ヘッジファンドについて調べていて、「Japan Act」という会社の名前を見かけることが増えてきました「改革者として、日本市場にイノベーションを起こす」というビジョンを掲げる投資会社で、アクティビスト投資を行っており、最近では日本経済新聞に登場したことでも話題となっています。
この記事では、ホームページで得られる情報のみならず、Japan Actの運用方法をまとめて紹介していきます。Japan Actに投資するメリットやデメリットもお伝えしていくので、投資するヘッジファンドを探している方は参考にしてみてください。
Japan Actの運用方法
Japan Actの運用手法をまとめると、次の表のようになります。投資手法や利回りといった項目は、他のヘッジファンド会社と比較するときに役立つので、わかりやすく表にしました。
投資手法 | アクティビスト投資 |
---|---|
目安の利回り | 2019年は30%弱 |
最低投資額 | 1,000万円 |
手数料 | 管理報酬と成功報酬 |
Japan Actの特徴は、アクティビスト投資で高い利益を上げていることだと言えるでしょう。それぞれの項目について、さらに詳しく見ていきます。
投資手法
Japan Actの投資手法は、本来の企業価値に対して株価が割安な状態になっているバリュー株に投資を行い、物言う株主として経営に提言を行うアクティビスト投資です。
併せて読みたい:バリュー株とは?見つけ方とバリュー株に投資すべきタイミング
アクティビストは株主になることで保有割合に応じた議決権が得られるので、経営陣に対して積極的に提言を行い、企業価値を向上させようとする投資家のことです。日本語では「物言う株主」と言われています。
従来の日本企業の株主といえば、配当金や株主優待を目的として株主になる人が多く、経営には積極的に関与していませんでした。「配当金や優待が減らなければ良い」といったスタンスで、まさに「物言わぬ株主」です。
企業側も、株主の目が甘いことを良いことに、ずさんな経営を行うことさえありました。
バブル期など景気が良い頃はそれでも良かったかもしれませんが、バブル崩壊以降はそうは行かず、企業体質を改善しない企業は生き残れない時代になってきました。アクティビスト投資は時代にマッチした投資方法で、経営の知識がある投資家が株主になって会社に意見を言うことで、企業体質を改善したり収益性を高めたりする狙いがあります。
Japan Actが行うアクティビスト投資も同様で、投資先の利益のために提言を行っています。将来的な利益のために厳しいことを指摘する、アドバイザーのようなイメージです。
利回り
Japan Actの2019年の利回りは30パーセント弱とのことです。株式投資の市場平均が3パーセントから7パーセント程度なので、それに比べて非常に高い利益が出ていることがわかります。
ただし、毎年30パーセントもの利回りが保証されているわけではありません。投資は必ず上手く行くと決まっているものではないので、年によって利回りは変わると推測されます。
最低投資額
Japan Actへの投資は、原則として1,000万円から受け付けられているとのことです。国内のヘッジファンドは1,000万円から申し込める会社が多いので、標準的な設定と言えるでしょう。
「1,000万円も出せない」という方でも、場合によっては出資を受け付けているそうです。とはいえ、「1万円だけ投資したいんだけど……」といったあまりに少額の受付は行っていないと考えられますが、数百万円の投資ができ段階的に増やして1,000万円規模の運用をしたいと考えている方は、Japan Actに問い合わせをしてみても良いでしょう。詳しくは申し込み前の面談で確認してみてください。
手数料
手数料は、「管理報酬」と「成功報酬」の2種類です。管理報酬は3パーセント程度と聞きましたが、成功報酬は申し込みする前の面談のときに最新情報を確認するようにしてください。
投資信託と比べると手数料が高いように感じられるかもしれませんが、ヘッジファンド業界の中では標準的か少し安いくらいと言えます。
Japan Actのアクティビスト投資の実績
Japan Actは、株式会社サンエー化研や昭和パックス株式会社などの株主になっています。
サンエー化研に対して2020年6月の株主総会で行った提案がリリースされているため、どんな内容だったのか要約して紹介していきましょう。いずれもサンエー化研の低ROE・低PBRを改善し、企業価値を向上させるための提案だと読み取れます。
政策株式の売却
一つめの提案内容は、現行の定款に政策保有株式の売却の条文を新設することです。
政策保有株式とは、企業が取引先との良い関係を維持したり、他社からの買収から身を守ったりするために保有している株式のことです。利益を追求しているのではなく、経営戦略上の目的で取引先の株式をお互いに保有していることが多いため、「持ち合い株式」と呼ばれることもあります。
昔の日本企業だと政策保有株式を持ち合うことは普通でしたが、現代では悪しき習慣とされ、特に海外の投資家からは厳しい目で見られます。
本来、株主は出資者として企業の経営を厳しく見なければならないのに、関係維持のための持ち合い株式を保有するので、政策保有株式はお互いの経営を甘やかす「物言わぬ株主」を増やす原因となります。よって、企業のガバナンスを働きにくくするなどの悪影響が懸念されるため、近年は積極的に売却していく方針に変わってきているのです。
Japan Actが提案を行ったのも、日本企業特有の悪しき習慣を改善するべきだと考えたからでしょう。相互に大量の株式を持ち合っている関係会社に在籍していたり、過去に在籍していた人物が社外役員を努めたとしても、独立性を持った役員人事と見なすのは難しいからです。
また、過剰な株式持ち合いは一般の株主を軽視する態度とも受け取れるので、市場での株式の評価が低くなってしまいます。このように、Japan Actは物言う株主として、サンエー化研に対して政策保有株式の売却を提案しています。
自己株式の取得
2つめの提案内容は、自己株式の取得です。総額6億円の取得価額を限度として、1年以内に100万株を取得することを提案しています。
自社株買いを行うと、企業は自分が発行した株式を自分で買い戻すことになります。買い戻した株式を消却することで発行済み株式の数を減らすことができるので、1株当たりの利益や1株あたりの資産価値を向上させることができます。
その結果、PERやPBRといった指標が改善されるため、株価を上げる目的で主に株主還元策として行われることが多いです。
PERは株価収益率のことで、株価が1株あたりの利益の何倍になっているかを表した指標です。また、PBRは株価純資産倍率のことで、株価が1株あたりの純資産の何倍になっているかを表した指標です。
いずれも発行済み株式数が少なくなると数値が改善します。
Japan Actの提案時、サンエー化研のPBRは0.3倍を下回る程割安状態にあり、自社株買いを行うには絶好のタイミングだったことが推測されます。このようにJapan Actの株主提案や補足資料を確認すると、物言う株主として積極的に活動していることが伺えます。
Japan Actに投資するメリット
Japan Actがアクティビストとしてどのような活動をしているかを知ったところで、ここからはJapan Actに投資するメリット・デメリットについて考えていましょう。投資判断に直接関わることなので、メリットだけではなく、デメリットも理解した上で投資するべきです。
まずは、メリットからお伝えしていきます。Japan Actに投資するメリットとしては、高い収益性や社会貢献が挙げられます。
高い収益が期待できる
Japan Actへの投資は、高い収益が期待できると予想できます。理由は、割安な状態の株式を買っているので、さらなる値下がり幅は限定的と考えられるからです。
さらに、サンエー化研の事例でも見たように、Japan Act自ら株価を向上させるために動いています。企業の経営能力が良くなって収益性が改善されれば、株価の上昇や配当金の増加などが期待できます。
すると、Japan Actに出資した投資家の利益も増えることが予想されるので、今後も高い収益が期待できるはずです。ただし、投資である以上は元本割れのリスクもあるので、理解した上で投資をしましょう。
投資で社会貢献ができる
Japan Actは企業の問題点を見つけ、それを指摘することをビジネスにしています。既存の中小企業に対してプロの立場からアドバイスを行っているため、経営難の会社を救う活動とも言い換えられると思います。
つまり、Japan Actに投資する投資家も、間接的に社会貢献できると言えるでしょう。長期的な視野を持てば、日本の経済を支える中小企業を支援することは、日本の経済を支援することにもつながります。
Japan Actに投資するデメリット
次は、Japan Actに投資するデメリットを考えてみましょう。デメリットとしては、投資先が国内株に偏ることや口コミが少なく評判がわかりにくいことが挙げられます。これらのデメリットも理解した上で、投資するかどうか考えてみてください。
投資先が国内株に偏る
Japan Actは国内のバリュー株に投資をするため、投資家の資産は国内株式に偏ることになります。分散投資の観点から見ればデメリットと言えるので、投資家自身でリスクヘッジして対策をした方が良いでしょう。
資産が国内株式に偏ると、東日本大震災のように大きな災害が起きたときには、業績に関係なく相場全体が一時的に下落していくことも予想されるため、資産が減ってしまうことも考えられます。このような事態を防ぐためにも、債券や金に投資したり、海外に投資できる投資信託を買ったりして、分散投資をして備えておきましょう。
口コミが少ない
中小規模のヘッジファンドは実際に運用している投資家の人数が少ないので、ネット上の口コミも少ないです。Japan Actも同様で、口コミが少ないのでネットで評判を知ることができません。経験者の声を聞けないので、投資するべきかどうか不安に感じる方もいるでしょう。
これに関しては、申し込みをする前の面談で解決するしかありません。利回りや手数料を始め、気になることがあれば聞いてみることをおすすめします。
また、公式ホームページは充実しているので、読めば解決する疑問もあるでしょう。投資方針やJapan Actが何を日本社会の課題だと感じているかなどがわかるので、運用方法のイメージが湧くのではないでしょうか。
怪しいイメージもある合同会社の形態
Japan Actも多くの国内ヘッジファンド会社と同様に、「合同会社」という種類の会社です。耳なじみのある「株式会社」と比べると聞き慣れない言葉で、合同会社というものに怪しいイメージを持つ方もいるかもしれませんね。
合同会社とは、株式会社などと同様に日本における会社形態のひとつです。
株式会社の場合、出資者=株主となりますが、合同会社の場合は出資者=出資社員と呼ばれます。
「社員」といっても雇用されている従業員とは異なり、株主とほぼ同等の意味合いになります。
また、株主は「有限責任社員」でありと、責任の範囲は「有限責任」となるため、購入した株の価額以上の支払義務は生じません。同じように、合同会社における出資社員も「有限責任社員」となります。
似たような会社形態に「合名会社」や「合資会社」などがあり、この二つの会社形態の場合には、出資者=無限責任社員となり、会社の債務について無制限に責任を負うかたちとなります。
Japan Actや他の国内ヘッジファンドが採用している「合同会社」では、「有限責任社員」となりますので、損失の範囲は最大でも出資価額までに限定されることになります。
合同会社のメリットは、設立するための費用が株式会社よりも安いことなどです。コスト削減はヘッジファンドにとっても重要課題なので、合同会社はヘッジファンドらしい合理的な選択と言えるのでしょう。
また、合同会社では社員権の販売を通じて出資契約をすることで資金調達を可能にしています。
通常、一般的なファンドを運営する際には、集めた資金を運用するために「投資運用業」というライセンスと、不特定多数の顧客に対し商品を販売する「第二種金融商品取引業」というライセンスが必要です。
この2種類のライセンスを保有し、かつ一般的に言われるファンドという形態を維持するためには膨大な費用が必要となります。
それに対し合同会社は「社員権の自己募集」というかたちで、特定の富裕層向けに、自社による社員権販売で資金調達を合法的に行い、自社の利益のためにその資金を活用します。
この形態は、金融商品に該当するものではなく、金融庁への登録義務が生じないものなのです。
まとめると、「合同会社=怪しい」と言われる要因は、会社形態やその他法的な部分を理解していないことが主な要因と推測されます。合同会社か株式会社かで投資先を決めるのではなく、投資戦略やリスクを理解して投資先を決めるように心掛けましょう。
まとめ
Japan Actという投資会社について解説してきました。Japan Actは国内の株式に投資し、物言う株主として企業に積極的に提言を行う「アクティビスト投資」を行っています。収益率が高いため、利回りが高いヘッジファンドを探している方におすすめです。
最低申込額は原則として1,000万円なので、誰でも気軽に始められるとは言えないのですが、この金額はヘッジファンド業界では標準的です。資金に余裕がある方は、Japan Actに問い合わせをしてみてはいかがでしょうか?