アクティビストファンドの重要な役割と日本のアクティビストファンド5選

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近年名を聞くことが多くなった「アクティビスト」というワード。

大きな資金力を持ち、企業に投資をすることでリターンを狙う、いわゆる「ヘッジファンド」の一つですが、直近日本企業への投資機会が増えていることから話題となっています。

我々個人投資家としても、投資企業に影響を与えうるであろうアクティビストの存在・動向をチェックしておかないわけにはいきません。

そこで今回は、「アクティビストとはそもそもどんなファンドなのか」ということから始め、その活動内容や日本におけるアクティビストの活動についてチェックしていきましょう。

1、アクティビストとは

アクティビスト(英:Activist)―とは、直訳すると「活動家」という意味ですが、こと金融用語においては「物言う株主」、すなわち特定企業の株式を一定量保有したうえで議決権行使や株主提案を行い経営に関与し、企業価値の向上を目指すファンド(投資家)のことを指します。

自らが投資をしている企業に対し株主還元策などの提案を行うことで、その会社で留保されている現金を流動化させ投資家への還元を行うこと(自らのリターンを促すこと)などを一つの目的としています。

その目的は大枠で捉えると「企業価値の向上」とひとくくりにできるのですが、その詳細はファンドによって様々で「企業に対し敵対的な姿勢を見せながら経営権に強く口出ししていく」「友好的に企業とコミュニケーションをとり中長期的な目線で価値向上を目指していく」等と方針が異なっています。

後ほど詳しく紹介しますが、日本で最も代表的かつ有名なアクティビストとして挙げられるのは「村上ファンド」(現在は解散)でしょう。

村上世彰氏によって設立された、このアクティビストファンド運用額が一時約4,400億円を越える資産規模となり、かつその株主提案が当時斬新だったことからメディアでも大きく取り上げられました。

前述したようにアクティビストはあくまでもヘッジファンドの一つに過ぎず、「投資リターンを出す」ということが資産運用を行う理由の一つにあることは間違いありません。

村上ファンドは株価が業績に対し割安に放置されている銘柄を購入する、いわゆる「バリュー投資」を軸にした投資スタイルをとっており、そのうえで企業価値向上を狙っていくという施策をとっていたファンドでした。

アクティビスト、というと怪訝な目で見られがちなこともあるのですが、彼らの多くは村上ファンドのように基本的な投資指針をとっているに過ぎません。

2、アクティビストの主な4つの活動テーマ

さて、アクティビストの簡単な概要について見てきたところで、この項目では更に詳しく「アクティビストがどのようなテーマを持って活動を行っているのか」ということについてチェックしていきます。

アクティビストの主な活動テーマとなっているのは4つ、「企業資産(資本)への関与」「間接的な事業のマネジメント」「買収・売却への関与」「ガバナンスの改革」です。

中でも4つ目の「ガバナンスの改革」は多くのアクティビストファンドで掲げられる活動テーマであり、「投資を通じてコーポレート・ガバナンス(企業統治)を改善していく」ということが大きな狙いとなっています。

(1)「企業資産(資本)への関与」

最初に「企業資産(資本)への関与」ですが、こちらは先に少し触れたように「企業の留保資金・余剰資金を流動化させ株主還元策(配当金の引き上げや自社株買い等)を行わせる」というのが主な策略です。

日本においても「設備投資を行わず有事に備えて内部留保を貯め込む」という企業は少なくありません。

中でも経営基盤が健全かつ安定した利益を上げているのにも関わらず所持資本を使っていない会社がアクティビストの投資対象の一つになると言えるでしょう。

この企業資産への関与は4つの活動テーマの中でも株主リターンの向上に最も直接的に繋がっている戦略の一つで、「配当金を上げることで投資リターンを向上させる」「自社株買いを行わせることで株式の希薄化を行い、既存株式の価値を向上させる(多くの場合、自社株買いは株価上昇に繋がることが多い)」といった手段が主となっています。

(2)「間接的な事業のマネジメント」

次に主要テーマに挙げられるのが「間接的な事業のマネジメント」です。

株式を大量保有し経営権に大きな影響を及ぼす、というのはかつてあのウォーレン・バフェットも行ったやり方の一つです。

業績を向上させるための事業マネジメントへの関与や利益を上げられていない事業を売却に促す、といったことが主たる内容となっています。

こういった書き方をすると「乗っ取り経営」「敵対的コミュニケーション」のように見えるのですが、あくまでも多くのファンドは「間接的な提案」を企業に行うというケースが多くなっています。

(3)「買収・売却への関与」

3つ目の主要テーマである「買収・売却への関与」もアクティビストが話題となる原因の一つと言えるでしょう。

最近では『ハゲタカ』という企業買収を巡ったハゲタカファンドのドラマが注目されていますが、ハゲタカファンドが「敵対的買収」「短期利益を狙う」「投機的」な投資スタンスを持つのに対し、アクティビストファンドの場合は「中長期的な企業価値の向上」の目線を持った施策を打ち出すことが多くなっています。

直近の具体的な事例でいうと2018年1月に村上世彰氏が東栄リーファライン <9133> のMBO(経営陣が自ら会社の事業を所有者から買い取る買収策)阻止を行ったり、同年5月に米アクティビスト株主であるカール・アイカーン氏が富士フィルムHD <4901>の買収計画にNOを突き付けたりするなどの動きが見られています。

(4)「ガバナンスの改革」

最後に見ていくのが「ガバナンスの改革」です。

アクティビストの代名詞といっても過言ではないこのテーマ、村上世彰氏の実の娘である村上絢氏も声を大にして「コーポレートガバナンスの改革」を叫んでいます。

日本語で「企業統治」と呼ばれるコーポレートガバナンスは「企業の経営が健全かつ分かりやすく行われているか」「将来の企業価値取得のために正しい経営が行われているか」といったことを表す言葉で、アクティビストたちはそれに関し経営陣の変更や社外取締役の設置、IR機能の改善などを策の一つとして提案しています。

繰り返しとなりますが、アクティビストを考えていくうえで非常に重要となってくるワードが「ガバナンス」で、今後アクティビストの活動を追っていくうえではこの言葉を意識してみると良いでしょう。

3、アクティビスト活動はなぜ活発化したのか?

アクティビストの活動が話題になりつつある、活発化している背景にはいくつかの要因があります。

(1)投資環境の変化

まず挙げられるのが「投資環境の変化」で、日本でも取り入れられるようになったコーポレートガバナンスコード、そしてスチュワードシップコードの存在がアクティビストの活動を後押ししていることは間違いないでしょう。

前者のコーポレートガバナンスコード(企業統治指針)は日本で2015年6月から導入された制度で、健全性・公平性を持った企業経営を通して業績向上や社会還元を行うことを企業に義務付けたものです。

対してスチュワードシップコードは機関投資家の行動規範について言及しているもので、コーポレートガバナンスと相乗的な企業価値向上を狙って作られた制度だと言うことができるでしょう。

ガバナンス改善の環境が整いはじめたことで企業もアクティビストらの活動を肯定化せざるを得なくなってきており、健全な企業経営についての風向きは徐々に、しかし着実に変わってきていると言えます。

(2)世界的な金融緩和

また次いでアクティビストの活動活発化の原因に考えられるのが「世界的な金融緩和」です。2008年のリーマンショックを発端にグローバルに行われた金融緩和がファンドの投資機会を増やしたと考えられます。

こういった投資環境の変化、各国の金融政策がアクティビストの活動に追い風を吹かせている、というのが主だった構図です。

4、日本のアクティビスト5選とその活動内容

ここまでアクティビストの活動内容やその活動背景について確認してきましたが、実際に日本で存在する(存在した)アクティビストファンドはどういった特徴を持っているのでしょうか。

今回は5つのアクティビストを挙げ、その活動や特徴について見ていきます。

(1)村上ファンド(現在は解散)

先にも書いたように、日本で最も有名なアクティビストとして名が出るのが村上ファンドです。

2006年、ニッポン放送株のインサイダー取引疑惑で表舞台からは一度名を消し解散を行ったものの、その後も当時の村上ファンドのメンバーや村上世彰氏によるアクティビストとしての活動が多く見られます。

2015年以降は黒田電気 <7517>、エクセル <7591>、三信電気 <8610>といった株式の大量保有が話題となりました。

(2)エフィッシモ・キャピタル・マネージメント

村上ファンドOBによって作られたアクティビストファンドであるエフィッシモ・キャピタル・マネージメント。

東芝の筆頭株主として名が挙がったのが有名なのではないでしょうか。

代表的な投資先としては川崎汽船 <9107>、リコー <7752>、ヤマダ電機 <9831>があります。

(3)ストラテジックキャピタル

こちらも村上ファンド出身である丸木強氏によって設立されたアクティビストファンドです。

保有銘柄としては京阪神ビルディング <8818>、極東貿易 <8093>、内田洋行(8057)などがあります。

2017年の年間収益は20%とされており、投資パフォーマンスを高めつつもガバナンス向上に取り組んでいる、というのがやはり大きな特徴です。

(4)スパークス・グループ

スパークス・グループ

スパークスは上場もしている投資顧問会社で、スパークス・グループ傘下のスパークス・アセット・マネジメントがアクティビストとして知られています。

オフィシャルHPを見てもわかる通り、戦略別に資産を振り分けており着実なパフォーマンス向上を目指しています。

(5)Japan Act

Japan Act

 

「改革者として、日本市場にイノベーションを起こす」をビジョンに掲げ、上場企業とそれらを取り巻く環境を改革することを理念に掲げている、独立系投資会社のアクティビストです。

企業HPのニュースを見ても分かる通り、投資先企業に対し余剰金を株主還元に充てる提案やガバナンス強化に向けた積極的な活動を行っています。代表的な保有銘柄はサンエー化研 <4234>になります。

まとめ

ここまでアクティビストの主な特徴や活動テーマ、そして今現在日本で活動を行うアクティビストファンドについて見てきました。

コーポレートガバナンスの向上はこれからも日本企業がより力を入れて取り組んでいくべき分野であるため、それに伴ってアクティビストファンドの存在価値も段々と上がっていくことでしょう。

アクティビストファンドの投資先に選ばれることによって株価が上がる企業が少なくないように、彼らの行動はマーケットにとって重要なトピックスであることは間違いありません。

ガバナンス、バリュー投資といったメジャーなワードとともに、アクティビストの動きを追っていきたいところです。

 

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