスムーズにするための重要な部品で、世界でもトップクラスのシェアを誇ります。

この直動システムは、半導体を製造する装置や産業用ロボットなど、精密な動きが求められるあらゆる機械に使われています。

最近ではAI技術の進化に伴い、現実世界を動かす「フィジカルAI」という分野が注目されており、THKの技術は中長期的に大きな成長が期待されています。

短期的な業績は世界の景気動向に左右されますが、AIやロボットによる自動化という大きな潮流に乗れる点が、THKの最大の魅力と言えます。

FPG(7148)高利回りながら減配見通しへの注意点

FPGは、「オペレーティング・リース(オペリース)」を主力事業とする金融サービス企業です。

オペリースとは、航空機や船舶などを投資家から集めた資金で購入し、航空会社などに貸し出してリース料を得る金融商品を指します。

投資家への魅力的な分配金が、高い配当利回りにつながっています。

その高い利回りが魅力の一方で、会社側は2026年9月期の業績について、減配となる見通しを発表している点には注意が必要です。

これは、FPGが利益の50%を配当に回すという方針を掲げているため、利益が減少すると配当も連動して減少することを示唆します。

現在の高い利回りは魅力的ですが、発表されている減配のリスクを十分に理解し、今後の業績が市場の期待を上回るかを見極めることが投資の鍵となります。

グンゼ(3002)事業多角化による安定した収益基盤

グンゼは、肌着などのインナーウェアで有名な企業ですが、実は電子部品に使われるプラスチックフィルムや医療用の素材なども手掛ける事業の多角化が進んでいる点が大きな特徴です。

この事業の多角化が、安定した収益基盤を築いています。

例えば、インナーウェアのようなアパレル事業は景気の影響を受けにくい生活必需品です。

一方で、スマートフォンやタブレット端末のタッチパネルに使われる機能性材料は、電子機器市場の成長とともに収益を伸ばしており、第2の柱として育っています。

一つの事業の業績が落ち込んでも、他の事業でカバーできる体制が整っているため、景気変動に強く、長期的に安定した配当を期待しやすい銘柄です。

サンゲツ(8130)長期的なリフォーム需要が支える事業

サンゲツは、住宅や店舗で使われる壁紙、床材、カーテンといった内装材を専門に扱う国内トップクラスの企業です。

私たちの身の回りの空間を彩る、暮らしに欠かせない製品を提供しています。

日本では新築住宅の数が減少傾向にありますが、その一方で既存の住宅を改修する「リフォーム」の需要は根強く存在します。

特に築年数が経過した住宅は全国に数多く存在するため、リフォーム市場は今後も長期的に安定した成長が見込まれており、サンゲツの事業を力強く支えています。

景気の波に左右されにくいリフォームという安定した需要を背景に持っているため、継続的なキャッシュフローと安定配当が期待できる企業です。

LIXIL(5938)国内トップシェアを誇る住宅設備メーカー

LIXILは、トイレやキッチン、お風呂、窓サッシといった住宅に関するあらゆる設備を手がける総合メーカーです。

国内の住宅設備市場において圧倒的なシェアを誇り、私たちの生活に深く根ざしています。

特に最近では、地球環境への配慮から省エネ性能の高い住宅への関心が高まっています。

政府も省エネリフォームに対して最大で200万円の補助金を出す制度を設けるなど、国策として後押ししており、高い技術力を持つLIXILにとっては大きなビジネスチャンスとなっています。

国内の金利上昇による住宅需要の落ち込みといったリスクはありますが、国内トップシェアという強固な事業基盤を背景に、安定した株主還元が期待されます。

高配当株投資で失敗しないための分散投資とリスク管理

高い配当利回りは魅力的ですが、「高配当=安全」と考えるのは危険です。

業績が悪化すれば減配(配当金が減ること)や無配(配当金がなくなること)となり、株価が大きく下落するリスクも伴います。

そこで重要になるのが、資産を守りながら育てるための分散投資です。

この章では、具体的な分散投資の方法として「銘柄・セクター・時間の分散」や、資産全体で考える「コア・サテライト戦略」を解説します。

さらに、配当金が非課税になる「NISAの活用法」や、実践で役立つ「権利落ち日の注意点」まで、失敗しないためのリスク管理術を具体的にお伝えします。

これらの知識を身につけることで、安定的に配当収入を得るための土台を築きましょう。

銘柄・セクター・時間を分ける具体的な分散投資の方法

分散投資とは、投資先を一つに絞らず、複数の対象に分けてリスクを軽減する手法です。

特定の企業の株価が下落しても、他の企業の株価が上昇していれば、資産全体への影響を和らげることができます。

特に高配当株投資では、「株価が大きく下落した結果、配当利回りが高く見えている」というケースも少なくありません。

このような銘柄に集中投資してしまうと、大きな損失につながる恐れがあります。

そこで、「銘柄」「セクター」「時間」という3つの軸で投資を分散させることが極めて重要になります。

これらの分散方法を組み合わせることで、特定の銘柄や経済状況に左右されにくい、安定したポートフォリオの構築を目指せます。

全資産で考えるコア・サテライト戦略の基本

コア・サテライト戦略とは、ご自身の資産全体を「守りの資産(コア)」と「攻めの資産(サテライト)」に分けて運用する考え方です。

この戦略を取り入れることで、ポートフォリオ全体の安定性を高めながら、効率的にリターンを狙えます。

具体的には、資産の大部分(例えば70〜90%)を、全世界株式や日経平均株価などに連動するインデックスファンドといった値動きが安定している「コア資産」で運用します。

そして、残りの部分(例えば10〜30%)を、今回ご紹介したような個別高配当株などの「サテライト資産」として、より高いリターンを目指すのです。

個別高配当株はあくまでサテライト(衛星)の位置づけと考えることで、万が一、特定の銘柄で損失が出ても資産全体への影響を限定的にできます。

これにより、精神的な余裕を持って長期的な視点で投資を続けられるようになります。

NISA口座で配当金の非課税メリットを最大限に活かす方法

高配当株投資を行う上で、NISA(少額投資非課税制度)の活用は欠かせません。

通常、株式の配当金には約20%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかりますが、NISA口座内で得た配当金は全額非課税になります。

例えば、年間で10万円の配当金を受け取った場合、通常の課税口座では約2万円が税金として差し引かれ、手取りは約8万円です。

しかし、NISA口座であれば10万円をまるごと受け取れるため、手取り額に大きな差が生まれます。

この非課税の恩恵は、再投資に回すことで複利効果をさらに高めることにもつながります。

ただし、NISAはあくまで税金が優遇される制度であり、投資のリスクそのものがなくなるわけではありません。

NISA口座で投資する場合でも、これまでに解説した分散投資の考え方を徹底し、リスク管理を怠らないようにしましょう。

権利落ち日など実践で役立つ注意点

高配当株投資を実践する上で、いくつか知っておくべき専門的な日程があります。

特に重要なのが「権利落ち日」です。

これは配当金を受け取る権利がなくなる日のことで、この日以降に株を買ってもその期の配当は受け取れません。

一般的に、権利落ち日には株価が前日の終値から配当金の額だけ下落する傾向があります。

これは「配当落ち」と呼ばれ、配当を受け取る権利がなくなった分だけ、株の価値が理論上は下がるために起こる現象です。

そのため、配当権利を得る直前に株を購入し、権利落ち日にすぐ売却しても、配当金と株価の値下がり分で相殺されてしまい、利益はほとんど出ません。

高配当株投資は、短期的な値動きで利益を狙うのではなく、長期的に配当金を受け取り続けることを目的とするものです。

権利落ち日前後の株価の動きに一喜一憂せず、企業の長期的な成長を信じて保有し続ける姿勢が成功の鍵となります。

まとめ

本記事では、日銀の金融政策や米国株式市場の動きといったマクロ環境を踏まえながら、5銘柄を例に「配当利回りの見方」と「分散投資の実践方法」について解説しました。

一番大切なポイントは、配当利回りの高さだけで銘柄を選ばないことです。

  • 配当性向や業績トレンドといった「配当の持続可能性」
  • 財務指標を使った「業績と財務の健全性評価」
  • 銘柄・セクター・時間に分けて行う「分散投資」
  • NISA口座の非課税メリットと権利日などの「実務的な注意点」

といった視点を組み合わせることで、高配当株投資のリスクを抑えつつ、長期的な資産形成につなげる考え方を整理してきました。

気になる銘柄があれば、必ず最新の決算資料や配当予想、株価チャートを確認し、ご自身のリスク許容度や投資期間に合っているかをチェックしたうえで、少しずつポートフォリオに組み入れてみてください。

高配当株は「一発逆転の宝くじ」ではなく、「時間をかけてじっくり育てる収入源」です。利回りの数字に振り回されず、分散とNISAの非課税メリットを味方につけながら、ご自身のペースで着実に資産を増やしていきましょう。