ホワイトペーパーとは?アクティビストの経営改革の提案は受け入れられるのか?

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もの言う株主ともいわれるアクティビストは、投資先企業にさまざまな提案や要求を行い、株主利益の最大化を目的として活動を行っています。

経営陣に対して提案する際、ホワイトペーパーといわれる書面を提出して行う方法がよく用いられます。

この記事では、ホワイトペーパーとはどういったものなのか、それによって実際にどのような提案が行われているのかについて解説していきます。

1、ホワイトペーパーとは

ホワイトペーパー(白書)とは、もともと英国政府が発行した公式外交報告書の表紙が白かったことに由来する言葉で、一般的には政府機関などが公表する公文書などを指す言葉として使われています。

日本では「白書」とよばれ、国民生活白書や警察白書など中央省庁が発行する刊行物などの名称として用いられています。

それに加えホワイトペーパーには「なにかを議論するための文書」を指す言葉としても用いられています。

アクティビストの世界ではそこから派生して、経営陣に対して経営改革などを提案する文書(経営改善提案書)のことをホワイトペーパーと言います。

アクティビストがホワイトペーパーを提出する目的は、増配や自社株買いといった株主還元の要求から、ビジネスモデルの変更や事業再編といった抜本的な経営改革提案まで多岐に渡ります。

ホワイトペーパーには提案の正当性や合理性について経営陣を納得させ、受け入れてもらうといった役割があり、その内容としては詳細な事業分析なども含まれます。

そのため事業再編などを目的とするケースでは、数百ページに及ぶこともあります。

実際にはアクティビストによる提案や要求は水面下で行われることが多く、ホワイトペーパーの内容が公表されないこともありますが、経営陣から回答が得られない場合などには広く一般に公表することによって経営陣へプレッシャーを与える方法としても利用されます。

2、ホワイトペーパーによる経営革新の提案の事例

(1)トライアン・ファンドの成功事例(対H.J.ハインツ)

2006年3月、著名アクティビスト・ネルソン・ペルツ氏の率いるトライアン・ファンド(以下、トライアン)は、大手ケチャップメーカー・H.J.ハインツ(以下、ハインツ社)に対し、5.4%の持分を保有した上で自らを含む5名の取締役候補者を指名して委任状勧誘を行う意志をハインツ社へ伝えました。

この背景には、現経営陣が就任した1998年4月以降、高いブランド力を持つハインツ社の株価パフォーマンスが、市場や同業他社に比べて低いこと、事業改革や資本配分に失敗し業績が悪化していたことがありました。

トライアンは、そういった状況に対して、コストカットや非中核ブランドの売却による中核事業への集中、マーケティングや広告手法の変更、株主還元の強化などを含んだ詳細なアクション・プランを提示します。

これに対してハインツ社側はプランの受け入れは非現実的として拒否し、 ペルツ氏を攻撃する反対キャンペーンまで行いました。

しかし、その後ハインツ社が発表した企業価値向上計画の内容は、トラインアン側の提案を踏襲した内容となっており、9月に行われた株主総会でも、トライアンが擁立した5名の候補者のうち、ペルツ氏を含む2名が取締役に選出されるなど、トライアン側の要求が概ね実現する結果となりました。

株価についてもトライアンの介入の噂が流れた2006年2月に急上昇し、9月の株主総会でペルツ氏の取締役選任後にもさらに上昇しており、企業価値の向上にも見事成功しています。

(H.J.ハインツの株価推移 出所:野村資本市場研究所

この提案を主導したペルツ氏は乗っ取り屋として知られ、多くの企業を買収して非公開化することによって企業価値の向上に成功してきました。

しかし、この事例では買収ではなく、一定数の株式を保有した上でオペレーションの改善を提案する「オペレーショナル・アクティビズム」という手法が用いられています。

この提案では企業、経営陣は反発したものの、最終的には提案を受け入れた形となっています。

これは詳細な分析に基づく具体的なアクションプランに明らかな合理性があり、現実的な内容であったことなどが要因と考えられます。

(2)旧村上ファンドの失敗事例(対東京スタイル)

2002年、村上世彰氏が代表を務めていた旧村上ファンドは、発行済み株式の9.3%を取得して東京スタイル(現TSIホールディングス)筆頭株主となります。

東京スタイルは1280億円もの多額の内部留保を保有しており、その資金を使いファッションビル建設を計画していました。

それに対して旧村上ファンド側はファッションビル建設中止と、1株あたり500円の配当を求める株主提案を行いました。

その後東京スタイルと旧村上ファンドとの間では委任状争奪戦(プロキシーファイト)が繰り広げられ、結果は村上ファンド側の敗北に終わっています。

この提案は、会社は誰のものか、日本において株主利益の重要性について議論される契機となる重要な役割を果たしましたが、同時にアクティビストが提案を実現させる難しさを示したものとも言えます。

余剰資金を不確実な投資ではなく株主還元に回すと言う旧村上ファンド側の提案は、資本市場、株主主義という観点からいえば理にかなった提案と言えます。

しかしこの提案が受け入れられなかった要因としては、その提案の極端さが考えられます。

いくら合理的で企業価値、株主価値の向上につながる提案とはいえ、あまりに極端な提案には拒絶反応が起こり、受け入れにくいものです。

実際に旧村上ファンド側が提案した1株あたり500円の配当(会社提案は20円)は、保有資産からすれば理論上可能な数字ではありました。

しかし、それを一気に支払えという提案にはやや無理があったように思えます。

いくら資金があっても、そのほとんどを一気に使ってしまうのはリスクも伴います。

株主にとってはかなり有利な提案であったにも関わらず賛同が得られなかったのは、その不安を経営陣だけでなく他の株主も感じたからではないでしょうか。

アクティビストには、経営を抜本的に改革するような大胆な提案も期待されます。

しかし、それには他の株主やステークホルダーからの賛同を得られなければなりません。

提案を実現し企業価値の向上を実現するためには、一定の節度も必要となるのでしょう。

3、アクティビストの現在の動向

日本でも注目が高まっているアクティビストも、その提案が受け入れられる事例はまだまだ限られています。

しかしコーポレートガバナンス・コードやシュチュワードシップ・コードといった企業統治ルールの改訂により、企業には株主との対話や利益を重視した経営が、投資家には経営陣を監視し責任ある投資を行うことがより強く求められるようになりました。

アクティビストにとっては、活動しやすい環境が整ってきていると言えます。

また経営効率の改善が急務とされる日本企業は改善余地も多く、国内外のアクティビストから注目を集めています。

ここではアクティビストの動向として注目しておきたい現在進行中の事案について、いくつかピックアップしてご紹介します。

(1)オアシスによるパソナへの経営改善提案

グローバルに活動するアクティビストであるオアシスは、昨年11月人材派遣大手パソナグループ(2168)に対して、①適切な経営資源の配分②厳格なコスト管理体制の構築/徹底③ガバナンス体制の刷新を求めるホワイトペーパー(経営改善提案)を提出しました。

オアシスはパソナに対して、経営資源の配分やコスト管理体制、コーポレート・ガバナンス(企業統治)が不十分であるために利益率が低く、競合他社や子会社であるベネフィット・ワン(2412)に比べても市場からの評価が低く、長期にわたり株価が低迷していると指摘しています。

パソナ経営陣はオアシスとの面談を拒否しており、今後株主総会におけるプロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展することなどが想定されます。

オアシス(Oasis

セス・フィッシャー(現最高投資責任者・CIO)により2002年に設立された資産運用会社であり、香港に本拠としてグローバルに展開しています。

優れた投資・運用経験と専門知識を持つ35名以上のプロフェッショナルを擁し、さまざまな国やセクターで幅広いアセットクラスへの投資を行っています。

(2)旧村上ファンド系投資会社による出光興産に対する動向

長年交渉が停滞していた出光興産(5019)と昭和シェル石油(5002)の経営統合は、今年に入ってから大きな進展をみせました。

これにはアクティビストとして一世を風靡した旧村上ファンド代表・村上世彰氏の助言が大きな役割を果たしたとされています。

村上氏は出光創業家の相談役として助言を行っており、自身でも出光株を1%弱取得しています。

また旧村上ファンド関係者が運営する投資会社も出光株を保有しており、週刊ダイヤモンド誌の取材ではその保有比率は2%前後とみられ、その動向に注目が集まっています。

なぜ、アクティビストである旧村上ファンド系投資会社が出光株を保有するのでしょうか。

それは、出光の株主還元が不十分であることが要因とみられています。

2017年度の出光の配当性向は10.2%と、業界トップのJXTGホールディングスの同年度の配当性向(17.9%)と比べてかなり低く、業界内でも最低水準でした。

それに対して、アクティビストだけでなく機関投資家からも株主還元を求める声が上がるような状況となっています。

また昭和シェル石油との統合効果について、両社が示した目標が保守的であったため、経営合理化の余地を残す形ともなっており、いつ株主からの改善要求があってもおかしくはないといえる状況です。

現在はまだ具体的な要求や株主提案などは行われていませんが、今後の動向には注目しておきたい事例と言えます。

(3)Japan Actによるサンエー化研への株主提案

独立系投資会社のアクティビスト、Japan Actは、株式会社サンエー化研(4234)の発行済株式総数の約1.1% (2019年3月31日時点)を保有する大株主で、サンエー化研)に対して、第110期期末配当として、普通株式1株あたり金41円を配当する内容の株主提案書を送付しました株式会社サンエー化研への株主提案)。

サンエー化研は、「業績の変動に大きく左右されない安定配当」を基本的な方針としていて、中間配当を9円とし、期末配当を9円として、第110期の年間配当としては、18円の配当方針です。

Japan Actは、サンエー化研の上場以来19期のデータを分析した結果、総資産や純資産の増加に対して、売上高や経常利益が極端に少ない微増であったことに加えて、同期間でのサンエー化研の時価総額が大きく減少していると指摘。また、サンエー化研は、「営業上の関係強化」として、複数の政策保有株式を保有しており、資本効率性が極めて低い経営を行っていると指摘し、経営改善のため増配要求をしたのです。

6月に開催された株主総会では、会社提案(1株9円)が可決され、Japan Actによる株主提案は否決される結果となりました。

しかし、株主総会という場で、経営陣の経営に対する意識の低さや政策保有株式をはじめとしたガバナンスの欠如、株主還元についての改善を指摘、要求し会社や経営陣に対して一定のプレッシャーを与えることができたとみられます

JapanAct

Japan Actは、日本国内に上場している企業を主な投資対象として、バリュー/アクティビスト投資を行っている会社です。徹底した企業分析から、理論価値を算出し、何らかの要因によって市場で過小評価されている企業への投資を行っています。

Japan Actは、短期的な利益を追及せず、中長期的な投資スタンスで経営陣との対話を通じた関係構築を図り、企業価値・株主価値向上を目指すアクティビスト投資を行う独立系投資会社です。

設立されたのは2018年とまだ新しい会社ですが、すでに投資先の株式を『1.1パーセント』保有し、投資先への株主提案を行うなど積極的に活動しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ホワイトペーパーとは、アクティビストが投資先企業に対して提案や要求などを文書にして行うもので、詳細な分析をもとに提案の正当性や合理性などを経営陣に伝えるとともに、一般に公表することにより経営陣へのプレッシャーをかける方法としても利用されます。

現在アクティビストの活動が活発になってきており、それに伴うホワイトペーパーの提出も増加しています。

ホワイトペーパーが提出されると、経営改革による企業価値向上を期待した買いによって株価が上がることもあり、アクティビストの動向や、提出されたホワイトペーパーの内容には要注目です。

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