
世の中には「働かないで生活している人」がいます。その代表例が「個人投資家」ではないでしょうか。不労所得で生活するのは、誰にとっても憧れですよね。
ですが、実際に「個人投資家」の内訳をみると、投資だけで生計が成り立つ人はごくわずか。ほとんどの人は、投資とは別に本業を持っています。筆者も仕事をしてお金を稼いでは、せっせと投資にお金を使っています。
なぜ一生懸命働いて稼いだお金を投資に使うのかと言えば、将来の生活を少しでも楽にするため。この記事では、どんな人がどんな目的で個人投資家として投資をしているのか、解説してきます。あなたの生活を豊かにするヒントもありますよ。
目次
お金持ちでなくても個人投資家になれる!
「投資」というと、一部の富裕層がやっているイメージではないでしょうか?働き盛りの現役世代には、少し縁遠い感じがするかもしれません。
ですが、実はあなたと同じくらいの年収の人も、個人投資家として投資をしてお金を増やしています。
年収が多くても少なくてもチャレンジできるのが投資です。「投資」=「お金持ちのためのもの」というイメージを崩せるように解説していきましょう。
個人投資家は高収入ばかりではない
さっそく、個人投資家の年収について見ていきましょう。
次のグラフは、平成30年に日本証券業協会が実施した「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果をまとめたもので、「回答者の年収」を表しています。ご自身の年収と比べてみてください。
個人投資家のうち、45%の人が年収3,00万円未満であることがわかります。さらに、約70%の人が年収500万円未満という結果です。これは意外ではないでしょうか?
一方で、お金持ちの代名詞と言える「年収1,000万円以上」の個人投資家は、わずか7%ほどしかいません。投資をしているほとんどの人が、特別なお金持ちというわけではないことがおわかりいただけたでしょう。
収入を増やしたくて投資を始める
そもそも、投資を始める動機として最も多いのが、「今の収入を増やしたいと思った」からなのです。続いて「株主優待があることを知った」からです(いずれも、同様に日本証券業協会のデータから引用しました)。
なお、株主優待とは、株式を発行する企業が自社サービスの割引券や自社製品を特典として株主にプレゼントすることです。
収入を増やしたり、株主優待でお得に生活したりといった動機からも、「今の収入で満足できない人」が投資に取り組んでいることがわかります。この動機に鑑みると、「投資とは一生懸命働いているけど、もう少し収入を増やしたい人のためのもの」と言っても過言ではないでしょう。
実際、筆者も収入を増やすために投資をしています。今は年間の配当収入が14万円ほどなので、月平均にならすと毎月1万2,000円ほどの不労所得が入ってくる状態です。本業の収入に加えて、1万円でも1ヶ月の収入が増えると生活が本当にラクになりますよ!
過半数の投資額は300万円未満
同じく、日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果を見てみましょう。次のグラフは証券の保有額です。株式や投資信託などを、合計でいくら分持っているかを表したものです。
グラフを見ると、約半数の投資額が300万円以下であることがわかります。50万円未満の人も20%ほどいますし、超高額な投資金額というほどでもないでしょう。5,000万円以上も投資している羨ましい投資家の方もいますが、4%ほどと少数です。
年収は70%の人が500万円以下と偏ったのに対し、投資額は10万円以下の人から5,000万円以上の人までばらつきが出ました。投資歴が長い方が投資額も大きくなる傾向はありますが、それぞれが好きな金額で投資を行っていると読み替えられるのではないでしょうか。
投資は生活をラクにしてくれる
先ほどお伝えしたように、多くの個人投資家は「収入を増やすため」に投資をしています。生活資金を本業の仕事以外でも稼ぐことで、生活をラクにしたい人が多いのです。
この項目では、なぜ投資で生活をラクにすることができるのかをお伝えしていきます。すべての投資家にうなずいていただけるはずです。
配当金で収入が増える
まずは、株式を購入した場合を考えます。「株式を買う」とは企業に出資することなので、あなたのお金を使って企業は事業を行います。
事業が上手くいけば利益が出るので、あなたが出資した以上のお金が生まれます。その利益の一部を株主に還元するのが「配当」です。
配当を出さない企業もありますが、配当を出している企業の場合、株価に対して1%から5%ほどの配当を還元しています。
例えば、配当利回りが3%の株式を100万円分買ったら、1年間で3万円貰うことができます。企業が配当を続ける限り、永続的に3万円をもらい続けられます。
また、増配といって企業が配当金を増やすこともあるので、3万円よりも多い金額を貰える可能性もあります。
このように、株式を買っておくと定期的に受け取ることができるのが配当金です。配当金をもらうことで収入が増えるため、生活がラクになります。筆者は、株式投資で月平均1万円以上の配当金をもらって生活しています。
株主優待でお得に生活
さらに、株式を持っていると配当金だけでなく「株主優待」を受け取ることもできます。株主優待はすべての企業が実施しているわけではありませんが、一部の企業では株主に対して自社サービスの割引券や自社製品を配布していることがあります。
特に、外食サービスの割引券や食品会社・飲料会社の自社製品プレゼントなどは助かる人も多いでしょう。日常生活でよく使うものをタダでもらえたり割引してもらえたりするので、その分のお金を節約することができます。
積み立てすれば年金代わりにもなる
株式や投資信託を現役時代から積み立てておけば、老後に年金代わりの収入を得ることができます。先ほど紹介したように、配当金を受け取ることもできますし、値上がりした株式や投資信託を老後に売っても良いでしょう。
「ゆとりある老後生活のためには2,000万円足りない」とニュースになっているとおり、退職後の生活のためにも資産形成は欠かせません。仕事に精を出す現役時代から未来を見据えて投資をしておくことで、現在の収入だけでなく老後の収入の基盤にもなります。
投資だけで生活はできるのか?
さて、このように投資で不労所得を得て収入アップできることをお話しすると、「それなら投資だけで生活できるようになりたい!」との声が必ず上がります。その気持ちはとてもよくわかりますし、すべての個人投資家の夢です。
しかし、実際に投資だけで生活するのは大変困難です。不可能なことではありませんが、とても難しいことも理解しておきましょう。
配当金だけで生活する
株式を持っていて、企業から受け取る配当金で生活することを例に考えてみましょう。
生計を立てるには、年間どれくらいのお金が必要でしょうか?人によって異なりますが、ここではサラリーマンの男性の平均年収とほぼ等しい500万円が必要だと仮定して試算してみます。
配当金利回りが5%だった場合、1年間で500万円の配当金をもらうためには、いくらの元手が必要でしょうか?
計算すると、1億円が必要になるのです。1億円を利回り5%の株式に投資して、ようやく500万円の配当金になります。想像していたより大きな金額ではないでしょうか?
一方、サラリーマンが一生で稼ぐ金額は2億円から3億円だと言われています。年間500万円の配当金を得るためには、生涯収入の半分ほどを投資しなければならないということなので、多くの方にとって「配当金だけで生計を立てる」ことは極めて難しいと考えられます。
配当金の利回りがもっと高ければ、数千万円の元手でも配当金だけで生活することが可能ですが、5%でもかなりレアな高配当株です。実際に、配当利回りが5%以上の高配当株はそれほど多くなく、市場動向や企業の業績などによっては配当額が大きく減少したり、場合によっては無配になることもあるため、株の購入後もある程度の監視が必要です。
専業投資家として生計を立てる
投資で利益を出す方法は、配当金を得ることだけではありません。株式を安いときに買って高くなってから売るキャピタルゲインを得る方法でも、利益を得ることができます。
1日で株式の売買を繰り返すデイトレーダーが、ほんの1時間で数百万円といった金額を稼ぐ様子は、ときどきテレビなどでも話題になりますよね。
安く買って高く売る「値上がり益」目的の投資で儲けることは理論的には可能ですが、投資上級者向けの手法なので初心者にはおすすめできません。株式を買った後、必ず値上がりするとは限らず、値下がりして損してしまう可能性も高いからです。
銘柄選びが難しいだけでなく、国際政治の摩擦によって市場が大暴落するといったリスクがあり、市場の行方は誰にも読めません。値上がりする可能性はあるものの、同等の確率で値下がりする危険もあるので、投資で生活費を稼ぐ専業投資家は誰にでもおすすめできる仕事ではありません。
投資だけで生計を立てるのは難しい
これまでお伝えしてきたように、投資で配当金や値上がり益を得ることはできますが、それだけで生計を立てるのは難しいものです。収入の多寡に関係なく個人投資家はいますが、ほとんどの人は「兼業投資家」で別の本業を持っているのです。
前の項目でお伝えしたように、半数の個人投資家は投資額が500万円未満です。投資額が500万円の場合、利回り5%なら1年間で受け取る配当金は25万円です。月平均で2万円以上も配当金を得ることができるため、本業以外の収入としては十分ではないでしょうか。
働くことにもメリットがある
これまで、投資だけで生活していくことの難しさを解説しました。実際、個人投資家でも多くの人は投資とは別の本業を持っています。
仕事をする理由はさまざまですが、働くことは投資にはないメリットがあります。仕事を投資と並行することで、お金を最大限に増やすことができますよ。
メリット1:安定した収入を得られる
安定した仕事に就くことの最大のメリットは、安定した収入を得られることです。収入が多い・少ないは関係なしに、毎月同じような金額が同じようなタイミングで振り込まれることはとても恵まれています。
投資で生計を立てようとして株式の売買を繰り返すと、上手くいっているときは大きく稼ぐことができます。サラリーマンの1日分の給与を超える金額を叩き出せることもあります。
ですが、翌日には大きく負けてしまい、昨日の勝ちすらなくなってしまうといったこともよくあるもの。収入と支出を見積もりにくいので、このような職種の人から見ると、会社員の安定した給与は非常に魅力的です。
メリット2:投資に捻出するお金を稼げる
安定した給与がある人は、毎月一定額を貯金に回している人も多いことでしょう。その内の一部を投資に回すことで、本業と投資を両立することができます。投資に捻出するお金を稼げるという意味でも、本業は重要です。
「配当金で生活するのは難しい」とお伝えしましたが、永久に無理というわけではありません。投資を始めて1年から2年で配当金生活をすることは難しいものの、10年から20年といったように長期間働きながら資産形成していけば、配当金で生活することは不可能ではありません。
実際に、本業で稼いだお金を少しずつ投資して1億円近い資産を作り、アーリーリタイアする人は存在します。または、完全に退職まではできない人でも、就業時間が短い仕事やストレスの少ない仕事に切り替え、本業の収入を減らして生活することもできます。
メリット3:有給休暇・福利厚生がある
会社員が活用すべきものは、有給休暇や福利厚生のようなシステムです。専業投資家のような個人事業主にはこのようなメリットがないため、ぜひ活用してください。
仕事から離れてリフレッシュするのも良いですし、お金を稼ぎたい人は有給休暇を使って副業をすることができます。また、福利厚生を上手に使えば節約もできます。
投資だけで生活することに憧れるサラリーマンは多いですが、会社員にもメリットはあります。ひとまず兼業投資家として投資を始め、サラリーマンのメリットと投資のメリットをダブルでゲットしてみると良いでしょう。
兼業投資家のすすめ
投資だけで生計を立てるのは難しいですが、本業を頑張りながら投資も始めることで、確実に生活は楽になります。
これから投資を始める方や投資を始めたばかりの方に向けて、アドバイスしましょう。
投資は少額で始められる
投資を始めるための最低金額は、たったの「100円」です。インターネット証券会社の投資信託は、100円から買い付けるサービスが普通になってきています。
かつては100万円単位のお金を出せる人にしか縁がなかった投資が身近になったのは、少額で始められるようになったことも大きな要因の一つです。100円から始められるので、収入が少ない人でも少しずつ取り組むことができるのです。
実際、お見せしたデータでは投資額が10万円以下の個人投資家も一定数存在します。少しずつコツコツ投資をする仲間はたくさんいるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
若い人は時間を味方につけよう
投資は、長い時間をかけられるほど有利です。というのも、いつ市場の暴落に巻き込まれるかはわかりませんが、保有していればいつかは株価が回復することが一般的だからです。
相場は常に右肩上がりではなく、短期的な上がったり下がったりを繰り返しながら、長期的には成長していきます。投資に使える残り時間が短いほど、短期的な下げに巻き込まれて資産が減ってしまう可能性があるのです。
しかし、若い人は時間を味方につけて長期的な利益が見込める投資をすることができます。「お金がない」と思う人もいるかもしれませんが、投資は100円から始められます。
「塵も積もれば山となる」のことわざを信じ、投資を始めてみてはいかがでしょうか。
暴落したら買い増そう
リーマンショックやITバブル崩壊など、世界を巻き込んだ金融危機はこれまでに何度もありました。これからも金融危機は起きるでしょう。
来るべき大暴落に備え、暴落時の行動や考え方を決めておくことも重要です。というのも、資産が半減してしまうような場合、悲観的な気持ちになってすべての株式を売ってしまうパニックに陥ることが多いのです。
歴史を振り返ると、私たちの経済はこれまでリーマンショックを始めとする金融危機を乗り越えてきました。時間はかかるかもしれませんが、株価も暴落時からかなり回復しています。
暴落直後に売った人の多くは、「あのとき売らずに、安いうちに買いましておけば良かった」と考えているのです。
暴落時に株式を買える精神力があるかどうかは人によりますが、暴落時は買い増しをおすすめします。もちろん、その企業が倒産しない保証はないので自己責任ではありますが、自分が信じた銘柄を暴落時こそ信じる力が資産を成長させることができるでしょう。
まとめ
投資で収入を増やすことで、生活をラクにできることについて解説してきました。投資だけで生活することはとても難しいため、基本的には本業を頑張りつつ投資も行うスタンスをおすすめします。
ただ、投資で少しでも収入があると、心に余裕を持って本業に取り組むことができます。万が一クビになったり、会社が倒産したりしても投資による収入が心の支えになってくれます。
不確実な現代社会だからこそ、本業以外に収入を得る手段を確保しておくべきでしょう。
3年間の金融機関への勤務を通じて投資を学ぶ。1ヶ月で20万円を副業デイトレードで稼いだものの、放っておける長期投資にシフト。20代だが600万円以上を株式、投資信託、ETFで運用し、高配当銘柄で毎月万単位の不労所得を獲得している。iDeCo、NISAも最大限活用中。