もしすぐに可能であれば、リタイアして自由な時間を手に入れたいですよね?
ところが、いくらあったらリタイアできるのか、リタイアは現実的に可能なのか気になる人も多いことでしょう。
そこでこの記事では、「資産2億円でリタイアが可能なのか」について、比較シミュレーションを行うことによって検証します。
さらに、「リタイアをより現実的にする資産運用とは何か」を解説します。この記事を読んで、自分に合ったリタイアの方法を検討してみてください。
そもそも、リタイアとは?
リタイアとは、言葉としては単に「会社を退職すること」を意味します。
しかし近年では、「定年まで会社で働かずに早期に退職し、引退生活を送る」という意味合いで使われることが多くなっています。
欧米では、FIRE(Financial Independence Retire Early)という「経済的自立と早期リタイア」の考え方が話題になっており、そこから日本でもリタイアが注目され始めています。
このように、リタイアにはいくつかの種類が存在します。明確な定義が決まっているわけではないため、人によっては多少の解釈の違いがあるかもしれません。代表的な3つのリタイアを以下の表にまとめます。
リタイアの種類 | 説明 | 必要な資産 |
---|---|---|
アーリー(早期)リタイア(FIRE) | 定年前に会社を退職し、仕事に縛られない生活 | 2,000万円~3億円 |
フルリタイア(ファットFIRE) | 仕事せず、貯蓄のみで生活 | 7,000万円~3億円 |
セミリタイア(サイドFIRE) | フルタイムではない最低限の仕事をしながら生活 | 2,000万円~2億円 |
アーリー(早期)リタイア(FIRE)
定年前に会社を退職し、自由な引退生活を送ることを言います。
日本では定年は60歳でしたが、現在は社会全体の動きとして70歳まで引き上げられそうです。
したがって、かつて60歳の定年までに退職することがアーリーリタイアでしたが、今後は60代でもアーリーリタイアが当てはまるようになります。一般的には、企業の早期優遇退職制度を活用してアーリーリタイアを実現することが多いようです。
しかし、早期優遇退職制度が当てはまらない30代や40代でもアーリーリタイアを実現することは不可能ではありません。
会社を退職し、別の会社に転職する場合はアーリーリタイアではありません。退職後、仕事せずに今までの貯蓄のみで生活する「フルリタイア」と、フルタイムではない最低限の仕事をしながら生活する「セミリタイア」に分かれます。
フルリタイア(ファットFIRE)
会社を退職後、仕事は一切せずに生活していくことを言います。
今までの貯蓄と資産運用などの不労所得のみで生活費が賄える状態です。したがって、十分な資産がないと実現できません。
フルリタイアは、すべての時間が自分の好きなように自由に使えるという魅力があります。会社で毎日頑張って働く生活から解放され、何も気にすることなく自由な生活を送ることができます。
しかし、よほど金銭面での余裕がないと、将来的な資金不足の不安を抱えながら生活することになってしまいます。
セミリタイア(サイドFIRE)
会社を退職後、フルタイムの仕事ではなく、副業やパートにより収入を得ながら生活していくことを言います。
仕事をしつつも、自分の時間を十分に確保でき、自分のやりたいことができる状態です。したがって、収入の額にもよりますが、フルリタイアよりも少ない資産で実現することができます。
最低限の収入源があることや社会との接点は持ち続けられることへ安心感が得られることが魅力です。さらに、自分のやりたかったことを仕事としてできることが理想になります。
年代別リタイアするのに必要な資金は?
リタイアするための必要な資金は、年齢によって大きく異なります。
例えば、100歳まで生きると仮定した場合、60歳でリタイアするなら、残り40年間の生活費が必要です。これに対し、30歳でリタイアした場合は、残り70年間の生活費が必要です。
実際の生活費がどれくらいかかるものなのか、総務省のデータを用いて以下の表にまとめました。
リタイア年齢 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
期間 | 1カ月 | 1年 | 70年 | 60年 | 50年 | 40年 |
単身 | ¥146,845 | ¥1,762,140 | ¥123,349,800 | ¥105,728,400 | ¥88,107,000 | ¥70,485,600 |
2人以上 | ¥277,926 | ¥3,335,112 | ¥233,457,840 | ¥200,106,720 | ¥166,755,600 | ¥133,404,480 |
当然ですが、単身と比べて2人以上の世帯の場合は約2倍程度の生活費がかかります。2人以上の世帯で考えると、30代や40代でフルリタイアするためには2億円以上の資産が必要です。30代や40代で2億円以上の資産を保有できる人は非常に限られるので、現実的にはフルリタイアは難しいと言えます。
セミリタイアでのシミュレーション
セミリタイアの場合、収入に応じてどの程度生活していけるのかについて見ていきます。上記と同様の生活費のデータを用いて、2人以上の世帯が2億円でセミリタイアした場合のシミュレーション結果を以下の表にまとめます。
収入なし | 月収5万 | 月収10万 | 月収15万 | |
---|---|---|---|---|
0年目 | ¥200,000,000 | ¥200,000,000 | ¥200,000,000 | ¥200,000,000 |
5年目 | ¥183,324,440 | ¥186,324,440 | ¥189,324,440 | ¥192,324,440 |
10年目 | ¥166,648,880 | ¥169,648,880 | ¥172,648,880 | ¥175,648,880 |
15年目 | ¥149,973,320 | ¥152,973,320 | ¥155,973,320 | ¥158,973,320 |
20年目 | ¥133,297,760 | ¥136,297,760 | ¥139,297,760 | ¥142,297,760 |
25年目 | ¥116,622,200 | ¥119,622,200 | ¥122,622,200 | ¥125,622,200 |
30年目 | ¥99,946,640 | ¥102,946,640 | ¥105,946,640 | ¥108,946,640 |
35年目 | ¥83,271,080 | ¥86,271,080 | ¥89,271,080 | ¥92,271,080 |
40年目 | ¥66,595,520 | ¥69,595,520 | ¥72,595,520 | ¥75,595,520 |
45年目 | ¥49,919,960 | ¥52,919,960 | ¥55,919,960 | ¥58,919,960 |
50年目 | ¥33,244,400 | ¥36,244,400 | ¥39,244,400 | ¥42,244,400 |
55年目 | ¥16,568,840 | ¥19,568,840 | ¥22,568,840 | ¥25,568,840 |
60年目 | ¥-106,720 | ¥2,893,280 | ¥5,893,280 | ¥8,893,280 |
65年目 | ¥-16,782,280 | ¥-13,782,280 | ¥-10,782,280 | ¥-7,782,280 |
70年目 | ¥-33,457,840 | ¥-30,457,840 | ¥-27,457,840 | ¥-24,457,840 |
収入なしの場合、セミリタイアではなくフルリタイアになりますが、60年弱は2億円で生活することができます。一方、月収5万円~15万円あれば、生活できる期間が延び、60年経ってもまだ2億円の資産は尽きていない状態です。
したがって、2億円あれば40歳でセミリタイアすることを検討することができます。
もっと楽にするには、資産運用がおすすめ
上記のシミュレーションでは、就労収入しか考えていませんが、もっと楽にリタイアを実現するには資産運用を活用することがおすすめです。
資産運用は、お金に働いてもらうイメージであり、不労所得として収入を増やすことができます。
2億円程のまとまった資産を保有している場合であれば、資産運用により生活費の一部を運用利回りで補うことができます。場合によっては、生活費以上の運用利益が得られ、元本が増えていくこともあります。
次章では、資産運用した場合のシミュレーションについて解説します。
2億円を資産運用した場合のシミュレーション
ここではまず、2人以上の世帯が2億円で資産運用しながら生活した場合をシミュレーションします。資産運用の利回りを3%とした場合のシミュレーション結果を以下の表にまとめます。
運用年数 | 資産額 |
---|---|
0年目 | ¥200,000,000 |
1年目 | ¥196,664,888 |
2年目 | ¥199,229,723 |
3年目 | ¥201,871,502 |
4年目 | ¥204,592,535 |
5年目 | ¥207,395,199 |
6年目 | ¥210,281,943 |
7年目 | ¥213,255,290 |
8年目 | ¥216,317,836 |
9年目 | ¥219,472,260 |
10年目 | ¥222,721,315 |
20年目 | ¥261,085,502 |
30年目 | ¥312,643,761 |
40年目 | ¥381,933,750 |
50年目 | ¥475,053,701 |
60年目 | ¥600,199,129 |
70年目 | ¥768,384,119 |
2人以上の世帯にかかる生活費(約335万/年)よりも、2億円を3%の利回りで資産運用する利益のほうが大きいため、元本はむしろ増えていきます。
2億円の資産があり、資産運用を活用すれば、年齢に関係なくリタイアすることができます。
預金2億円でリタイアが厳しい条件
上記の通り、2億円で資産運用を活用すればリタイアの実現性は高まります。しかし、このシミュレーションのようにうまく事が運ばない事態も想定されます。以下では、その条件について解説します。
消費支出が抑えられない
消費支出が抑えられないと想定よりも早く資金不足に陥ってしまいます。
上記のシミュレーションでは、生活費を2人以上世帯の平均で計算していますが、生活の変化でかかる費用も変わってきます。
特に、リタイア後はやりたいことをやる時間ができるため、そのための出費も多くなるものです。
例えば、「リタイアして〇〇の高級なマンションに住みたい」という夢があった場合、やりたいことをかなえて生活水準を上げる分、支出は多くなります。また、病気が見つかり医療費が継続的にかかるようになってしまったなど、予想外の事態で支出が多くなってしまう場合もあります。
消費支出が増えるといった予定の収支通りにはいかなくなってしまうリスクは常に存在しています。
想定より長生きしてしまう
想定よりも長生きしてしまうと、必要な生活費はより多くなります。
資産運用により、資産の元本が増えていく状態であれば問題ありません。
ですが、貯蓄してきた資産を取り崩していく場合、長く生きるほど資金不足になるリスクは高まります。
平均寿命は延び続けており、特に日本は世界的に見ても長寿国です。長生きであることは嬉しいことですが、生きている分だけお金はかかり続けます。
今後も医療技術の進歩で寿命が延びる可能性があるため、そういった場合も想定して必要資金を試算することが重要です。
インフレによる物価の上昇
インフレによる物価の上昇が起こると、相対的に保有しているお金の価値が減ってしまいます。
例えば、現在100円で買える肉があるとして、10年後には物価が上がって200円になったとします。保有資産は変わらないことに対して、物価だけ2倍に上がると、かかる生活費も2倍です。反対に、自分の持っている資産の価値が半分になると捉えることもできます。
実際はここまで極端に物価が変化することはあまりありませんが、日本では2013年より政府が「物価の安定目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定めています。
もしこれが実現すれば、現在2億円を預金で持っていたとしても、数年後には同じ2億円で買えるものは少なくなってしまいます。
資産運用で2億の資産を作る方法
資産運用によって2億円を作る方法があります。
これを達成するにはもともとの貯蓄に対して時間かけて資産運用していくことが必要です。
以下では資産運用の方法と運用利回りごとに、2億円を作る例を紹介します。
株式投資
資産運用を行う手法の1つに株式投資があります。
株式投資は、株式の購入時と売却時の価格差で利益を得るのがメインですが、保有中に配当金や株主優待の特典を得ることもできます。
投資先の株式によってリスクは様々ですが、一般的には3%~10%の利回りを望むことができます。
以下の表では、1,000万円を利回り3%と5%で資産運用した場合のシミュレーション結果を示しています。
利回り | 3% | 5% |
---|---|---|
0年目 | ¥10,000,000 | ¥10,000,000 |
1年目 | ¥10,300,000 | ¥10,500,000 |
2年目 | ¥10,609,000 | ¥11,025,000 |
3年目 | ¥10,927,270 | ¥11,576,250 |
4年目 | ¥11,255,088 | ¥12,155,063 |
5年目 | ¥11,592,741 | ¥12,762,816 |
6年目 | ¥11,940,523 | ¥13,400,956 |
7年目 | ¥12,298,739 | ¥14,071,004 |
8年目 | ¥12,667,701 | ¥14,774,554 |
9年目 | ¥13,047,732 | ¥15,513,282 |
10年目 | ¥13,439,164 | ¥16,288,946 |
20年目 | ¥18,061,112 | ¥26,532,977 |
30年目 | ¥24,272,625 | ¥43,219,424 |
40年目 | ¥32,620,378 | ¥70,399,887 |
50年目 | ¥43,839,060 | ¥114,673,998 |
60年目 | ¥58,916,031 | ¥186,791,859 |
70年目 | ¥79,178,219 | ¥304,264,255 |
1,000万円を年間利回り3%で資産運用した場合、70年後に約7,900万円まで増やすことができます。また、1,000万円を利回り5%で資産運用した場合、62年目で2億円を達成することができます。これは元本を増やさないシミュレーションになるので、さらに元本を増やしていけば早く達成を目指せます。
ヘッジファンド
株式投資よりもリスクが大きいとされる資産運用の1つにヘッジファンドがあります。
ヘッジファンドは、投資のプロに運用を任せる投資手法で、様々な運用手法や戦略が駆使されます。
運用をプロに任せる分の手数料はかかりますが、初心者が投資をするよりは高い確率で高収益が期待できるとされています。
ヘッジファンドは1,000万円あれば投資可能です。
以下の表では、1,000万円を利回り7%と10%で資産運用した場合のシミュレーション結果を示しています。
利回り | 7% | 10% |
---|---|---|
0年目 | ¥10,000,000 | ¥10,000,000 |
1年目 | ¥10,700,000 | ¥11,000,000 |
2年目 | ¥11,449,000 | ¥12,100,000 |
3年目 | ¥12,250,430 | ¥13,310,000 |
4年目 | ¥13,107,960 | ¥14,641,000 |
5年目 | ¥14,025,517 | ¥16,105,100 |
6年目 | ¥15,007,304 | ¥17,715,610 |
7年目 | ¥16,057,815 | ¥19,487,171 |
8年目 | ¥17,181,862 | ¥21,435,888 |
9年目 | ¥18,384,592 | ¥23,579,477 |
10年目 | ¥19,671,514 | ¥25,937,425 |
20年目 | ¥38,696,845 | ¥67,274,999 |
30年目 | ¥76,122,550 | ¥174,494,023 |
40年目 | ¥149,744,578 | ¥452,592,556 |
50年目 | ¥294,570,251 | ¥1,173,908,529 |
60年目 | ¥579,464,268 | ¥3,044,816,395 |
70年目 | ¥1,139,893,922 | ¥7,897,469,568 |
1,000万円を利回り7%で資産運用した場合、45年目に約2億円を達成することができます。また、1,000万円を利回り10%で資産運用した場合、32年目で2億円を達成することができます。
まとめ:資産2億円でリアタイアは可能!資産運用でリタイアの実現性が高くなる!
この記事では、リタイアの種類について解説し、資産2億円あればリタイアできるかどうかについて、様々なシミュレーションを行うことで検証しました。
内容を以下にまとめます。
- アーリーリタイアとは、定年前に会社を退職し、仕事に縛られない生活を送ること
- フルリタイアとは、完全に仕事をせず、貯蓄のみで生活すること
- セミリタイアとは、フルタイムではない最低限の仕事をしながら生活すること
- リタイアに必要な資金は年齢で大きく異なる
- 資産運用によりリタイアの実現性は高くなる
- 支出の増加、長生き、インフレによって、リタイアは厳しくなる
- 資産運用によって2億円の資産を作ることもできる
資産運用を行い、ぜひリタイアを目指してみてはいかがでしょうか?
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