
ヘッジファンドと投資信託は、どちらも投資会社に在籍するプロにお金を預け、運用してもらう商品です。この共通点があるため、どう違う商品なのかがややわかりにくいと感じる方もいるでしょう。
この記事では両者の違いを解説し、ヘッジファンドが向いている人・投資信託が向いている人の特徴を紹介しています。自分にはどちらの商品が合っているかがわかるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ヘッジファンドと投資信託を比較して違いをチェック
ヘッジファンドと投資信託には以下の違いがあります。表で違いを整理した後、それぞれの項目について詳しく解説していきましょう。
比較項目 | ヘッジファンド | 投資信託 |
---|---|---|
収益目標 | 絶対収益 | 相対収益 |
投資先 | 株式、債券などに加え、先物取引やオプション取引など専門的な商品 | 株式、債券、不動産など一般的な商品 |
最低投資額 | 通常1,000万円から | 100円からでも可能 |
募集形式 | 私募 | 公募 |
コスト | 管理報酬、成功報酬 | 購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額 |
解約制限 | 解約時期に制限あり | 原則、解約は自由 |
収益目標
ヘッジファンドは絶対収益、投資信託は相対収益を収益目標にしています。この違いは、運用利益の大きさにつながる重要なポイントです。
先に、投資信託が掲げる「相対収益」から説明していきます。
相対収益とは、市場平均と同じか、それより良い運用成績を目指すという目標です。市場平均がプラスなら同じくらいのプラスかそれ以上を目指し、平均がマイナスなら同じくらいのマイナスか、それよりはやや良い成績を目指します。
市場平均がマイナスのとき、投資信託の収益もマイナスになる可能性があるという点ではデメリットに感じられますが、致し方ないと言えます。投資できる商品に限りがありますし、市場全体がマイナスのときに独り勝ちすることはとても難しいのです。
このデメリットを改善したのが、ヘッジファンドが掲げる「絶対収益」です。
絶対収益とは、市場平均がプラスでもマイナスでも、常にプラスの運用成績を目指す目標です。さまざまな商品を組み合わせ、景気が良いときも悪いときもプラスの収益を上げられるように工夫しているのです。
投資にはリスクがあるので、絶対収益と言えども失敗してマイナスになることはありますが、多くのヘッジファンドが絶対収益アプローチで大きな利益を出しています。市場平均がマイナスなときでもプラスの成績を出し、市場平均がプラスのときは平均を上回る収益が期待できます。
投資先
一般的な投資信託は、主に株式、債券、不動産に投資しています。個人投資家でも手が届く、一般的な商品が中心です。
一方のヘッジファンドは、株式や債券などに加え、先物取引やオプション取引など専門的な商品も組み合わせて投資をしています。
投資先となる商品の違いは、両者の収益目標の違いに由来します。
株式や債券といった一般的な商品だと市場平均並みの運用成績は期待できますが、大きく上回ることは期待しにくいです。そのため投資信託の運用には十分ですが、ヘッジファンドはこれだけでは物足りません。
そこで、ヘッジファンドでは先物取引やオプション取引など個人投資家にはあまり馴染みがない商品でも運用しています。こうすることで、絶対収益の目標を達成しようとしています。
最低投資額
国内のヘッジファンドの場合、最低投資額は1,000万円に設定されていることが多いです。会社によって異なるのですが、100万円や500万円から始められることもあります。
一方の投資信託の場合、1,000円や1万円から投資できるのが一般的です。一部のインターネット証券会社の場合、100円からでも投資できる設定になっていることもあります。
最低投資額の違いは、投資家の商品選びに大きく影響します。自分が投資に使える資金を把握すれば、ヘッジファンドと投資信託のどちらに投資できるかは自然と決まってしまいます。
募集形式
投資信託は公募、ヘッジファンドは私募という形式で募集されます。
投資信託の「公募」とは、大勢の投資家からの申し込みを受け付ける方式です。銀行や証券会社など大手でたくさんの顧客がいる会社を通じて申し込みできるのは、投資信託が公募形式で投資家を募集しているからです。
投資信託が100円といった少額で始められるのも、募集形式と関係があります。大勢の投資家から資金を集められるため、1人あたりの投資額が少額でも問題ないのです。
一方のヘッジファンドの「私募」とは、少数の投資家から申し込みを受け付ける方式です。ヘッジファンドは、一般的には銀行や証券会社は窓口になりません。ヘッジファンド会社に直接申し込みをするのが一般的です。
数十人の投資家を集めたいため、大手の金融機関を使って大々的に募集するスタイルではないのです。
ヘッジファンドが1,000万円とまとまった資金を最低投資額としているのも、私募形式ゆえの特徴です。数十人の投資家から申し込みを受け付けるのですが、1人あたりの投資額が100円などと少なかったら、自由に運用できないですよね。
したがって、1人あたりの投資額が高めに設定されています。
コスト
ヘッジファンドと投資信託は、コストの内訳も異なります。
ヘッジファンドの場合、主に管理報酬、成功報酬がコストとしてかかります。他に契約時や解約時の手数料が別途で設けられていることもあり、会社によって手数料の仕組みがかなり異なるので、申し込み前に必ず確認しましょう。
管理報酬とは、預かり資産に対してかかる手数料のことで、ヘッジファンドの契約中はずっと負担するコストです。年率3%前後に設定されていますが、預かり資産全体に対してかかるので、大きなコストになりがちです。
成功報酬とは、ヘッジファンドがプラスの利益を出したときや、目標の利益を上回ったときなどに、ヘッジファンド会社に追加で支払う報酬です。これは「利益の〇%」と決められていることが多いです。
なお、利益を生まなければ成功報酬は支払われません。ヘッジファンド会社の収入源や社員のボーナスにもなるので、ヘッジファンド会社が利益を追求するモチベーションにもなる報酬と言えます。
一方、投資信託のコストは主に購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額です。さらに解約時手数料がかかる場合があるのですが、最近はこれが0円に設定されている商品が多いので、ここでは割愛します。
購入時手数料は、投資信託を購入するときに支払うコストです。最近は購入時手数料が無料の商品も多いので、コスト削減のためにも積極的に利用すると良いでしょう。
信託報酬は、預かり資産に対してかかる手数料で、ヘッジファンドにおける管理報酬に匹敵します。商品によって異なるのですが、一般的には1%未満、高くても2%以下に設定されていることが多いです。
最後の信託財産留保額は、解約時に負担するコストです。実質的には、解約時手数料のようなもの、と捉えておいて良いでしょう。どのようなコストなのかというと、解約したら投資会社は株式や債券を売って現金にして投資家に返さなければならないので、換金にかかるコストを解約する投資家に負担してもらおうというコストです。
以上のとおり、手数料の設定もヘッジファンドと投資信託とで異なります。一般的には、投資信託の方が低コストに設定されている傾向があります。
解約制限
解約したいと思ったとき、自由に解約できるかどうかも、ヘッジファンドと投資信託とで異なります。
投資信託は基本的に自由なタイミングで解約することができます。解約を申し込んでから1週間程度で、現金として入金されます。
ヘッジファンドの場合、会社によって異なりますが一定の解約制限があることが多いです。例えば、契約から1年は解約できない、解約できるのは3ヶ月ごとの決まった日のみ、などの制約です。
なぜ解約制限があるのかというと、ヘッジファンドは私募で投資家の人数が少ないので、自由なタイミングで解約されると運用に支障をきたすからです。1人が解約するだけで大きな資産の換金と流出につながるので、頻繁に起こると運用どころではなくなってしまいます。
よって、ヘッジファンドには解約制限があることが多いです。詳しくは会社によって異なるので、申し込みの前に必ず確認しましょう。
ヘッジファンドが向いている人
ヘッジファンドと投資信託の違いについて見てきました。ここからは、ご自分がどちらに向いているのかを考えていきましょう。
まずは、ヘッジファンドに向いている人の特徴を解説していきます。一つでも当てはまるポイントがあった方は、ヘッジファンドへの投資を検討してみてはいかがでしょうか。
- 1,000万円以上を投資できる人
- 高い収益を狙いたい人
- 長期間お金を預けておきたい人
1,000万円以上を投資できる人
ヘッジファンドの最低投資額は1,000万円のことが多いので、まずこれだけの資金を投資に回せるかどうかがポイントです。生活に必要な資金などを除き、リスクのある投資に回して良いお金が1,000万円以上ある人は、ヘッジファンドへの投資が候補に挙がるでしょう。
そこまでの資金がない方も、500万円や100万円から投資できる会社もあるので、探してみるのが良いでしょう。数百万円くらいのまとまった資金を投資できる方には、ヘッジファンドをおすすめします。
高い収益を狙いたい人
年率10%以上の高い収益を狙いたい人には、ヘッジファンドがおすすめです。
ヘッジファンドは絶対収益、投資信託は相対収益と、収益目標に違いがあることを解説しました。この違いのため、ヘッジファンドの方が高い収益を上げられる傾向にあります。
投資信託だと利回りは1パーセントから3パーセントほどですが、ヘッジファンドなら10パーセント以上の利回りも狙えます。比較のため他の投資方法の利回りも挙げると、株式投資が3パーセントから7パーセント程度、不動産投資が5パーセント前後です。
他の方法と比べても、ヘッジファンドはかなりの高収益を狙うことができます。よって、高利回りな投資方法を探している方には、ヘッジファンドがおすすめです。
長期間お金を預けておきたい人
ヘッジファンドは解約に一定の制限があるので、長期投資をしたい方におすすめです。すぐに資金を引き出す可能性がなさそうな方は、検討してみてはいかがでしょうか?
例えば、サラリーマンで現役の間に老後のための資金を用意したい方などです。定年退職まで何年もあり、それまで資金を預けておける方などが当てはまるでしょう。
投資信託が向いている人
続いて、投資信託が向いている人の特徴を解説していきます。1つでも当てはまった方は、投資信託への投資を検討してみましょう。
- 投資資金が100円以上の人
- 銀行預金より少し利回りを上げたい人
- いつでも解約できるようにしておきたい人
投資資金が100円以上の人
少額で投資を始めてみたい人には、投資信託がおすすめです。インターネット証券会社なら100円でも始められるので、投資できる資金がない人でも試してみることができます。
投資は元本割れのリスクがあるので、生活に必要なお金などを投じてはいけません。もし貯金が1,000万円ある人でも、そのほとんどが生活に必要だと考えるなら、少額で投資を始めた方が良いでしょう。
銀行預金より少し利回りを上げたい人
投資信託はヘッジファンドに比べて利回りが低めなのですが、銀行預金よりはずっと高いです。預金よりも少し高い利回りが狙えればOKという人には、気軽に投資できる投資信託をおすすめします。
銀行預金の金利は、高金利なネット銀行の定期預金でも0.2パーセント程度です。投資信託なら1パーセントから3パーセント程度の利回りが狙えるので、少し利回りを上げたい人にぴったりです。
ただし、銀行預金は元本保証であるのに対し、投資信託は元本保証ではありません。リスクを取って高い利回りを求めるのが投資なので、元本割れする可能性があることに納得できる場合のみ、投資をしましょう。
いつでも解約できるようにしておきたい人
投資信託は解約の自由度がかなり高いので、いつでも解約して換金できるようにしておきたい人におすすめです。
例えば、ボーナスでまとまった収入が入ってきたけど、何に使うか決めていないからとりあえず運用しておきたいといったニーズにぴったりです。旅行や趣味のために使ったり、住宅ローンの頭金に使ったりするかもしれませんが、そのようなイベントがいつ訪れるかわからないとき、解約制限のない投資信託で運用をしておくのもアリです。
ヘッジファンド型投資信託とは?
ヘッジファンドと投資信託の違いを紹介してきましたが、両者の良いところ取りをしたような「ヘッジファンド型投資信託」という商品が登場し始めています。まだまだ種類が少なく、ヘッジファンドや投資信託と違って選び放題というわけではないのですが、人気が出れば主流になっていくかもしれません。
そこで、最後にヘッジファンド型投資信託について紹介していきます。ヘッジファンドと投資信託のどちらに投資するべきか迷っている方は、ヘッジファンド型投資信託にしても良いかもしれませんね。
少額でヘッジファンドの運用ができる
ヘッジファンド型投資信託は公募型の投資信託ですが、ヘッジファンドの運用方法を取り入れたものです。投資信託なのに、絶対収益を目標としている商品です。
最低投資額は100万円や300万円に設定されていることが多く、ヘッジファンドよりは少額と言えます。一般的な投資信託よりははるかに高額ですが、ヘッジファンドよりはハードルが下がるでしょう。
ヘッジファンドを試したい人におすすめ
ヘッジファンドのネックになるのが、最低投資額の高さや解約制限だと思います。ヘッジファンド型投資信託はこれらの制限が少し緩和されているので、ヘッジファンドを試してみたい方におすすめです。
最低投資額は前の項目で解説したとおりです。解約制限は一般的な投資信託と同様で、解約申し込みから1週間程度で換金できるケースが多いです。ヘッジファンドの解約制限よりもかなり緩いと言えます。
まとめ
ヘッジファンドと投資信託の違いを中心に解説してきました。最も大きな違いは、最低投資額の大きさでしょう。
ヘッジファンドの方が高い利回りを狙えるので、1,000万円などまとまった資金を投資できる方には、ヘッジファンドがおすすめです。そこまでの資金がない方は、投資信託を利用してお金を増やしていき、貯まったらヘッジファンドに申し込むといったやり方が考えられます。
数多くの投資先・数多くのヘッジファンドから絞ることは大変なことかと思います。
下記の記事ではおすすめの運用先や手法をまとめていますので是非あわせてチェックしてみてください。
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