「オルタナティブ」とは、直訳すると「代替物」という意味をあらわす単語です。
投資と聞くと、株式投資や投資信託、もしくは債権といった代表的金融商品の購入を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
「オルタナティブ投資」は、そういった伝統的な資産を運用するのではなく、文字通りそれらの「代替物」とされるものを対象としていく投資手法です。
代替物と聞くとややイメージしにくいと思いますが、株・債権以外のさまざまなものに投資していくというようにお考えください。
今回はそんな「オルタナティブ投資」について、それが一体どんなものなのか、そしてそのメリット・デメリットはあるのか?などといった点について徹底的にチェックしていきましょう。
1、オルタナティブ投資とはどんな投資?急成長の背景は?
先ほども述べたように、基本的にオルタナティブ投資とは、上場株式・債権といった伝統的資産への投資方法ではなく、それ以外のものに投資することを指します。
最も代表的な例で言えば、ゴールドをはじめとしたコモディティが挙げられますが、FX(外国為替証拠金取引)、不動産、最近で言えば暗号通貨(仮想通貨)のようなものもその一つとして数えられると言えるでしょう。
投資対象の拡大または投資手法の変更をとることによって、株・債権とは異なったリスクをとりつつリターンを狙っていくのがオルタナティブ投資の特徴の一つです。
日本国内の株式に関して言えば、一辺倒に上がり続けているというわけではなく、数年のスパンで下落局面に入っていたという期間も存在していました。
そういった際に株式の購入・保有で利益を出すのは難しいと言えますが、そのような局面でも株と商品の特徴が異なるオルタナティブ資産であれば利回りを上げられる場合があるという考え方が、オルタナティブ投資が広まってきた一面でもあると言えます。
どのような金融商品が好まれるのかというのは、その時のマーケット状況や各商品の需給によって異なりますが、株式市場が軟調である際にも利回りを狙う、いわゆる「アルファ」の創出を策す「新しい(非伝統的な)投資手法」としてオルタナティブ投資に、近年注目が集まってきています。
2、オルタナティブ投資商品の種類は? 〜投資対象急増中?
オルタナティブ投資は「代替可能な」新たな投資方法ということになります。
全てについて触れていくのは難しいので、今回は代表的な5つのオルタナティブ商品を見ていきましょう。
(1)ヘッジファンド
最初に紹介するのが「ヘッジファンド」です。
株式投資をされている方であれば、「ヘッジファンドの大きな買い観測」「ヘッジファンドのグローバル・マクロ戦略」などという言葉やニュースを見たり聞いたりされた方も多いのではないでしょうか。
ヘッジファンドは主に、富裕層やプロの機関投資家から資金を集めて運用を行うファンドのことで、従来の投資ファンドとは異なり、様々な手法を用いてリターンを追求するのが大きな特徴です。
先ほどの「グローバル・マクロ戦略」もその手法の一つに数えられ、他にも「ロング・ショート」や「イベントドリブン」といった戦略を用いてヘッジファンドは利益を狙っているというわけです。
前述したとおり、ヘッジファンドはオルタナティブ投資の中でも資産が数千万~数億といったハイエンドな投資家向けの投資ファンドと言えますが、「ヘッジファンド型投資信託」というヘッジファンドと似た戦略をとる公募型(資産に関わらず、多くの投資家が購入可能)の投資信託も存在していますので、気になる方はそういったものもチェックしてみるとよいでしょう。
(2)不動産ファンド
次に紹介するのは「不動産ファンド」です。
こちらは名の通り「不動産」を投資対象としているファンドのことで、我々個人投資家から集めた資金を元に、不動産市場でリターンを出すことを狙っています。
最近は「J-REIT(ジェイリート)」と呼ばれる、上場型の不動産ファンドも増加傾向にあり不動産ファンドへの投資ハードルは下がってきていると言ってよいでしょう。
(3)商品(コモディティ)ファンド
「商品(コモディティ)ファンド」は、代表的リスク回避資産であるゴールドや、産油国の情勢に影響を受けやすい原油といった商品に投資を行っているファンドです。
これらそのものを売買するというよりは、これらの商品先物のトレードによって利益を狙うファンドが多いと言えるでしょう。
株式とゴールドは基本的には逆相関にあり、どちらかが上がればどちらかが下がる、といった関係性になっています。
そのため株式市場の下落局面では必然的にゴールドに注目が集まるため、商品ファンドに相対的に資金が流入するという図式になっていると言えます。
(4)プライベート・エクイティ・ファンド
「プライベート・エクイティ・ファンド」は機関投資家および個人投資家から募った資金を、未公開株(非上場株)や経営破綻している企業に投資し、その企業を成長・再生させ企業価値を高めたうえで売却することで利益を狙うファンドのことを指します。
上場前のスタートアップに投資をして株式を受け取る、いわゆる「ベンチャーキャピタル投資」もこの一種だと言えるでしょう。
(5)証券化商品
最後に紹介する「証券化商品」は、融資(利子付きの資金貸し出し)や、不動産といった将来利益が見込めるであろう金融資産を担保に発行された有価証券のことを指します。
2008年に発生したマーケットの大暴落、「リーマンショック」はこの証券化商品が引き金となった面が大きかったと言えるでしょう。
低所得者向けに組んだローンを担保に発行した有価証券を発行したものの、そのローンの返済が行われず焦げ付きに陥った、というのがリーマンショック事件の背景でした。
「不動産ファンド」のように個人投資家向けの商品が増加傾向にあるものに加え、オルタナティブ投資の対象商品となるものも増えつつある現在では、我々の資産の運用先というのは選択肢がかなり広がりつつあります。
どういった商品に投資するにせよ、そのリスクとリターンの両面を知って資金を預け入れるというのが「証券化商品」の過去の事例から見ても重要と言えそうです。
3、ここ数年でオルタナティブ投資が増えている背景
米コンサルティングファームであるタワーズ・ワトソン社によると、増加傾向にあるオルタナティブ投資マネージャー上位100社の運用総額は、2013年に3.3兆ドルを突破したとのことです。
また日本においてもゆうちょ銀行がオルタナティブ投資を促進しており、2015年3月末には48兆円だったものが、2017年8月には69兆円に拡大したという報道もされていました。
個人投資家のみならず、こういった大型資金を持っている機関投資家がオルタナティブ投資に視線を向ける一因には「より大きいリターンを狙い、収益の効率化を目指す」という理由があるでしょう。
中でも日本の債券市場においては日銀の金融緩和・マイナス金利政策により収益を生み出すことが難しくなってきており、そういった点からも積極的に資産運用を行えるオルタナティブ投資に注目が集まっていると考えられます。
「伝統的資産に比べリターンが見込める可能性がある」
「株や債券などのリスクヘッジの対象となる」といったメリットからも、オルタナティブ投資がここ数年で増加してきていると言えます。
4、オルタナティブ投資のメリット
ここからは、これまで見てきたオルタナティブ投資が広まってきた背景にある「メリット」について紹介していきます。
オルタナティブ投資の商品構造から考えられるメリットは、以下の3点だと言えるでしょう。
・株式・債権市場が低迷期であってもリターンを狙える投資である
・運用先を分散することによるリスク管理が行える
・収益を得る方法が多様化できる
株式・債権というのは、相場全体が下落トレンドであれば買いポジションである投資家が利益を上げるのは基本的には難しいと考えられます。
一般的に人気である投資信託であっても、ベンチマークとしている日経平均やダウといった指数が下がってしまえば同じような動きをしてしまうため、下落リスクに対しては非常に弱い金融商品だと言えます。
しかしそういった商品とはそもそも投資対象・運用方針・投資手法が異なっているオルタナティブ投資では、伝統的資産への投資におけるデメリットをカバーできる特性があります。
ヘッジファンドの中には株式を取引するものも多くありますが、相場の下落局面では空売り(株価が下がれば利益となる手法)を使い利益を目指す、といった手法を柔軟に用いているのです。
5、オルタナティブ投資のデメリット
先にオルタナティブ投資のメリットとして挙げたものは、総じていえば「株・債権とはそもそも投資対象・投資手法が異なることにより生まれるもの」だったと言えます。
それによるメリットは先に挙げた通りに確かに存在するのですが、伝統的資産を従来の投資手法で取引しないことによって生まれるデメリットというものも存在します。
基本的にメリットだけの金融商品というものは存在しません。
それを謳うようなものであれば、慎重にお考えください。
オルタナティブ投資のデメリットは以下の通りです。
・投資にかかわる情報における不透明性が存在する
・流動性が低い商品に投資を行っている場合、値動きの極端性・換金にリスクがある場合がある
・投資コストが高くなる場合がある
オルタナティブ投資の中には「高いリターン」を掲げ、実際に好パフォーマンスを出し続けているものも多く存在しますが、実際には「高いリターン」を売り文句に、実際には何をやっているのかが分からない、情報開示の不透明な商品もあります。
また株や債権以外のものの中には流動性が低く、「売買したくても出来ない」というものも存在し、そういった商品には極端な値上がり・値下がりをしやすいというリスクが存在しているのです。
加えて通常の投資信託などとは異なり、積極的な投資手法やリサーチにコストをかけるオルタナティブファンドの場合、我々個人投資家が支払うコストがかかりやすいといった側面もあります。
オルタナティブ投資に欠けているのは「信頼性」「信用性」だと言え、先にも述べたようにリーマンショックのトリガーとなった「証券化商品」などを顧みると、まだまだ課題が多い商品もあるということは間違いありません。
そのため、オルタナティブ投資を行う場合は、購入する商品の特徴をしっかりと理解するということが必要になると言えるでしょう。
6、個人投資家もオルタナティブ投資で身を守る方法
「4、オルタナティブ投資のメリット」でも述べた通り、オルタナティブ資産の購入における利点の一つは「分散投資によるリスク低下」です。
上記でも触れたように、株式市場の下落局面(リスクオフ相場)においては、リスク回避資産であるゴールドが買われるといった場合が多いです。
また為替市場においても、安全通貨であるとされる円が買われるというシーンが多く見られますね。
2008年のリーマンショック、2015年の中国の株式市場暴落に端を欲した「チャイナショック」では日本株も暴落し、多くの企業の株価は下落しました。
こういった株式市場の大きな下落局面というのは突然起こることも多いため、そういったリスクに備えオルタナティブ資産に目を向けておくということも重要になるでしょう。
具体的に個人投資家がオルタナティブ投資でリスク分散をする最も身近な方法としては、まずはゴールドを投資対象の一つとしてポートフォリオに組み込むことが挙げられます。
もしくはそれに準じたコモディティファンドへの投資も手段の一つになります。
実際にゴールドを現物で買うというわけではなく、商品先物やゴールドETFといった商品があるので、そういったものを購入しておくというイメージです。
またこれをオルタナティブ投資というと違和感がありますが、相場の大きな下落局面においては株式のポジションを円、つまりキャッシュに変えておくというのも重要な投資戦略です。
空売りという投資戦略を個人投資家がとるのは比較的難易度が高いので、相場が危ないと感じたらキャッシュポジションを増やしておくというのが大事だと言えるでしょう。
7、オルタナティブ投資をするなら、ヘッジファンドとおすすめ投資対象4選
ここからはオルタナティブ投資をするにあたって候補に挙がる「ヘッジファンド」およびおすすめの投資会社を見ていきましょう。
(1)Japan Act
Japan Actは日本国内に拠点を置く、独立系の投資会社で、独自の分析ににより企業価値を算出し、中長期のスパンで投資を行い、リターンを狙う投資会社です。
投資方針としては、本来の企業価値と市場価格に乖離が生じている割安銘柄に投資をし、経営陣との対話を重視した関係構築を図るとともに、企業価値向上に向けた提言を行っていきます。投資先企業の財務体質やガバナンスなどの経営改善に積極的に関与して、企業価値向上・株主価値向上を図り、リターンの最大化を目指します。
ご興味のある方は、サイトから資料請求をして個別相談を行うことも可能となっています。
(2)アストマックス株式会社
アストマックスは日本最初の商品投資顧問業者(CTA)です。
2012年にマネックスグループ子会社のマネックスオルタナティブインベストメンツを買収し、翌2013年には東証JASDAQへ上場を果たしています。
国内外の金融市場及び商品先物市場を中心とした運用業務に加え、ヘッジファンド、プライベートエクイティファンド等に投資を行うファンド・オブ・ファンズ業務を行い、
最近では再生可能エネルギーや電力取引関連事業への投資にも進出しています。
(3)マンインベストメンツ
公式サイト:マンインベストメンツ
マンインベストメンツはイギリス・ロンドンに本社を置く世界最古で最大級のヘッジファンドです。
AHLと呼ばれるトレーディング手法を主軸に置き、数学とコンピューターですべてを制御し、24時間絶えずトレーディングを行うCTA (Commodity Trading Advisor)戦略を採用しています。主力のAHLダイバーシファイドは1996年3月に投資を開始し、金融危機でもプラスのリターンを獲得しつつ、毎年安定したパフォーマンスをあげています。
(4)Domeyard LP
公式サイト:Domeyard LP
Domeyard LPはマサチューセッツ工科大学出身の学生たちによって設立されたヘッジファンドです。
AI(人工知能)を駆使し、現在1日平均10億ドルを売買するヘッジファンドです。
代表パートナーは若干26歳のクリスティーナ・チーという女性ファンドマネージャーです。
今世界でも非常に注目されている若手のAIヘッジファンドと言えるでしょう。
8、もっと深く学びたい人のために!おすすめの本3選
オルタナティブ投資をもっと詳しく学びたい方のために、この項目ではおすすめの書籍を紹介していきます。
(1)実践 オルタナティブ投資戦略
オルタナティブ投資とは何か、ということをより深く知れ、オルタナティブ投資戦略・投資ファンドの種類についてもかなり細かく理解できる一冊です。
(2)オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて
丁寧な用語解説があり、ヘッジファンドがどのように成長してきたのか、ということを知れるのがこの『オルタナティブ投資入門』です。
オルタナティブ投資を行わない方であっても、「ヘッジファンドがどのような投資プレーヤーなのか」ということを知れる良書です。
(3)ヘッジファンドで拡大する私募金融市場
オルタナティブ投資の中でもヘッジファンドに焦点を当てて書かれた一冊です。
実際にどのようなヘッジファンドがあるのか、日本でどのようにしてヘッジファンドが成長していくべきか、ということについて書かれています。
まとめ
ここまで「オルタナティブ投資」の特徴、そのメリットやデメリットについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。
オルタナティブ投資は日本でもかなり成長傾向にあり、その数・資産流入額というのも近年増加傾向にあるため、非常に注目の高い投資手法・金融商品です。
新しく生まれてきているものもあるだけに、その「信用性」「リスク・リターンのバランス」というのは、こういったものに投資をするにあたっては必ず熟考しなければならないポイントである、ということは頭に置いておきたいですね。
当記事などを参考に、購入したいと思ったものがあればより詳しく自分でリサーチしてみるということが重要なことだと考えられます。