投資信託への興味はあるものの、「投資信託なんてどうせ儲からない」と思っている方は多いと思います。たしかに、投資信託はハイリターンな株式投資や仮想通貨と違い、ミドルリターンの投資です。
しかし、投資信託の儲けとは何かを理解して投資すれば、比較的利益を得やすい投資法でもあります。つまり、何をしてもまったく利益が出ないわけではなく、適切な方法で投資すれば儲けることは可能なのです。
当記事では、投資信託の儲からない人の特徴を整理しながら、賢く儲けるポイントについて解説していきます。
- 投資信託をする前から「どうせ儲からない」と思っている方
- 投資信託で含み損を出し、「やっぱり儲からなかった」とがっかりしている方
は、参考になさってみてください。
本当に投資信託は「儲からない」投資方法なのか?
「投資信託は儲かるのか、それとも儲からないのか?」に対する答えは、「しっかりと仕組みを理解して投資をすれば、儲けることは可能」です。投資信託の専門サイトや証券会社のホームページでリターンランキングを見れば、大きな利益を出しているファンドが多数あることがわかります。
ここでは、投資信託のリターンランキングをご紹介しながら、投資信託のリスクとリターンの関係についてお話していきましょう。
投資信託のリターンランキングを見てみよう
「投資信託で儲けなんて出るの?」と思っている方もいるでしょうが、しっかりとリターンを出しているファンドは多数あります。投資信託の格付け評価や各種情報提供を行う「モーニングスター」のファンドリターンランキングを見てみましょう。
全ファンドの10年間 年率リターンランキング
全ファンドの5年間 年率リターンランキング
画像引用元:モーニングスターホームページ
※純資産10億円以上。DC(確定拠出年金)、SMA(ラップ口座)を除くファンドランキング
※税金やファンドのコストは考慮せず
上記の図は、過去10年間と過去5年間で年率リターンが高いファンドを並べたランキングです。いずれのファンドも、年率約15パーセント以上のリターンを出していることがわかりますね。
年率15パーセントとは100万円の投資額に対し、10年の間に毎年平均して15万円のリターンがあるということです。
ただ、投資元本が1年で数倍に膨れ上がるほどではないので、ものすごく大きなリターンとは言えません。そのため、株式投資や仮想通貨のようなハイリターンを期待していると、「それだけしか儲けがないの?」と思う方もいるでしょう。
この「儲けの度合い」を多いと感じるか少ないと感じるかは、人それぞれの投資経験や価値観などで大きく変わってきます。そのため、同じファンドへ同じように投資をしても、「儲けが出ている」と実感する方もいれば、「あまり儲けがない」と思う方もいるでしょう。
しかし、儲けの度合いはどうであれ、上記のように儲け=リターンを出しているファンドは確実にあります。他の人から「投資信託なんて儲からないよ」と言われても、それはその人の主観にしかすぎません。
大切なのはご自身が儲けを感じるかどうかです。投資はすべて自己責任です。周囲の儲かる・儲からないという意見には振り回されないように注意してください。
そもそも投資信託はミドルリスク・ミドルリターン
先述したとおり、投資信託は短期間で資産を数倍にできるほど高いリターンがある投資ではありません。そもそも投資信託はミドルリスク・ミドルリターン型の投資です。
一つのファンドに複数の資産を内包することで簡単に分散投資できるため、リスクを抑えた運用ができることが特徴です。
このように、投資信託という商品自体がリスクを抑える仕組みになっているのです。リスクを抑えた運用なので、当然リターンもそれなりに抑えた運用=ミドルリスク・ミドルリターンになるのは当然です。
こうした商品そのものの仕組みを無視して、投資信託にハイリターンを期待するのはおかしな話ではないでしょうか。
ただ、投資信託はミドルリターンとはいえ、儲けがないわけではありません。リスクをできる限り抑え、そこそこのリターンを手軽に狙えるのが投資信託の魅力です。
儲けはあるのに、その度合いが少ないからといって「儲からない」と切り捨てるのは早計です。投資信託は、初心者でも手軽に低リスク運用できるのが持ち味です。
商品の仕組みとリスク・リターンの度合いを理解したうえで、賢く投資することが大切なのではないでしょうか。
投資信託で儲からない人の3つの特徴
投資信託には儲かるファンドも多数あるのに、それでも儲からないのはファンド選びがうまくできていないからだと言えます。しかし、ファンド選びの以前にそもそも儲からない人には儲けを出せない大きな特徴が3つあるのです。
- 投資金額が少ない
- リスクとリターンを理解していない
- コストと税金の存在を忘れている
いずれも重要ポイントなので、それぞれわかりやすく解説していきましょう。
特徴1:投資金額が少ない
そもそもファンドへ投資している金額自体が少ないという方は、投資信託で儲けを実感できないでしょう。
年間投資額別に、年率20パーセントのリターンがいくらになるかを見てみましょう。以下をご覧ください。
- 年間投資額1,000万円:リターン(儲け)は200万円
- 年間投資額100万円:リターン(儲け)は20万円
- 年間投資額10万円:リターン(儲け)は2万円
- 年間投資額1万円:リターン(儲け)は2,000円
このように投資にかける元手の金額が小さくなればなるほど、リターン(儲け)も小さくなります。たとえ同じ利回りでも、投資額が違うとそれだけリターンのインパクトも変わってくるのです。
リターンのインパクトが小さい、あまり儲けを実感できないのは、投資額自体が少ないからではないでしょうか。
繰り返しますが、投資信託はミドルリスク・ミドルリターンの投資です。1万円を1年で数倍・数十倍にするほどの多大なパフォーマンスは期待できません。
また、上記の例では年率20パーセントで計算していますが、実際には年率10パーセント以下のファンドも多いです。そのため、投資信託で大きなリターン(儲け)を得たい・実感したいのなら、その分投資額を増やすしかないのです。
特徴2:リスクとリターンを理解していない
投資信託に限らず、投資におけるリスクとリターンの関係を理解していなければ、儲けを得るのは難しいでしょう。なぜなら投資におけるリスクとは、「リターンの振れ幅」を指しているからです。
つまり、リターン(儲け)を期待して投資をするなら、それだけ大きな価格変動を覚悟しなければいけません。資産を2倍にしたいのなら、資産が2分の1になる可能性も覚悟したうえで投資する必要があるのです。
こうしたリスクとリターンの関係を理解せずに投資信託を始めて、少し価格が下落しただけで焦ってファンドを売却してしまう方は意外と多いです。しかし、投資信託でも他の投資でも、価格が安いときに買って価格が高くなったときに売るのが、投資で儲けを出す基本ですよね。
投資信託はミドルリスクとはいえリスク商品ですから、日々資産価値は変動しています。ときには資産価値がマイナスになることもあるでしょう。
資産価値が少しでも下落したり、マイナスになったりしたときにすぐファンドを売却していると、いつまでたっても儲けることはできません。
投資信託で儲けたいのなら、ある程度の価格変動は付き物です。リスクに耐えられないのであれば、リターン(儲け)を重視して投資することはできないのです。
投資信託でも他の投資手法でも、投資におけるリスクとリターンは表裏一体だということを、しっかり理解しておくことが大切ですよ。
特徴3:コストと税金の存在を忘れている
投資信託の運用には一定のコストがかかりますし、さらに利益が出れば一定の税金が差し引かれます。そのため、コストと税金を無視して投資信託へ投資していても、「利益は出ているはずなのに、実際の儲け額は少ない」という事態に陥るので注意しましょう。
投資信託にかかる代表的なコストと税金は、以下の2つです。
- ファンドの保有にかかる「信託報酬」:年0.5~3パーセント程度※
- ファンドの売却や分配金などの利益にかかる「税金」:20.315パーセント
※ファンドによって異なる
信託報酬はファンドを保有する限り永遠にかかってくるコストなので、投資の期間が長くなればなるほどトータルリターンに大きな影響を与えます。
たとえば、投資額が100万円で信託報酬が年2パーセントかかるファンドの場合、年間コストは約2万円です。もしこのままファンドを10年保有すれば、10年間の信託報酬は約20万円※に及びます。
※信託財産が100万円のままだった場合の概算値
いくら運用成績が良いファンドでも、運用コストが高ければ実際の儲け額は小さくなる可能性があるので気をつけてください。
さらに、投資信託の利益にかかる税金の存在も、無視できません。たとえ投資信託で100万円の利益が出ても、20.315パーセント(20万3,150円)もの税金が差し引かれるのです。
また、毎月分配型ファンドなどの場合、分配金を受け取るたびに税金が差し引かれる可能性があります。
このように投資信託は手軽に運用できる反面、運用コストがかかること、儲けから差し引かれる税金は軽視できないのです。ここを忘れて投資信託を始める方ほど、「儲けがあるようでない」事態に陥りがちなので、気をつけてくださいね。
投資信託で儲けるためのポイント
投資信託で儲けを出すためには、上述した「儲けられない人の特徴」を理解したうえで、しっかりと儲けるための対策を取ることです。具体的には、以下のポイントが重要になってきます。
- 余裕をもって投資金額を準備する
- NISAやiDeCoをフル活用する
- もっと儲けたいなら他の投資も考える
くわしく解説していきましょう。
ポイント1:余裕をもって投資金額を準備する
投資信託で儲けを実感するためには、ある程度投資金額を準備する必要があります。もちろん、100円、数千円など少額から投資できるのは投資信託の大きな魅力です。
しかし、投資額が1万円のままでは、いくら待っても利益は数千円です。利益(儲け)があることに違いはないのですが、大きな儲けを実感するのは難しいでしょう。
より大きな儲けを実感したいのであれば、1回の投資額は少額でも、コツコツと積み立てを継続するなどして投資額を積み上げるしかありません。これは投資信託に限らず、他の投資手法に対しても言えることです。
儲けを実感したいのなら、ある程度余裕をもって投資金額を準備してください。
もちろん、生活費など家計に影響が出る範囲で投資をするのは危険です。投資金額は生活費と切り分け、あくまで余裕資金から出すようにしましょう。
ポイント2:NISAやiDeCoをフル活用する
投資信託で儲けを最大化するために大切なのは、適切なコスト・税金対策です。具体的には、信託報酬は一定以下のファンドを選ぶこと・節税制度を上手に活用して投資するようにしてください。
ファンド選びの際の信託報酬の目安
アクティブ運用なら年1.5パーセント未満、インデックス運用なら年0.5パーセント未満を目安にファンド選びをしましょう。つみたてNISA対象ファンドを参考にするのもおすすめです。
投資信託では、ファンドの運用成績が悪くても良くても、必ず運用コストはかかります。そのためファンド選びの際はまずコストを徹底的に抑えたうえで、ファンドを選ぶことが大切です。
NISAやiDeCoなどの節税制度をフル活用する
NISAもiDeCoも、専用の口座内で購入した投資信託の運用益に対する税金がかからない節税制度です。
- NISAには3つの制度がある(2024年以降、ジュニアNISAは廃止
- 一般NISA:非課税期間5年/年間投資額120万円まで/資金引き出し制限なし
- つみたてNISA:非課税期間20年/年間投資額40万円まで/資金引き出し制限なし
- ジュニアNISA:子供向け・非課税期間5年/年間投資額80万円まで/子供が18歳になるまで資金引き出し制限あり
- iDeCoは老後の資産形成向け制度(非課税期間・資金の引き出し制限60歳まで/年間投資額は国民年金の被保険者種別により異なる/掛金全額所得控除)
NISAもiDeCoも投資額や非課税期間などで制限はありますが、それでも20.315パーセントの税金をゼロにできるのは大きな魅力です。運用成績が良いファンドを見つけるよりも、差し引かれる税金をゼロにする方が、より簡単に儲けを得られるのではないでしょうか。
ポイント3:もっと儲けたいなら他の投資も考える
「投資信託では儲けられないというより、儲けの度合いが少ないと感じる」場合は、他の投資も視野に入れることをおすすめします。
何度も繰り返しますが、投資信託は元々ミドルリスク・ミドルリターンの投資法です。短期間で資産を2倍・3倍にすることはできません。
投資信託の良さは少額で投資を始められる気軽さや、一つのファンドで分散投資できるリスクの低さ、運用の手間がかからない手軽さにあります。
もし投資信託を始めてみて、「たしかに利益はあるけど、思っていたより儲けが少ないな」と感じる場合は、上述した投資額を増やす・コストと税金を徹底的に削減するという対策を取ってください。それでもなお、もっと儲けを重視したい、リターンを取りにいきたいという方は、ハイリスク型の投資に目を向けてみましょう。
ハイリスク型の投資には、株式投資や仮想通貨、FX、ヘッジファンドへの投資などがあります。いずれも投資信託よりリスクは高くなりますが、その分大きなリターンを期待できます。
投資信託で個別株式に直接投資したいと思った方は、株式投資を始めてみましょう。投資信託のようにプロにお任せの運用が性格に合っているけれど、より投資額を大きくしたいという方は、ヘッジファンドへの投資という方法もあります。
投資ごとに特徴は大きく異なりますし、人によって向き・不向きがあるので、どの投資法が正解ということはありません。
ただ、どんな投資であれ、期待リターンを高くすればその分リスクは高くなります。リスクとリターンの関係を理解したうえで、ご自身のリスク許容度や価値観、投資スタイルに適した投資法を選ぶようにしてください。
まとめ
「投資信託は儲からない」投資法ではなく、「仕組みやリスクなどを理解していなければ儲からない」投資法です。投資信託に限らず、どんな投資法でも儲け(リターン)を得るためにはある程度のリスクと投資資金が必要です。
また、税金やコストを無視した投資をしていると、実質的に得られる儲け額は微々たるものにしかなりません。
大切なのは、「儲かる投資かどうか」ではなく、「儲かるための対策をしっかり取っているかどうか」です。投資信託で確実に儲けるために大切なポイントは、以下の2つです。
- 投資額は多めに用意する
- コストと税金対策を徹底する(NISA&iDeCoフル活用)
上記の対策をふまえたうえでより大きなリターンを狙いたい場合は、ハイリスク型投資を検討するという方法もあります。この機会に投資信託の特性を改めて見直したうえで、ご自身に適した投資法を選ぶようにしてください。