資産運用会社というと、日本では銀行や証券会社、保険会社などの金融機関のグループ会社であるのが一般的です。
しかし最近では特定の金融グループに属さない独立系運用会社の運用商品が、投資信託の人気ランキング上位にも名を連ねるようになっています。
この記事では、独立系運用会社がなぜ人気を集めているのか、そのメリットや強みについて解説していきます。
1、運用会社とは?証券会社との違い
運用会社(投資顧問業者)とは、顧客(投資家)から預かった資金の運用を専門に行う会社のことです。
それに対し、証券会社や銀行などの金融機関は、彼らの運用する商品(投資信託)を顧客(投資家)に販売する窓口(販売会社)としての役割を担っています。
投資信託を家電にたとえると、メーカーにあたるのが運用会社、家電量販店にあたるのが証券会社や銀行といった金融機関という位置付けです。
金融機関の傘下にある運用会社は、いわばプライベートブランドのようなもので、自分たちが売りたい商品をつくることができ、低コストで商品を仕入れられるという点では好都合と言えます。
ただ、商品を販売する側の立場にある金融機関の方が通常は立場が上にあり、下請けともいえる運用会社が顧客(投資家)目線の商品がつくれるのかという懸念もあります。
そのような状況に対する投資家の目はより厳しくなってきており、独立系運用会社が注目を集めるひとつの要因ともなっています。
2、独立系運用会社のメリット・デメリットから考える投資先選択のポイント
ここでは、独立系運用会社のメリット・デメリットから投資先として適切なのかを判断できるよう、選択する際のポイントについて考えてみます。
(1)メリット3つ
①特定の金融機関の意向に経営方針や運用方針が左右されない
上記にもあるように、特定の金融グループに属する運用会社では、通常商品を販売する証券会社や銀行などの立場が上にあり、その意向が商品の設計から、経営方針や運用方針といった部分にまで影響してきます。
販売会社側にとって有利な運営が行われれば、顧客である投資家にとっては不利になってしまいます。
一方独立系運用会社では、忖度が必要なグループ会社がないため、運用会社と投資家の間に利益相反が生じることがなく、顧客(投資家)本位の運営が行われるメリットがあります。
また独自の投資哲学に基づいて運用が行われるため、投資家にとっては投資の選択肢が広がります。
選択のポイント:独立系運用会社では、投資家と運用会社との間で利益相反が生じない
②運用会社と投資家との距離が近い
独立系運用会社では、証券会社などを通さず投資家に直接商品を販売する、「直販」スタイルが多く取り入れられています。
証券会社を介して販売される商品では、商品について知るためには証券会社の担当者から説明を受けたり、運用報告書などを読んだりするくらいしかありません。
しかし、直販スタイルをとる運用会社では、その多くで運用を行うファンドマネージャーがセミナーなどに登場し、投資哲学や運用方針などについて投資家に直接説明します。
またファンドマネージャーに直接質問できる場が設けられたり、投資先企業の見学会が開催されたりするなど、どのような方針で、どのような企業に投資しているかを実感しやすいのも特徴です。
投資家は自分の大切なお金を預けるのであり、そのお金を誰が、どのような方針で、どのような投資先に投資するのか、そのことを身をもって知ることができるというのは安心感につながります。
また損得だけではなく、投資先企業を応援したいといった投資本来の意義を感じられ、投資による満足度はより高まると言えます。
選択のポイント:独立系運用会社では、経営者や運用者の顔が見える安心感がある
③ 直販型では販売手数料がかからない
証券会社などを介さず、商品を直接投資家に販売する独立系運用会社では、証券会社に支払う販売手数料がかからないというメリットがあります。
証券会社を介して投資信託を購入する場合、通常1〜3%程度の販売手数料がかかります。
販売手数料が3%かかる商品を100万円分購入したとすると、証券会社に支払う手数料は3万円であり、早々に大きなマイナスからのスタートとなってしまいます。
(2)デメリット2つ
① 信託報酬はインデックスファンドに比べやや割高
独立系運用会社は、TOPIXなど市場平均を上回る運用成果を目指す、いわゆるアクティブファンドが多く、市場平均に連動する運用成果を目指すインデックスファンドに比べれば、運用コストにあたる信託報酬が割高な傾向があります。
ただ一般的なアクティブファンドに比べれば、信託報酬が低く抑えられていると言えます。
信託報酬は調査や分析を行うためにも必要なコストではあるものの、運用にとっては確実なマイナスです。
そのコストに見合うリターンが期待できるのかは、投資判断を行う際のポイントとなります。
選択のポイント:リターンに見合った適切なコストとなっているか
② 商品の選択肢が少ない
独立系運用会社には取扱商品が1銘柄という会社多く、商品の選択肢は限られます。
とはいえ、その運用会社の運用方針に共感でき、しっかりと運用成果をあげているのなら、なんら問題はありません。
むしろその店こだわりの一品で勝負するラーメン屋のように、その商品だけで勝負する潔さと言えます。
この商品がダメでもほかの商品があるという逃げは許されず、その商品で最高のパフォーマンスをあげるという、運用会社の明確なコミットメントの表れでもあります。
選択のポイント:パフォーマンスに対する明確なコミットメントがあるか
投資先を選択する際には、上記のポイントを意識して判断するようにしましょう。
3、主な独立系運用会社
では、独立系運用会社にはどのような会社があるのでしょうか。
日本に拠点を置く主な独立系運用会社の概要についてまとめましたので、資金の預け先を選択する際の参考としていただければ幸いです。
会社名 | ファンド名 | 純資産額 (億円) |
信託報酬 (年率)(税込) |
販売 手数料 |
さわかみ投信 | さわかみファンド | 3,214 | 1.08% | なし |
さわかみ投信は、澤上篤人氏(現会長)が1999年に創業した、日本初の独立系投信運用会社。同社唯一の運用商品である『さわかみファンド』は、「一般家庭の財産づくりを本格的な長期投資でお手伝いしたい」という創業理念のもと、長期「バイ・アンド・ホールド」型のバリュー投資を基本とし、日本株を中心とした国内外の金融商品を投資対象として運用されている。 | ||||
セゾン投信 | セゾン・バンガード・ グローバルバランスファンド |
1,679 | 0.60%±0.02% | なし |
セゾン資産形成の達人ファンド | 673 | 1.35%±0.2% | なし | |
セゾン投信は、2006年に設立された独立系投信運用会社。市場の動きの予想は行わず、長期視点での分散投資を運用方針として、上記2つのファンドを運用。『セゾン・バンガード・グリーバルバランスファンド』は、世界30か国以上の株式と10か国以上の債券に国際分散投資に原則50%ずつ投資するインデックス(バランス)型ファンド、『セゾン資産形成の達人ファンド』は30か国以上の国の厳選された企業の株式へ国際分散投資を行うアクティブ型ファンド。 | ||||
レオス・キャピタルワークス | ひふみ投信 | 1,406 | 1.0584% | なし |
レオス・キャピタルワークスは、藤野英人氏が2003年に創業した独立系投信運用会社。主力商品である『ひふみ投信』は、主に国内外の成長企業の株式を投資対象として、長期的な資産形成を目指すファンド。柔軟に組み入れ銘柄の入れ替えを行い、株式市場の変化に対応するのが特徴。藤野氏自身も資産の多くをひふみ投信で保有している。 | ||||
鎌倉投信 | 結い2101 | 382 | 1.08% | なし |
鎌倉投信は、鎌田恭幸氏ら4名によって2008年に設立された独立系投信運用会社。3つの「わ」(和・話・輪)を信条としている。唯一の運用商品である『結い2101』は、これからの社会にほんとうに必要とされる会社に投資を投資対象として、リスクを抑えながらゆっくりと安定した資産形成を目指している。 | ||||
ありがとう投信 | ありがとうファンド | 126 | 1.60%±0.2% | なし |
ありがとう投信は、2004年に欧米の本格的な資産運用を日本にも広めるという思いから、5人の税理士・公認会計士によって設立された独立系投信運用会社。欧米の優れた実績のあるファンドを厳選して長期国際分散投資する『ありがとうファンド』を運用している。 | ||||
コモンズ投信 | コモンズ30ファンド | 148 | 1.0584% | なし |
ザ・2020ビジョン | 42 | 1.2420% | なし | |
コモンズ投信は、長期投資を通じて最良な企業と出会える場を提供すれば、持続的な価値創造が可能になるという想いのもと、2004年に設立された独立系投信運用会社。真のグローバル企業を中心に約30銘柄に30年の長い目線で投資する『コモンズ30』と、変化を始めた企業、変化にチャレンジする企業を中心に中長期的に投資を行う『ザ・2020ビジョン』を運用している。コモンズ30はつみたてNISAの対象。 | ||||
ユニオン投信 | ユニオンファンド | 62 | 0.864% | なし |
ユニオン投信は、労働組合が母体となって長期的な資産形成を目的に設立された独立系投信運用会社です。唯一の運用商品である『ユニオンファンド』では、世界中から厳選された、長期投資の考え方が確立・実践され、相対的にパフォーマンスが良好なアクティブファンドを投資対象としている。 | ||||
クローバー・アセット・マネジメン | コドモファンド | 74 | 1.7%±0.4% | なし |
浪花おふくろファンド | 12 | 1.6%±0.25% | なし | |
らくちんファンド | 9 | 1.55%±0.2% | なし | |
かいたくファンド | 7 | 1.4%±0.2% | なし | |
クローバー・アセット・マネジメントは、世界で一番お客様を幸せにするファンドでありたいという想いのもと、2006年に設立された独立系投信運用会社。世界中から長期投資向けのファンドを選びぬき組合わせて最適なパッケージとした4つのファンドを提供している。 |
2018年10月10日時点
まとめ
いかがでしたでしょうか。
独立系運用会社は親会社の意向などに縛られないため、独自の運用方針もと、長期的な視点でより顧客(投資家)を意識した運用が行われています。
また積極的な情報公開が行われており、どのような運用が行われているか、ファンドマネージャー自ら説明し、投資家からの質問に直接答える機会が設けられているなど、顔の見える運用が行われているのも特徴です。
運用成績はもちろん、誰がどのように運用しているのか、運用者の顔が見えるというのは、大切な資金を預ける上で重要な要素であり、安心感も違ってきます。
投資先を選ぶ際には、そのような点を意識して選ぶと良いでしょう。