少額から長期国際分散投資による資産形成ができるファンドとして注目の『ありがとう投信』。
将来の不安について数多くの相談を受けていた5人の税理士・公認会計士が、その不安を解消すべく立ち上げた異色のフ
ァンドでもあります。
この記事では、ありがとう投信唯一の運用商品『ありがとうファンド(ファンドの宝石箱)』とはどのような商品なのか、その特徴やメリット・デメリットについて検証していきます。
1、『ありがとう投信』の特徴
(1)ありがとう投信のあらまし
ありがとう投信は、将来の不安について数多くの相談を受けていた5人の税理士・公認会計士が、2004年3月9日に設立した独立系の資産運用会社です。
その当時の日本の資産運用業界は、大手金融機関グループを中心に、販売手数料収入を目的として、マーケットの流行りに合わせて次々に新しいファンドを作って販売し、短期間で乗り換えさせる営業が横行していました。
ありがとう投信はそのような状況を変え、欧米では当たり前の長期投資による資産形成を日本にも広めようという想いのもとで設立されました。
日本における長期投資のパイオニアであるさわかみ投信・澤上篤人氏の協力のもと、大手金融機関グループの慣習や常識に縛られず、厳選した欧米の優れた実績のあるファンドへの長期国際分散投資を行う『ありがとうファンド(ファンドの宝石箱)』を立ち上げ、販売・運用を行っています。
(2)ありがとうファンド(ファンドの宝石箱)
『ありがとうファンド(ファンドの宝石箱)』は、ありがとう投信唯一の運用商品であり、「長期投資」「国際分散投資」「厳選投資」の3つの特徴があります。
ありがとうファンド(ファンドの宝石箱) 3つの特徴 | |
長期投資 | 株式を中心に長期投資を行い、短期的な値動きに惑わされずじっくりと資産形成を目指す |
国際分散投資 | 世界の様々な国・企業へ投資することで、その成長の恩恵を受けるとともに、分散投資によるカントリーリスクの軽減を図る |
厳選投資 | 成長性のある企業に長期投資するファンドへ厳選して投資することで、安定したパフォーマンスを実現する |
ファンドの運用は「ファンド・オブ・ファンズ形式」で行われ、資産配分に基づいて、成長性のある企業に長期投資するファンドへ投資され、資産配分は景気の変動サイクルを先取りする形で適宜見直しが行われます。定期積立を利用すれば、月々5,000円の少額から国際分散投資が可能となります。
(出所:ありがとう投信)
ありがとうファンド(ファンドの宝石箱) | ||||
基準価格 | 純資産額 | 購入時手数料 | 信託報酬率 (税込) | 信託財産留保額 |
17,191円 | 118億円 | なし | 年1.60%±0.2% | なし |
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | |
トータルリターン (年率) | 4.62% | 8.90% | 8.89% | 7.68% |
シャープレシオ | 0.51 | 0.76 | 0.76 | 0.49 |
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(出所:基準価格・純資産額・手数料/モーニングスター・2018年10月31日時点、トータルリターン・シャープレシオ/モーニングスター・2018年9月30日時点、基準価額・純資産総額の推移チャート:ありがとう投信・2018年9月末時点)
2、『ありがとうファンド』の運用成績
ありがとうファンドは、リーマンショックにより一時的な落ち込みはあるものの、基準価格、純資産を着実に伸ばしています。
ではその実力はどうなのでしょうか。
ここでは運用方針の近いセゾン投信の2商品、および全世界の株式時価総額の85%をカバーする「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ・ACWI)・配当込・円ベース」と比較して検証してみます(ありがとうファンドはベンチマークを定めていないため、MSCI ・ACWIは参考指数として用いて検証します)。
ありがとうF | セゾン バンガード・グローバルバランスF | セゾン 資産形成の達人F | (参考) MSCI ・ACWI | ||
基準価格 | 17,191円 | 14,095円 | 19,961円 | — | |
純資産額 | 118億円 | 1638億円 | 641億円 | — | |
資産構成 | 株式:約90% 債券・現金:約10% (*2018/8末時点) | 株式:50% 債券:50% | 株式:100% | 株式:100% | |
ヘッジ | なし | なし | なし | — | |
販売手数料 | なし | なし | なし | — | |
信託報酬等 (税込) | 1.60% | 0.60% | 1.35% | — | |
トータルリターン (年率) | 1年 | 4.62% | 4.84% | 14.54% | 11.94% |
3年 | 8.90% | 5.21% | 13.64% | 12.79% | |
5年 | 8.89% | 7.21% | 13.74% | 12.45% | |
10年 | 7.68% | 5.64% | 12.06% | 9.98% | |
シャープレシオ | 1年 | 0.51 | 0.72 | 1.74 | — |
3年 | 0.76 | 0.55 | 0.96 | — | |
5年 | 0.76 | 0.75 | 0.98 | — | |
10年 | 0.49 | 0.44 | 0.68 | — |
出所:モーニングスター 基準価格・純資産額/2018年10月31日時点、トータルリターン・シャープレシオ/2018年9月末時点
トータルリターン相対比較(2015年10月末を0とした変化率)
(モーニングスターより作成)
ありがとうファンドのトータルリターンは、債券比率の高いセゾン・バンガードグローバル・ファンドをおおむね上回っていますが、セゾン・資産形成の達人ファンドやMSCI・ACWIを下回っています。
現金比率が比較的高いありがとうファンドは、株式相場全体が停滞気味であった2016年におけるリターンの低下は相対的に小さく、安定しているとも言えます。
しかし上昇局面における伸びも相対的に小さくなり、全体のリターンは低くなっています。
世界株インデックス(MSCI・ACWI)や、信託報酬の割安なセゾン・資産形成の達人ファンドのトータルリターン、シャープレシオを下回っており、運用効率はやや劣る印象を受けます。
3、『ありがとうファンド』のメリット・デメリット
ここまでみてきた『ありがとうファンド』の特徴や運用成果から、そのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
(1)3つのメリット
① 少額から長期国際分散投資が可能
定期積立サービスを利用すれば、月々5,000円の少額から世界中の株式・債券への国際分散投資が可能です。
積立投資では時間分散によるリスク分散効果が期待できます。
また独立系運用会社であるため、親会社の慣習や常識に縛られることなく、長期的なスタンスで安定した資産形成を目指すことができます。
② 資産配分の見直し(アセット・アロケーション)が自動的に行われる
資産配分は景気の変動サイクルを先取りする形で適宜見直しが行われます。
投資家は何もしなくても、ファンド内でその時々において最適な資産配分に調整され、安定した運用パフォーマンスが維持されます。
③ 信託報酬以外のコストが無料
ありがとう投信は、証券会社を介さず投資家に直接商品を販売する「直販」スタイルであり、販売手数料が無料です。
そのほか売却時手数料、信託財産留保額、定期積立における振込手数料なども無料で、信託報酬以外のコストがかからないというメリットがあります(ただし、スポット購入時の振込手数料は購入者負担)。
(2)2つのデメリット
① リターン・運用効率でやや劣る
運用方針や運用形態の近い商品やインデックスと比較した場合、直近10年間におけるリターン、運用効率はやや劣ると言えます。
② 信託報酬が割高
同じカテゴリー(先進国株式・アクティブファンド)属する投資信託の中では、信託報酬の低い部類に入りますが、セゾン投信など1%前後の商品と比較するとやや割高です。
継続的に発生するコストであり、長期投資では大きな差となってきます。
まとめ
ありがとうファンドは、着実に資産を増やしているファンドです。
ただ世界株インデックスのリターンを下回り、同程度のリスクでより高いリターンをあげるファンドもあることから、相対的は評価としては今一歩というところです。
限られた資金をより効率よく増やしていくという点では、今回比較対象とした『セゾン投信』、あるいは独立系投資会社として市場平均を上回るリターンを狙い、アクティビスト投資を行っている『Japan Act』などの選択肢を検討されるほうが良いかもしれません。
セゾン投信は、2006年に設立された独立系投信運用会社です。
市場の動きの予想は行わず、長期視点での分散投資を運用方針として、2つのファンドを運用しています。
『セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド』は、世界30か国以上の株式と10か国以上の債券に国際分散投資に原則50%ずつ投資するインデックス(バランス)型ファンド、『セゾン資産形成の達人ファンド』は30か国以上の国の厳選された企業の株式へ国際分散投資を行うアクティブ型ファンドです。
Japan Actは、「改革者として、日本市場にイノベーションを起こす」というビジョンのもと、アクティビスト投資を行う、独立系の投資会社です。
企業の本質的な価値に対し、何らかの要因で市場から過小評価を受け、株価が割安な水準になっている企業に投資を行います。
株主として企業や経営陣との建設的な対話を通して、関係を構築し、中長期的な企業価値向上につながる提案などを行っています。
Japan Actは、投資先企業の発行済株式を約1.1%保有し大株主となった後、2019年6月開催の株主総会で、株主提案を行っています。