個人投資家が株式投資で利益を出し続けるためには、アクティビストへの理解が欠かせません。
投資の世界におけるアクティビストとは、いわゆる「物言う株主」と呼ばれるものです。
ある一定の株式を保有し、積極的に企業の経営陣に提言を行い企業価値の向上を目指します。
アクティビストの動向を知っておくことは、個人投資家にとって不可欠です。彼らの行動が時に企業の株価に大きく影響するためです。
本記事では、アクティビストの活動や必要性、実例などを解説します。ぜひ参考にしてください。
1、アクティビストの活動
アクティビストは具体的にどのような活動をしているのでしょうか。
(1)株式の買い入れ
アクティビストとなるためには、企業の株式を一定数保有しなければなりません。
株式発行とはそもそも企業の資金調達方法のひとつです。
投資家は株式を買い入れることで企業に資金を投資することになります。
その見返りとして、投資家は以下の権利を得ることができます。
- 株を売る権利
- 配当金を得る権利
- 株主優待を得る権利
- 株主総会に参加する権利
個人投資家のように低資金で株式投資をするならば、上記1〜3の権利を狙うことが多いです。
一方で、アクティビストの多くはファンドを経営するなど個人投資家と比べて莫大な投資資金を保有しています。
その莫大な投資資金で株を大量に買い付けることで、上記4の株主総会での発言権が大きくなります。
アクティビストとなるためには、企業の株を多く買い入れ株式総会などで経営陣に対する発言権を大きくする必要があるのです。
そのため、投資先の企業の選定や投資額の判断もアクティビストの活動のひとつです。
(2)経営陣への提言
アクティビストの代表的な活動が企業の経営陣に対する提言です。
アクティビストも企業の経営陣と同様、企業価値を上げる(≒株価をあげる)ことを目的とするので双方の利害関係が一致するのです。
経営陣側としても有益な提言ならば受け入れることが多いです。
具体的には以下の3つに分類されます。
①事業戦略
投資先企業の業績が悪化している場合や、非効率的な経営をしている場合に事業戦略の提言を行います。
企業ごとに事業は異なりますから、提言内容はケースバイケースです。
多くの場合事業戦略に関する提言となります。
②資本構成
資本構成についても提言を行います。
具体的には、CF(キャッシュフロー)が悪い、またはPBR(株価純資産倍率)が1を割っている企業に対して自社株買いや配当金の引き下げを要求します。
自社株買いを行うことで発行済み株式数が減少し、既存の株主が持つ株価は相対的に上がる傾向があります。
そのメリットを狙い、アクティビストは資本構成の悪い企業に自社株買いを求めるのです。
(3)コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスが正常に機能していない企業に対し、取締役会の交代や経営陣の交代の要求をするなど、ガバナンスの改善をはかる提言となります。
コーポレートガバナンスとは、直訳すると「企業統治」のことで企業の収益力及び競争力の向上や不正行為の防止のために策定されます。
コーポレートガバナンスは「企業は株主のもの」という大前提のもとに策定されており、まさにアクティビストにとっての利益に直結する企業経営の仕組みです。
企業がどれくらいコーポレートガバナンスを遵守しているかで企業価値にも影響が出てきます。
アクティビストは株主の代表としてコーポレートガバナンスに関する提言を行う必要があるのです。
2、アクティビストの必要性
アクティビストの必要性について解説します。
アクティビストは時に「ハゲタカ」と揶揄されるなど企業にとっては悪影響を与えることもあります。
株価を上げるだけ上げておいて、利益が大きくなったところで売り逃げ自身のファンドの利益につなげようとするためです。
一方で、株主の立場からするとアクティビストは必要な存在です。
企業の利益と株主の利益は必ずしも一致しないためです。
例えば、企業の目指す利益は長期的な利益が基本です。
何年、何十年と会社を存続させることが経営者に求められているためです。
従業員を守り、社会のために事業を成長させていくことこそが企業の社会的役割です。
そのため、しばしば蓄積した利益を内部留保として外部に出さないような守りの経営を行うことがあります。
一方で、株主の立場からすると長期的というよりも短期的な利益を優先して得る必要があります。
アクティビストであれば自身のファンドを成長させるための資金になりますし、個人投資家であれば生活収入に直結するためです。
アクティビストは株主の立場から、企業の経営に提言することができる重要な役割を担っています。
企業と投資家の利益のバランスをとるためにもアクティビストは社会的に意義のある存在なのです。
3、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コード
アクティビストの活動の背景には「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」と呼ばれる2つの枠組みが存在します。
いずれも、アベノミクスの一環として導入され、経済活性化のためにアクティビストの活動を促すためのものです。
(1)スチュワードシップ・コードとは
直訳すると「受託者責任を果たすための行動規範」となります。
受託者とは、一般投資家から資金を集め運用する投資信託会社などの機関投資家を指します。
そこにはアクティビストも含まれます。
スチュワードシップ・コードは元々2012年に英国において英国企業財務報告評議会が策定したもので、日本国内においては2014年に日本版スチュワードシップ・コードが策定されました。
日本版スチュワードシップ・コードは企業の持続的な成長のために、幅広い機関投資家が企業との対話を行い、正しい受託者責任を果たすための原則を定めたものです。
企業価値の向上を狙い受益者の利益を最大化するためのもので、機関投資家は遵守することが求められています。
(2)コーポレートガバナンス・コードとは
本記事でも触れましたが、コーポレートガバナンスとは「企業統治」のことです。
転じて、コーポレートガバナンス・コードは企業の収益力及び競争力の向上や不正行為の防止のために策定された原則です。
こちらは企業に課せられる原則で、「会社は株主のもの」という原則に従って策定されています。
コーポレートガバナンス・コードを遵守することがアクティビストの利益に繋がるため、アクティビストが積極的に提言する要素のひとつです。
そもそも、日本でコーポレートガバナンス・コードが策定された理由の一つに「日本企業の国際競争力をつける」ことが挙げられます。
アメリカの企業は日本企業に比べては株主への配当が多い傾向があるなど、株主を大切にする経営を第一にしています。
結果として、それが世界一の経済大国に繋がるわけですからやはり企業の株主第一の考え方は重要なのです。
日本でもさらにコーポレートガバナンス・コードを重要視する動きが強まっていくでしょう。
アクティビストの活動もさらに活発になることが予想されます。
4、アクティビストによる成功例
実際にアクティビストが企業の経営に提言したケースを紹介します。
(1)パナホームの子会社化方針を巡ったヘッジファンドの提言
パナソニックによるパナホームの完全子会社化について、パナホームの発行済み株式数の5%を保有する香港ヘッジファンドの「オアシス」が買収価格の見直しをするように要求しました。
指摘を受けたパナソニックは買収方法を株式交換からTOB(株式公開買い付け)に変更し、要求に答えた形と相成りました。
(参考)
(2)ネスレに自社株買いを要求したヘッジファンドの提言
ネスレが米ヘッジファンドのサード・ポイントのから投資を受けた直後に自社株買いを発表しました。
サード・ポイントが自社株買いを求め、それに反応する形で2兆の自社株買いを決定したことになります。
ネスレ側は「年初に始めた事業見直しの結果」とし、サード・ポイントから受けた要求については言及しませんでした。
(参考)
5、今後の活動のゆくえ
アクティビストの活動は今後も活発になることが予見されています。
上述の通り、アベノミクスもアクティビストの活動を助長するような仕組みを策定しています。
また、今年5月には米の大手アクティビストがオリンパスの株式を5%取得するなど、海外からも日本市場が注目されています。
(参考)
結果として、日経平均株価は上昇し続けています。
さらなるアクティビストの参入と共に経済発展が見込まれます。
国内アクティビストの代表例として、Japan Actを紹介します。
Japan Actは、数少ない国内のアクティビストとして、活動しています。
「改革者として、日本市場にイノベーションを起こす」をビジョンに掲げており、、絶対収益の獲得だけではなく、社会的な役割も担うアクティビスト投資を行っている投資会社です。
主に日本国内に上場している株式を投資対象としており、中小株を狙ったバリュー/アクティビスト投資を専門としています。
今後国内株投資を狙う場合、Japan Actの動向に注目しておいて損はないでしょう。優秀なアクティビストの投資手法を個人の投資に反映できるチャンスもありそうです。
まとめ
アクティビストの社会的な意義や活動事例などを紹介しました。
まさに今テレビドラマでも注目されるくらい、国内の投資事情を語るにはずせないプレイヤーたちです。
個人投資家の方々もアクティビストの動向に日々注目し、自身の投資に役立てていきましょう。