AI(人口知能)投資信託の特徴と銘柄の選び方

コンピュータは情報の処理や計算は得意でも、将来を予測したり推測したりする能力については人間に勝てないと思われてきました。

しかし何十手先まで読むことが求められる囲碁や将棋で、コンピュータは人間に絶対勝てないという常識をAI(人工知能)を搭載した「アルファ碁」がトップ棋士を破ったことで覆されました。

AIとこれまでのコンピュータとの違いは、自ら学び推測して答えを出すところにあります。

もともとコンピュータが得意とする多くの情報を処理する能力と、将来を予測・推測する能力を持ち合わせたAIは、今まで人間のアナリストやクオンツといった金融の専門家が行なってきた投資分析にも活躍の場を広げており、実際にAIを活用した投資信託も登場して話題となっています。

ではAIを活用した投資信託とはどのようなものなのでしょうか。

今回は、AIを活用した投資信託について紹介していきます。ご参考になれば幸いです。

1、AIを活用した投資信託の特徴は?


AIを活用した投資信託では、投資信託に組み入れる銘柄やどのくらいの割合で各銘柄を組み入れるのかといった運用実績に直結する重要な決定において、AIのデータ解析の結果が用いられます。

大量の情報を高速に処理することのできるAIは、人間では把握しきれないほどの膨大な情報や変化し続ける相場の変化などを分析することによって、投資先として有望な銘柄や売買のタイミングなどをいち早く見出せると期待されています。

2、AIを活用した投資信託の仕組みとは?


AIを活用した投資信託においては、主に「投資銘柄の選択」や「相場変動の予測」において用いられています。

(1)投資銘柄の選択

日本株を投資対象とする投資信託の場合、対象となる上場企業は3,500社(日本取引所グループ上場会社数)を超え、そのすべての決算書や有価証券報告書、各種投資指標などを人間がチェックして投資銘柄を選定しようとすれば、膨大な時間とコストがかかってしまいます。

この銘柄選定において、大量の情報の中から必要な情報を瞬時に取捨選択できるAIの能力が活用されています。

またAIには文章中から必要な情報を見出すテキストマイニングという機能があるため、業績や投資指標などの数字情報だけでなく、経済ニュースやレポートなどの情報まで取り入れた分析が行われます。

(2)相場変動の予測

「歴史は繰り返す」という言葉は相場にも当てはまります。

AIは蓄積された過去の膨大なデータから、現在の相場との類似性を見出し今後の値動きの予測を行います

またディープ・ラーニング(深層学習)という機能を持ったAIは、実際の相場と過去のデータとの間に相違が生じた場合にはその原因分析までを自ら行います

その上で分析方法を改善しながら次の予測に活かしていく仕組みとなっています。

3、他の投資信託と比較したAI投資信託に投資するメリット

(1) 膨大な情報量

AI投資信託では、人では管理するのが難しい膨大な量のビックデータを投資に活用しています。

リサーチレポート、ニュース記事、アナリストレポート、決算説明会議事録など分析材料は限りなくあります。

全ての情報を収集し、投資に活用できるのは、AIの成せる技ということになります。

(2)分析能力とスピード

大量の情報を高速で処理できるAIであれば、すべての銘柄を詳細に分析することも容易であり、アナリストが見逃してしまっていたような中小型株の中から投資対象として有望な銘柄を見出せる可能性も高くなります。

まだ注目されていない有望中小型株は、企業価値に比べ株価が割安な水準にあることが多く、そのような銘柄にいち早く投資することができれば、高い運用成果が期待できます。

(3)AI独自の手法

またAIによる分析によって人間の考え方にとらわれない新たな手法が見出されたり、多くのアナリストを必要としなくなることで投資家が負担する運用コストである信託報酬が軽減されたりといったメリットもあります。

4、他の投資信託と比較したAI投資信託に投資するデメリット


AIを活用した投資信託には、デメリットもあります。

(1)運用内容と根拠がわかりにくい

まずAIが膨大なデータの中から具体的にどのような基準でその判断をしたのか、その根拠がわかりにくいということがあります。

大切なお金を預ける投資家としては、運用内容や根拠がわかりにくいというのは、やや不安かもしれません。

(2) 不測の事態が起きた場合

また、過去のデータだけでは対応が難しく、これまでにないことが起きた場合の迅速な対応はAIにとって不得意な部分です。

AIを活用した投資信託には、データ分析などAIが得意とする分野はAIに任せる一方、不得意とする分野については人間がカバーし、運用の最適化が図られているものもあります

これらのデメリットについては、さらなる技術の進歩により改善が期待されます。

5、AI投資信託の銘柄の選び方


AIを活用した投資信託には、他の投資信託にはないメリットがありますが、運用成果や信託報酬などは、それぞれのAI投資信託によって差があります

実際にAIを活用した投資信託への投資を検討する場合には、以下のようなポイントについて、よく確認し理解した上で選択することが大切です。

(1)運用実績

AIの活用が必ずしも高い運用成果につながるわけではありません。そのため過去の運用実績などを参考に、実際に運用成果が出ているかどうかを確認することも大切です。

その際には、ただ運用成果が出ているというだけではなく、同じジャンル(日本株、中小型株など)の投資指標やそのジャンルを投資対象とする他の投資信託と比較した上で、相対的に評価することが必要です。

(2)信託報酬

信託報酬は運用成果にかかわらず、投資信託を保有している間ずっとかかる経費であり、最終的な運用実績にも影響します。

そのため期待できる運用成果に見合った、信託報酬のなるべく安いものを選ぶようにしましょう。

AIを活用した投資信託の信託報酬は、積極的にリターンを追求する投資信託(アクティブファンド)と比較すると割安なものが多いといえます。

AIを活用した投資信託であれば、年1.5%以下を目安とするとよいでしょう。

6、個人投資家向けのAIサービスもある!


AIを活用した投資信託を購入する以外にも、個人投資家の資産運用にAIを活用できるサービスも登場しています。

それが「ロボアドバイザー」です

このロボアドバイザーは、年齢や資産状況などから、AIがどのような投資対象に投資すればいいのか運用方針を提案してくれるというものです。

実際に運用を行うには、プランを選択し運用資金を入金するだけでよく、あとは自動的に運用方針に沿って運用が行えます。

時間や手間をかけず、合理的な資産運用を行いたい方や、少額から国際分散投資を行いたい方には魅力的なサービスだといえます。

主なロボアドバイザーとしては、THEO(テオ)やWEALTH NAVI(ウェルスナビ)などがあります。

7、AI関連銘柄に主に投資する投資信託もある!


ここまではAIを運用に活用する投資信託についてみてきましたが、今後さらなる成長が期待されるAI関連企業を投資対象とする投資信託もあります。

AI関連銘柄に投資する投資信託の中では、「グローバル・AIファンド(三井住友アセットマネジメント)」や「グローバル・ロボティクス株式ファンド(日興アセットマネジメント)」などが比較的高いリターンをあげています

AIについては多くの投資家が注目しており、その注目の高さゆえに成長を期待してすでに株価が値上がりしている銘柄が多いのも事実です。

これからAI関連銘柄を投資対象とする投資信託を購入する場合には、この点も理解した上で検討するようにしましょう。

8、iDeCoを利用した投資信託の購入もおすすめ!


老後への備えとして投資信託の購入を検討されているのであれば、iDeCo(個人確定拠出年金)を利用するのもおすすめです。

iDeCoの特徴は掛金が全て所得控除の対象となり、運用益も非課税となるなど、節税効果が非常に高いことです。

一般的な所得の方であれば、投資額の約30%に相当する節税となり、運用益とは別に実質的に30%のリターンが得られたのと同じ効果が期待できます。

ただし、積み立てたお金を使えるのは60歳以降だということは、よく理解した上で利用しなければなりません。

掛金をどのように運用するかは、iDeCoに加入する金融機関の指定する投資信託などの運用商品から、ご自身で選択することになります。

この商品選択にAIを活用したロボアドバイザーのプランを活用するのもおすすめです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

AIを活用した投資信託には、膨大な情報を的確に分析し運用に活用できるという特徴があります。

この特徴は今後ますます情報量が増えていくにつれ、優位性を増していくことが期待されます

またAIを活用したロボアドバイザーなどは、効率的に投資判断を行うための有益なツールとなるでしょう。

この記事をきっかけに、AIを資産運用に取り入れてみてはいかがでしょうか。