よく耳にする「ファンド」ということばですが、その中には多くの意味が含まれています。ここでは、それぞれのファンドの特徴とその違い、メリット・デメリットについて解説していきます。
ファンドとは
ファンド(fund)とは、もともと資金や基金といった意味のことばです。
現在はそこから派生して、投資家から資金を募って運用を行う会社(投資ファンド・investment fund)や金融商品(投資信託・investment trust fund)を指す金融用語としても使われています。
ファンドの定義
金融商品として利用されるファンドとは、投資家から集めたお金をまとめてプロが運用し、得られた利益を投資額に応じて投資家に分配する仕組みです。プロが投資する商品は株式や債券などです。
ファンドが生まれた理由
ファンドが生まれたのは、お金を持っている資産家からの需要が理由です。
資産家は投資のプロではないので、プロに運用してもらって確実に利益を得たいと考えました。この需要に応える形でプロがファンドを運用し、手数料をもらう仕組みができたのです。
公募ファンドと私募ファンドの違い
ファンドは募集の方法により2種類に分類することができます。
公募ファンド(投資信託)
公募ファンドとは、不特定多数の投資家から資金を募り運用を行う金融商品のことであり、代表的な商品は投資信託です。日本における投資信託は、投資信託および投資法人に関する法律に従って設定されたもののことであり、組み入れる商品や配当などに関しては規制の対象となっています。
公募ファンド(投資信託)には、個人では投資が難しいような商品を含めたさまざまな商品に少額から分散投資することが可能であり、運用をプロのファンドマネージャーに任せられるという特徴があります。証券会社のほか、銀行や郵便局などで購入できる気軽さがあります。
ただし、その数は膨大であり、それぞれの商品に投資対象や投資方針が異なるため、どの商品を選ぶかによって運用成果は異なります。日経平均株価やS&P500といった指数(インデックス)をベンチマークとして、これ連動する運用成果を目指す「インデックス・ファンド」や、ベンチマークを上回る運用成果を目指す「アクティブ・ファンド」といった分類がなされます。
私募ファンド(ヘッジファンド)
私募ファンドとは、適格機関投資家や少数(49名以下)の一般投資家に限定して出資を募り運用を行うファンドのことです。ヘッジファンドとも呼ばれます。
私募ファンドは公募ファンドとは異なり法律の規制を受けないため運用の自由度が高く、相場環境によらず絶対的な収益を追求できます。また、出資者の入れ替わりや資金流出などの頻度も低いため、安定した運用ができるといった特徴があります。
ただし、少数の投資家からまとまった資金を募る必要があるため、最低出資額は一般的に高額です。
最低出資額が1億円以上であるファンドは珍しくありませんが、最近では数百万円から1,000万円ほどで投資できる私募ファンドも増えています。
とはいえ、公募ファンドに比べるとややハードルは高いと言えるでしょう。
公募ファンドと私募ファンドのメリット・デメリット
公募ファンド (投資信託) | 私募ファンド (ヘッジファンド) | |
---|---|---|
対象 | 不特定多数の投資家 | 適格機関投資家 少数(49名以下)の一般投資家 |
運用手法 | 投資方針に基づいて運用され、運用成果は投資対象の値動きに連動 | 相場環境によらず収益追求する(絶対収益追求型) |
規制 | 厳しい | 緩い |
運用コスト (手数料) | 信託報酬 (運用成果に関わらず預入金額に対して定率) | 成果報酬 (運用成果に対して報酬が発生) |
運用スキル | サラリーマンファンドマネージャーが多い | 実績のある経験豊富なファンドマネージャーが多い |
最低投資額 | 数千円程度〜 | 1,000万円程度〜 |
流動性 | 原則いつでも解約して換金可能 | 四半期・半年・1年に1回など解約できる時期が制限される |
ファンドの種類
代表的なファンドの種類として、次の6つを押さえておきましょう。
- ヘッジファンド
- アクティビストファンド
- インデックスファンド
- インフラファンド
- 不動産私募ファンド
- REIT
種類1:ヘッジファンド
市場が上昇しても下落しても利益を出せるように、さまざまな投資手法を用いて運用するファンドです。一般人にもなじみのある株式や債券だけでなく、オプションや先物取引など専門的な商品も駆使します。
種類2:アクティビストファンド
市場で割安に評価されている企業の株式を買い、企業の経営陣に対して企業価値向上のための提言を行い、株価を上げることによって利益を出すファンドです。「物言う株主」と呼ばれることもあり、株主として経営を厳しく評価する姿勢でいます。
種類3:インデックスファンド
市場を代表する指数の値動きに連動する投資信託のことです。例えば、日経平均株価やTOPIXといった指標に連動します。
投資信託が指数を構成する銘柄に幅広く投資することで、指数に連動するファンドを作り上げています。
種類4:インフラファンド
太陽光発電施設や港湾施設などのインフラを保有し、それらから得た収益を投資家に分配するファンドのことです。証券取引所に上場しており、個人投資家も株式と同様に売買することができますが、まだ銘柄数が少なくあまりメジャーな投資法とは言えないでしょう。
種類5:不動産私募ファンド
少数の投資家から資金を募集し、投資会社が不動産で運用するファンドのことです。私募なので市場価格の変動がなく、利回りが高いことが特徴です。
種類6:REIT
多くの投資家から資金を募集し、投資会社が不動産で運用する商品です。不動産私募ファンドと異なり証券取引所に上場しているため、個人投資家が売買できます。
日々価格が変動する点も、不動産私募ファンドと異なります。
ファンドに投資するメリット
では、ファンドに投資するメリットにはどのようなものがあるでしょうか?大きく、次の5つに分けることができます。
- 自ら運用する必要がない
- 成功確率が高い
- 分散投資できる
- 投資対象が増える
- 絶対収益を狙える
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
メリット1:自ら運用する必要がない
銘柄の選定から予想、銘柄の切り替えも含めてプロに任せる商品なので、自分で運用する必要がないことが大きなメリットです。忙しくて時間を割けない人でも、楽に投資をすることができます。
メリット2:成功確率が高い
経験豊富なプロが専業で時間を使って運用を行うため、成功する確率が高いです。成功するために、深い知識と経験を駆使しリスクとリターンのバランスを整えてくれるため、投資初心者で手腕に自信がない人でも任せるだけで良いパフォーマンスが期待できます。
メリット3:分散投資できる
ファンドの運用は、リスクヘッジが基本となっているため、1種類のファンドに投資するだけで分散投資することができます。
個人投資家が株式などで分散投資をしようとすると、大量の銘柄を少しずつ買って管理しなければならず、お金も労力もかかってしまいます。ファンドを活用し、効率よく分散投資すると良いでしょう。
メリット4:投資対象が増える
一般人がアクセスできない金融商品に投資するファンドがあります。最低投資額の大きさや参加の条件によっては、個人では難しい投資先もあるため、投資対象が増えることもメリットです。
メリット5:絶対収益を狙える
特にヘッジファンドは絶対収益を目標としており、市場が上昇しているときも下落しているときも利益を期待することができます。
投資信託などの一般的な商品では相対収益で、市場が上昇しているときはプラスなものの、下落しているときはマイナスになることがほとんどです。絶対収益で常にプラスの利益を期待できるは、ファンドならではのメリットです。
ファンドに投資するデメリット
一方、ファンドに投資するにはデメリットもあります。次の3つのデメリットもしっかりと把握しておきましょう。
- 最低投資額が高い
- 自分の意向を反映できない
- 運用手数料が高い
デメリット1:最低投資額が高い
多くのファンドは最低投資額が1,000万円ほどと高めです。これだけの資金を投資に振り向けられる人は少ないので、「ファンドは富裕層向け」と言われることが多いです。
デメリット2:自分の意向を反映できない
ファンドは、プロに任せる商品であるため一般的に投資家は口を出すことができません。自分の意向を反映できない点は、自分で投資をしたい人にとってはデメリットでしょう。
むしろ自分で投資をしたい人、投資に自信がある人は選ぶべきではありません。
デメリット3:運用手数料が高い
ファンドは、申込手数料や維持管理費の他に、成功報酬の制度を導入していることが多いため、運用手数料が高くなりがちです。成功報酬とは、目標のリターンを達成したときにファンドマネージャーに支払われる報酬のことであり、目標を上回った部分の利益に対して20パーセントから50パーセントに設定されていることが多いです。費用が高いことは、ファンドマネージャーがより良い結果を出すために、真剣に運用するインセンティブとして機能しています。
ファンドの選び方
これまで、ファンドの概要とメリット・デメリットについてお伝えしてきました。では、ファンドを選ぶときはどういった点に注意すれば良いのでしょうか?
ファンドを選ぶ際は、次の4つのポイントに注意しましょう。
- ファンドに求めることを整理する
- 投資金額を決める
- 投資期間を決める
- リスク許容範囲を決める
選び方1:ファンドに求めることを整理する
まず、ファンドに何を求めるのかについて整理しましょう。絶対収益での運用を求めるのか、とにかく低コストで運用してもらうのかなど、自分が求めることを具体化します。
選び方2:投資金額を決める
投資金額によって選択できる投資方法が異なるので、投資金額を早めに決めましょう。
1,000万円をいきなり投資できるのであれば、ファンドに投資すると良いでしょう。しかし数万円といった少額から始めたい場合は、投資信託から入ることをおすすめします。
選び方3:投資期間を決める
今すぐに投資を始めたとして、いつ投資をやめるのかをイメージしておいた方が良いです。定年退職するタイミングで投資を終わりにする想定が一般的であるため、60歳から今の年齢を引いた年数を投資期間として考えると良いでしょう。
選び方4:リスク許容範囲を決める
投資金額に対して、どこまでの損失なら許容できるのかあらかじめ考えておきましょう。
ファンドや投資信託による長期的な投資なら、10パーセントほどのマイナスは我慢できた方が良いです。10パーセント以上の損失が出たら損切りして仕切り直し、他の商品への投資などを検討しましょう。
なお、「1パーセントたりとも損失は許容できない」というように考えているなら、投資はやめておくことが賢明な判断かもしれません。投資は元本割れのリスクを取って大きなリターンを追求するものなので、元本保証でない点は理解しておきましょう。
おすすめの投資信託・ヘッジファンド
ファンドの選び方を解説したところで、おすすめの投資信託とヘッジファンドを紹介しましょう。どれを選んだら良いかわからないという方は、選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
投資信託
投資信託のおすすめはこちらの5つです。
楽天・全世界株式インデックス・ファンド (楽天投信投資顧問) | |||
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FTSEグローバル・オールキャップ・イン デックス(円換算ベース)に連動する投資成果を目指す。先進国株式、新興国株式の大型株、中型株および小型株まで約8,000銘柄への投資と同じ効果が期待できる。 | |||
騰落率(年率) | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
11.83% | 10.15% | – | |
ひふみプラス (レオス・キャピタルワークス) | |||
株価が割安な国内外の株式を選別し、長期的な資産形成を目指すアクティブ・ファンド。株価が割高となった銘柄は売却を行い、割安な銘柄がない場合に買付を行わず現金比率を高めるなど、機動的な運用を行う。 | |||
騰落率(年率) | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
11.2% | 4.6% | 42.9% | |
ニッセイ外国株式インデックスファンド (ニッセイアセットマネジメント株式会社) | |||
MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざすインデックス・ファンド。日本を除く世界主要先進国約1,300銘柄への投資と同じ効果が期待できる。 | |||
騰落率(年率) | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
12.52% | 12.03% | 40.19% | |
楽天・全米株式インデックス・ファンド (楽天投信投資顧問) | |||
CRSP USトータル・マーケット・インデックス(円換算ベース))に連動する投資成果をめざすインデックス・ファンド。米国株式市場の大型株から小型株までを網羅し、投資可能銘柄の大部分をしめる約4,000銘柄への投資と同じ効果が期待できる。 | |||
騰落率(年率) | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
13.65% | 12.33% | – | |
SPDR S&P 500 ETF トラスト(SPY) (ザ・バンガード・グループ・インク) | |||
S&P500種指数(同指数)の価格・利回りのパフォーマンスに連動する投資成果を目指すETF(上場投資信託)。低コストで米国主要株式への投資と同じ効果が期待できる。 | |||
騰落率(年率) | 6ヶ月 | 1年 | 3年(年率) |
– | 15.91% | 14.71% |
(2019年11月末時点)
投資会社
投資会社の中でおすすめなのは、アクティビスト投資のJapan Act合同会社です。
Japan Act
Japan Actは日本国内に上場している上場企業を投資対象としてバリュー(割安)株投資を行う独立系の投資会社です。目標とするベンチマークなどは設定せず、中長期的なスタンスで投資を行ってる会社です。
Japan Actは、本来の企業価値と現在の市場価格との乖離に注目し、対話を重視した積極的な経営への関与によって企業価値・株主価値向上を図り、リターンの最大化を目指しています。2019年6月には、Japan Actの主要投資先であり大株主でもあるサンエー化研に対し、株主提案を行っており、今後の動向に一層注目が集まっているようです。
最低投資額1,000万円(1,000万円以下の出資希望は要相談)※公式サイトより推定
一般投資家ではなかなか参加しにくいファンドですが、最低投資額が1,000万と参加しやすくなっているようです。
公式サイト:JapanAct
まとめ
ファンドとはどういったものか種類別に概要を解説し、メリット・デメリット、選び方についてお伝えしました。
ファンドといっても、公募ファンドから私募ファンドまで多種多様なファンドがあり、パフォーマンスもピンからキリまであります。私たち投資家は、それらの中から運用目的にあわせて適切なファンドを選ばなくてはなりません。
ヘッジファンドは相場環境に左右されずリターンを追求していくため、一般的に投資信託よりも優れたパフォーマンスが期待できるためおすすめです。最低投資額が高いというハードルがありますが、投資可能な方は投資先として検討してみると良いでしょう。